中学理科の第1分野において、中学1年生は「圧力」を学習します。
圧力とは、ある面を垂直におす単位面積あたりの力の大きさです。「単位面積」の「単位」は「1」を表します。中学理科では、1m2あたりの力の大きさ(単位:N=ニュートン)を「圧力」(単位:Pa=パスカル)として扱います。
圧力の公式
1m2あたりの力の大きさである「圧力」を表す公式は次の通りです。
Pa(パスカル)はN/m2(ニュートン毎平方メートル)の言い換えです。「N/m2=N÷m2」なので、「Pa=N/m2」関係さえ覚えておけば、上記の公式をわざわざ暗記する必要はありません。単位を見ればどういう計算をすればいいかが分かるからです。
ハイヒールの踵で踏まれると痛い理由
圧力の考え方を用いると、日常生活の疑問が解消します。
たとえば、体重50kgの女性に足を踏まれるとします。彼女がスニーカーを履いている場合とハイヒールを履いている場合、踏まれて痛いのはどちらですか?
踏まれることに悦びを感じるご趣味(?)の人なら分かるはずです。というか、スニーカーで踏まれるよりもハイヒールで踏まれる方が痛いことくらい、誰でも分かりますね(笑)。
痛みの原因は、先の尖ったハイヒールの踵が食い込むためです。この食い込み具合を圧力として数値化します。
同じ重さ(力)でも、その重さ(力)がはたらく面積が小さいほど、圧力が大きくなるのです。
水圧が生じるのはどうして?
水による圧力を「水圧」といいます。水中に潜ったときの圧迫感は水圧が原因です。
中学理科の教科書レベルだと、「水圧は水の深さに関係する」「水圧は水にはたらく重力によって生じる」「水圧はあらゆる方向からはたらく」と書かれているだけです。普通の中学校では、この程度の理解でも定期試験を乗り切れるのでしょう。
しかし、中学校の理科の先生たちの中には、水圧の計算を生徒たちに求める先生もいます。そういう先生は定期試験にも水圧の計算を出題します。
というわけで、水圧の計算が必要な中学生たちのために、具体的な計算方法を解説します。
水圧は水の重さによって生じます。「重さ」とは、物体にはたらく重力のことです。日常生活でも耳にする「重さ」は、実は力の大きさを表しているんですね。そのため、重さの単位であるgやkgなどを、力の単位であるNに変換することが可能です。
以上を踏まえて、次のような状況を考えてみましょう。
水面から1mの深さの場所に、1辺が1mの正方形の板が沈んでいるとします。このときの水圧を求めます。
水の重さを求める
下図のように、板と水面との間にできる1m3の立方体を考えます。この立方体の中に入っている水の重さが水圧を生じさせます。
水の密度を1g/cm3、つまり「水1cm3は1g」とします。このとき、1m3の水の重さを計算します。
1m3=1000000cm3=1000000g
100gを1Nとすると
1000000g=10000N
したがって1m3=10000N
次に、前ページで確認した圧力の公式にこの数値を当てはめます。
板の面積は1m×1m=1m2
圧力(Pa)=面を垂直に押す力(N)÷力がはたらく面積(m2)より
求める水圧は10000N÷1m2=10000Pa
水圧は水深に比例する
水圧の求め方をもう少し一般化してみます。
上の例と同様に、さまざまな面積の板を水に沈めます。このとき、水圧は次の計算で求められます。
水圧(Pa)
=10000N×立方体の体積(m3)÷板の面積(m2)
=10000N×板の面積(m2)×水深(m)÷板の面積(m2)
=10000N×水深(m)
これより、水圧は、面積に関係なく、水深にのみ比例する、ということが分かります。水深をmで表すならば、水深に10000をかけるだけで水圧を求められるんですね!!
水圧はあらゆる方向からはたらく
水圧と水深の関係式を使えば、水圧の計算は楽勝です。
水深3mでの水圧は10000×3=30000Pa
水深5cmでの水圧は5cm=0.05mより10000×0.05=500Pa
計算問題はこれで終わりですが、もう1つだけ水圧の性質を解説しますね。
ここまでで解説した水圧では、板の上方にある水の重さだけを考えました。この重さは、地球が水を引っ張る重力でもあります。
固体ならば、下向きの重力だけ考えればOKです。しかし、水のような液体の場合、液体を構成する分子が自由に動き回るため、面にはたらく力は下向きだけではありません。この力はあらゆる方向から生じて面を垂直におします。つまり、水圧はあらゆる方向からはたらくのです。
上図の板であれば、下からも力がはたらいています。
下から板をおす上向きの力を忘れないようにしましょう。この力が、水中にある物体を上向きにおしあげる浮力を理解する上で重要だからです。
水圧の計算を理屈で考える
「水圧(Pa)=10000N×水深(m)」の公式は便利です。しかし、これは、「100gを1Nとする」という前提でのみ成り立ちます。
高校物理では、水圧をp、水の密度をρ(ロー)、重力加速度をg、水深をhとして、「p=ρgh」と表します。高校生になってから混乱しないように、中学生のうちから水圧の計算を理屈で考えられるようにしましょう。
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