成績が上がらない生徒たちには共通点があります。彼らの特徴を分析し、具体的対策を提案します。
「頑張る」「努力する」という精神論は要らない
努力が空回っている生徒たちがいます。彼らは塾に通い詰めたり、大量の課題をこなしたり、何時間も自習したりしているのに結果が出ず、「勉強しても成績が上がらない!」と嘆きます。
多大な時間と労力(とお金)をかけて勉強しているのに、学校の定期テストですら7割止まり。どうしても成績が上がりません。
彼らに必要なのは、「頑張る」「努力する」という精神論ではなく、やってはいけない勉強法を改善することです。
やってはいけない勉強法と具体的対策7選
やってはいけない勉強法を紹介し、具体的対策を提案します。
【No.1】弱点から目を背ける
自分の失敗を認めようとせず、間違いを直視しない生徒たちがいます。間違いを指摘されても、「ここまでできているからいいじゃないですか!」と開き直ります。ひどい場合だと、間違いを消しゴムで消して修正し、その上から赤ペンで丸をつけます。
このタイプの生徒は、できない問題はいつまでもできないままです。普段の勉強でも自分の間違いを無視して、できる問題ばかりをこなしたがります。
対策(間違いの内容を具体的に言葉で書かせる)
弱点から目を背ける生徒には、間違いを赤ペンできちんと書かせます。特に、間違いの内容を具体的に言葉で書かせるのが有効です。「符号が変わるのに+のままだった」「yesterdayがあるのにplayが現在形のままだった」などと、間違った問題の脇にいちいち書かせます。弱点を見つめざるを得ない状況を作るわけです。
とはいえ、弱点から目を背ける生徒の多くはプライドが高く、誰が何と言おうと、本人がどんなにひどい失敗をしようと、しばらくするとまた、弱点から目を背けるようになります。指導者の指示を守らないこともあります。
このような生徒には、気長に付き合う覚悟で、何度も何度も同じことを指摘し続けるしかありません。目標が高くない(上位校志望でない)生徒であれば、褒めておだてて、その生徒のプライドを尊重する方がいいでしょう。
【No.2】その場で完璧にしない
多くの生徒たちは、できなかった問題や間違った問題を赤ペンで修正します。しかし、その後、彼らは、その問題を解き直しません。「後で復習するからいいや」といって次の問題に進もうとします。これは最悪の勉強法です。
「理解した」と思う問題でも、数分後に解き直すと「あれ?できない」ということがよくあります。数分後ですらこうなのですから、数時間後、数日後なら、「理解した」はずのことが何一つ記憶に残っていないことでしょう。
できなかった問題や間違った問題は、その場で完璧にしなければ、いつまでもできないままです。数分後にできない問題が、数日後にできるようになっていることはありません。
それにもかかわらず、多くの生徒たちは、「後で復習するからいいや」と安易に考えがちです。その「後で復習」は、もはや復習になっていません。0からのやり直しは、記憶を復元する作業ではないからです。
対策(その場で完璧になるまで解き直させる)
その場で完璧になるまで解き直させます。
短時間で解き直させるのがポイントです。数分でバーッと記憶を復元させます。書く時間がもったいない場合は、生徒に口頭で説明させます。指導者(保護者)は、「少し考えれば思い出せる」という生徒の言い分を一切認めず、「分からないなら答を見ていいから、その後にもう一度解き直しなさい」と指示します。
もちろん、30分後、次の日、3日後……と解き直しさせるのも忘れてはいけません(宿題として指示&次回指導時に確認)。
【No.3】過程にこだわらない
答が合っていれば、その答に至る過程にはこだわらない、という生徒は少なくありません。そういう生徒たちは、普段の問題演習の意義を理解していないのでしょう。国語の勉強で特に顕著です。
過程にこだわらない生徒たちは、答え合わせの際に解説を読みません。数学であれば、途中式のチェックもしません。あいまいな知識があってもほったらかし。そのため、同じ問題なら解けても、数値や文言をほんの少し変えられただけの問題でも、「分からない」とパニックに陥ります。
対策(答に至る過程を全て書かせる)
「答が合っていればOK」というのは試験本番限定の話。普段の問題演習では、「答が合っているかどうか?」はオマケのようなものです。それよりも、「どうしてその答になったのか?」を徹底的に追及する姿勢が大切です。そのため、僕は生徒に、答に至る過程を全て書かせます。
数学では、「途中式を書きなさい」というのが当たり前ですが、同様のことを他の科目でも生徒に要求します。
国語では、本文中の参照箇所に線を引かせ、正解以外の選択肢の間違いチェックもさせます。英語では、その答になる根拠を言葉で書かせ、和訳の無い(短文の)問題は和訳させます。「どうしてその答になったの?」と口頭でしつこく聞くのも有効です。
【No.4】自分でテストしない
たくさん問題をこなしているのに成績が振るわない生徒は、普段の問題演習で気合いが入っていません。テレビを見ながら解いたり、音楽を聴きながら解いたり……。そこまでひどくなくても、教科書を眺めながら空欄を埋めて「ハイ、おしまい!」という生徒はたくさんいます。
対策(全ての問題をテストだと思って解かせる)
1周目の勉強では、教科書などを確認しながら問題を解いても構いません。しかし、2周目以降の復習では、全ての問題をテストだと思って解くことが大切です。したがって、生徒に復習させる際は、制限時間を設けて、「●割以上正解する」という目標を立てさせます。緊張感をもって問題を解かせます。
また、生徒の普段の勉強スタイルもチェックします。「自分でテストする」を実践させる上で、学校の授業でさせられるようなノートまとめは無駄です。ワークが無い科目のノート作りをさせるにしても、「(問題)鎌倉幕府を開いた人は?(答)源頼朝」のように、一問一答形式の問題をノートに書かせます。こういうノートならば、後で生徒が自分でテストできます。
もちろん、問題集などに直接答を書きこむのはNGです。必要に応じて、ワークなどを事前にコピーしましょう。
【No.5】答え合わせがいい加減
問題を解いた後、答え合わせをしない生徒がいます。これは論外だとしても、答え合わせの精度が低い生徒も少なくありません。
漢字を間違っているのに丸。“b”と“d”を間違って書いているのに丸。“-(マイナス)”がついていないのに丸。……
こういう生徒たちは、普段の勉強も全体的に雑です。授業ノートにはやたらと空白があって、「ここには何も書かないの?」と僕に指摘されても、「う~ん、わかんない」。問題集でも、隅の方のプラスα問題を解いていません。当然、学校では平常点で減点されます。
対策(抜き打ちでノートやワークをチェックする)
指導者(保護者)が抜き打ちでノートやワークをチェックします。
答え合わせが不十分なところは確認させ、間違っているところは改めて×にさせます。ノートなどの空白を埋めるように指示します。
また、日ごろから、「丸付けを適当にするのは勉強していないのと同じ」と生徒に言い聞かせます。「勉強では、問題を解くこと以上に丸付けが大切だ」という意識を持たせるためです。
【No.6】同じ問題を繰り返さない
「参考書コレクター」になっている生徒たちがいます。1科目につき3冊から5冊の参考書や問題集を持っていて、どれもこれも中途半端に解いた痕跡があります。
大量のワークを生徒に購入させる塾もあります。塾がそれらを宿題として課すならまだしも、「家庭学習で使ってね」で終わりにすることも……。
一般的には、参考書や問題集の冊数とそれらの持ち主の成績は反比例します。なぜなら、こういう生徒たちは、同じ問題を繰り返さないからです。一つのことが定着しないままたくさんの問題を解きまくっても、すぐには思い出せない曖昧な知識が増えるだけで、混乱がひどくなる一方です。
対策(使用する問題集は1冊か2冊に絞る)
生徒が「参考書コレクター」化するのは、保護者や塾に原因があります。「これは良さそう」と思って大人が子どもに何でもかんでも与えるため、子どもの本棚には参考書や問題集がぎっしり……。そうなっている場合、普段の勉強で使用する問題集は1冊か2冊に絞りましょう。不要な問題集や参考書は処分しましょう。
まずは、学校のワークを完璧にしましょう。それで不足する場合でも、新たに購入する問題集はせいぜい1科目につき1冊か2冊です。厳選した問題集を何度も解くことが大切です。このように、同じ問題をしつこく繰り返させると、生徒の中に、絶対に忘れない確実な知識が増えていきます。
【No.7】難しい問題ばかり解きたがる
基礎が固まっていない状態で難問ばかりを解いている生徒は、思わぬところで足をすくわれます。
よくあるのが、難しい図形問題などに果敢に挑戦するも、因数分解や二次方程式などが解けずに正解にたどり着けないというパターン。難しい問題ばかり解きたがる生徒たちは、面倒な計算練習や暗記を嫌がる、という傾向があります。彼らは、「考え方は分かるのに解けない」というドツボにはまります。もちろん本番の入試でも失敗します。
対策(計算練習や暗記を毎日の課題として取り組ませる)
難しい問題ばかり解きたがる生徒のうち、基礎的な部分が抜け落ちている生徒には、計算練習や暗記を毎日の課題として取り組ませます。
その際、目標とする水準を高めに設定します。「10分以内で解けなければダメ」「全てを暗記できなければダメ」などです。難問は基礎の組み合わせで成り立っていて、基礎を一つでも取りこぼせば正解できないからです。
さて、難しい問題ばかり解きたがる生徒の多くはプライドが高く、指導者(保護者)の指示を守らないケースが目立ちます。生徒本人が後生大事に抱え込んでいる「自分はできる」という思い込みは強固です。下手にプライドを傷つけようものなら、生徒の心はあっという間に指導者(保護者)から離れてしまいます。
そんな生徒と付き合う指導者(保護者)は、生徒本人が自分の未熟さに気づくまで待つしか手はありません。待った結果生徒が受験に失敗するかもしれません。しかし、それは仕方ないことです。結果にこだわらず、長期的な視点をもって生徒と信頼関係を築くことも、その生徒を大切に思うならば必要なのかもしれません。
正しい勉強法は自分で得た気づきの中にある
ここまでで紹介した勉強法を改善すれば、「努力できる」という希有な才能を持っている生徒たちは飛躍的に成績がアップします。
とはいえ、やってはいけない勉強法を改善する「だけ」が、生徒にとって高いハードルになることも少なくありません。これまでも述べた通り、生徒にはプライドや性格、これまで受けてきたしつけや教育などがあり、そうした諸々が改善への道に立ちふさがります。
「人は変えられない」としばしばいわれますが、勉強法一つとっても、生徒のそれを変えるのは至難の業です。
そもそも勉強法の良し悪しは人によりけりです。本当に正しい勉強法は、誰かから押し付けられるものではなく、さまざまな体験を通して生徒が自分で得た気づきの中にあります。このことも十分に理解しておくとよいでしょう。
トップ画像=フリー写真素材ぱくたそ / モデル=河村友歌
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