英語の並べ替え問題(整序英作文)では、文法構造や単語が日本語と英語とで対応しているとは限りません。このような問題の解き方を分かりやすく解説します。
英文の丸暗記には限界がある
大雨のせいで外出できなかった。
Heavy rain prevented me from going out.
多くの生徒たちは「大雨のせいで外出できなかった。」という和訳から”Heavy rain prevented me from going out.”を作れません。この和訳がどうしてこの英文になるのかがわからないため、解答を丸暗記して終わりにしてしまいがちです。
しかし、このタイプの並べ替え問題を丸暗記で乗り切るのにも限界があります。それよりも、正解の英文について、文法事項をふまえて意訳を直訳に変換することが大切です。
意訳を直訳に変換するコツ5選
意訳を直訳に変換するときは、これから紹介する5つのことを意識するようにしましょう。
【その1】英文の主語・述語を把握する
正解の英文から、主語・述語を見つけます。
“Heavy rain prevented me from going out.”ならば、主語は“Heavy rain”で、述語は“prevented”です。これは典型的な無生物主語構文です。
英文の主語が人以外の無生物である場合、その主語を「~が(は)」と直訳するのではなく、「~によって」などと副詞的に意訳するのが一般的です。主語を意訳すれば動詞も意訳せざるを得ません。この主語・述語の意訳を直訳に変換します。
- Heavy rain (意訳)大雨のせいで → (直訳)大雨が
- prevented (意訳)できなかった → (直訳)妨げた
【その2】日本語の省略された語句を補う
「大雨のせいで外出できなかった。」と“Heavy rain prevented me from going out.”とを見比べると、英文の中に全く訳されていない単語があります。“me”です。
「大雨のせいで外出できなかった。」だけだと誰が外出できなかったのかがわかりません。しかし、英文の方では“me”があるので、「外出する」のは「私」であることあ明らかです。
日本語と英文とを照らし合わせて、「大雨のせいで私は外出できなかった。」とします。
日本語では主語の省略が当たり前です。しかし、英語では、原則として主語が必要です。
たとえば、「窓を開けてはいけません。」を“must”を使って英訳する場合、“You must open the window.”となります。命令文の主語は命令される相手なので、英訳の際には“You”を補います。
日本語と英語の違いに着目して、省略された語句を補うことが大切です。
ちなみに、“me”は主格ではないので、「私は」も意訳です。この意訳についても考える必要があります。
【その3】イディオムを確認する
“me”について考える前に、英文に用いられているイディオムを確認します。
これは文法問題頻出のイディオムなので必ず押さえておきたいところです。
イディオムを踏まえて“Heavy rain prevented me from going out.”を直訳すると、「大雨が、私が外出するのを妨げた。」です。“me”を主格として訳せたのでこれでよしとしましょう。
ここまで直訳すれば、”Heavy rain prevented me from going out.”を作れるはずです。英作文の書き方については以下の記事を参考にしてください。
【その4】肯定と否定の非対応をチェックする
ここからは別の英文を使って、意訳を直訳に変換するコツの残りを解説します。
これほど美しい絵を一度も見たことがない。
This is the most beautiful picture that I have ever seen.
日本語と英文で主語・述語は全く対応していませんし、英文中の“I”の訳も日本語にはありません。それ以上に生徒たちが混乱するのは、日本語の「ない」です。「ない」という日本語があるのに、英文には一切否定語がないからです。
このような英文もとりあえず直訳してみると、「これは、私が今まで見てきた中で一番美しい絵だ。」です。「一度も見たことがない」(否定)は直訳の「今まで見てきた中で一番」(最上級)がもとになっています。
このような言い換えは、英語の書き換え問題でもよく見かけます。
たとえば、「富士山は日本で最も高い山だ。」を直訳すると“Mt. Fuji is the highest mountain in Japan.”です。この書き換えとして、“No other mountain in Japan is higher than Mt. Fuji.”「富士山より高い山は日本にはない。」が有名です。
否定表現の言い換えには、他にも以下のようなイディオムがあります。
- far from A (直訳)Aから遠い → (意訳)決してAではない
- the last person who +肯定文 (直訳)~する最後の人 → (意訳)決して~しない人
こういうイディオムは入試で狙われやすいので、しっかり覚えましょう。
【その5】日本語の言い換えに慣れる
一生懸命勉強しさえすればよい。
All you have to do is to study hard.
この英文を直訳すると「あなたがしなければならない全てのことは一生懸命勉強することだ。」です。「全ては~だ」が「~しさえすればよい」に意訳されます。
彼女は外出すると必ず買い物をする。
She never goes out without buying something.
こちらも直訳すると、「彼女は、買い物をしないで外出することは決してない。」です。「…しないで~することはない」(二重否定)が「~すると必ず…する」(強い肯定)に意訳されます。
これらの言い換えについては、まずは日本語の中で慣れていくべきです。「『好きでないわけではない』は『好き』」みたいな言葉の訓練を重ねて、日本語で言い換えできるようにしましょう。
不自然な日本語でもまずは直訳する
英文法の参考書には、「自然な日本語」「美しい日本語」を目指した意訳が少なくありません。これらの意訳に合わせてイディオムを覚えようとすると、膨大な量を暗記することになります。しかし、イディオムを直訳として理解すれば、暗記量を減らせる上に応用力も身に付きます。
たとえば、次のやりとりは会話表現問題でよく出ます。
Would you mind my smoking? – No, not at all.
タバコを吸ってもいいですか。―はい、いいですよ。
このやりとりでは、「はい、いいですよ。」がどうして否定表現になるのでしょうか?
その理由を考えるために、これらの会話を直訳してみましょう。
“mind”は「気にする」という意味の動詞なので、“Would you mind smoking?”は「あなたは、私がタバコを吸うのを気にしますか。」と直訳できます。
「気にしますか?」と尋ねられた相手が「気にしない」と答えれば、それが「OK」の意味合いになります。“No, not at all.”を直訳した「まったく気にしません」が「はい、いいですよ」と意訳される理由を理解できるでしょう。
よくわからない英文と出会ったら、日本語として不自然でも美しくなくても構わないので、まずは直訳することをおすすめします。
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