推薦入試やAO入試では志望理由書の提出が必要です。しかし、受験生が頑張って作成した志望理由書は、ほとんどの場合、自己PRになっていません。
本記事では、ダメダメ志望理由書を題材として、その改善例を紹介します。
ダメダメ志望理由書とは?
受験生が作成した志望理由書の初稿は、概ね以下のようになっています。
1. 本校の志望動機
●●高校に入学後は、勉強と部活を両立したいと思います。勉強面ではたくさんのことを学び、知識を増やしていきたいです。部活はサッカー部に入り、活躍できるような選手を目指します。……
2. 中学で頑張ったこと
私は中学時代、サッカー部に所属していました。2年の後半からは部長を務めました。いろいろ大変なこともありましたが、何とか頑張って部員達をまとめることができました。中総体では部員全員で一致団結し、とても素晴らしい経験ができました。……
3. 高校卒業後の進路
高校卒業後は大学進学を考えています。大学では様々な専門分野を学んで、人の役に立つ仕事に就けるように頑張ります。……
これはダメダメ志望理由書の典型ですね。とにかくツッコミどころ満載です。この志望理由書はどうしてダメダメなのでしょうか?
志望理由書は自己PRのための書類
上の志望理由書がダメダメな理由は、内容が具体的でないからです。僕がこの志望理由書を読まされたら、次のようにツッコみたくなります。
1. 本校の志望動機
2. 中学で頑張ったこと
3. 高校卒業後の進路
志望理由書が具体的でないと、面接の際にはこうしたことを根掘り葉掘りツッコまれます。具体的な回答を用意していなかった受験生は、当然のことながら、しどろもどろになって冷や汗をかきます。
また、面接の場で志望理由などについて聞かれない場合は、自分の魅力を志望校にPRする機会すら失います。「たくさんのこと」「とても素晴らしい経験」がどんなに感動的なストーリーでも、それを面接官に伝えられなければ無意味です。
志望理由書は、赤の他人に受験生が自己PRするための大切な書類です。だからこそ、志望理由書には具体的な情報をしっかり盛り込んで、志望校の先生方に「この受験生は魅力的だな」と思わせる必要があります。
初稿を添削してもらう
ツッコミどころ満載のダメダメ志望理由書を提出しないために、受験生は、自分が作成した初稿を添削してもらうべきです。その際は、信頼のおける指導者に添削をお願いしましょう。
僕が添削する場合、高校受験の志望理由書ならば、次の観点で生徒に自分の考えを整理してもらいます。
高校入学後に勉強したい科目
まずは、文系に進みたいか理系に進みたいかを決めます。
その上で、「外交官になりたいから英語を使いこなせるようになりたい」「医学部を目指しているので理数科目を中心に勉強したい」など、将来の進路と結びつく科目を特定します。
高校で入りたい部活などの実績
実績のある部活であれば、「中学時代は野球部でピッチャーを務めていたので、高校の野球部でもピッチャーとして活躍したい」など、中学時代の経験をどう活かせるかを示します。
一方、実績のない部活であれば、「自分が部長になって●●大会で優勝を目指したい」など、部活をどう盛り上げていくかを書きます。
中学で頑張ったことの実績
部活や委員会での役割(部長や委員長などの役職や、ピッチャーやキーパーなどのポジション)を書きます。
また、中総体の結果、美術や弁論大会などでの受賞履歴、課外活動やボランティアの内容(地域のお祭りに手伝いで参加した、植林体験をしたなど)など、実績を明記します。
高校卒業後の希望進路と高校のカリキュラムの整合性
学校のランクや進学実績に合わせて進路の目標設定をする必要があります。
たとえば、高校卒業後に声優養成の専門学校に進みたいと思っていても、進学校を受験する場合はその夢を語ってはいけません。進学校を受験する場合、あくまでも難関大学進学を目標とする必要があります。
一方、中堅以下の高校を受験する場合には、看護系の専門学校に進学したいという進路はOKです。
大学で学びたいことと将来の夢との整合性
教師になりたいなら教育学部、弁護士になりたいなら法学部、歯医者になりたいなら歯学部、システムエンジニアになりたいなら情報系学部など、大学で学びたいことが将来の夢と結びついていることが大切です。
「医療過誤訴訟専門の弁護士になりたいから医学部を目指す」のような特殊な夢があるならば、それをきちんと伝えます。特殊性は、場合によっては加点要素になります。
添削後に書き直す
初稿を添削してもらったら、それをもとにして志望理由書を書き直します。
このときのポイントは、あれもこれもと情報を盛り込み過ぎないことです。各項目で、1つか2つの経験(考え)を深く掘り下げます。たとえば、「英語も数学も国語も頑張った」ではなく、「英語を頑張った」だけを詳しく書きます。
というわけで、ダメダメ志望理由書を書き直しましょう。
1. 本校の志望動機
●●高校はSSHに指定されているので、私も数学や理科を重点的に勉強したいと思います。▲▲コンテストに作品を出品したいので、物理・化学は1年次から予習に力を入れていきます。部活はサッカー部に入って、3年次にレギュラーに選ばれることを目標とします。……
2. 中学で頑張ったこと
私は中学時代、サッカー部に所属していました。2年の後半からは部長を務めました。私たち3年と1・2年とで意見が対立したこともあります。そのときは顧問の先生にも相談しながら、私が各学年の意見調整を行いました。この経験を経て、サッカー部は以前よりも結束が固くなりました。中総体では部員全員で一致団結し、県大会優勝・全国大会出場を果たしました。……
3. 高校卒業後の進路
高校卒業後は、理系の大学で薬学を学ぶつもりです。将来は、がんで苦しむ人たちを救うため、副作用の少ない抗がん剤の開発に携わりたいです。……
このように具体的に書いていくと、空白の多かった各欄がみっちり埋まります。同時に、志望校への自己PRも充実したものになります。
具体的な志望理由書を書ける中高生は多くありません。そのため、具体的な志望理由書を提出すれば、それだけでも他の受験生に差をつけられます。
推薦入試やAO入試を考えている受験生は、信頼のおける指導者に添削してもらいながら、上手に自己PRできる志望理由書を作成しましょう。
トップ画像=フリー写真素材ぱくたそ
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