「自分の頭で考えなさい」は子供が考え込むバカになる最低最悪の言葉

みみずく戦略室保護者・親子関係

最近の子どもたちを観察していると、困った傾向が共通して見られます。それは、何も参考にしないで考え込むという傾向です。彼らは、問題文に書いてあることやノートに書き取らせたことなどを一切見ないで、解答欄や自分の手元を凝視したままフリーズします。「バカの考え休むに似たり」の状態に陥っているのです。

彼らが「バカの考え休むに似たり」になってしまうのはなぜでしょうか?分からないことに出会ったら、書籍などを参照しながら情報を集める、という当たり前のことを知らないからです。

では、どうして彼らは当たり前のことができないのでしょうか?その原因は、社会全体が「自分の頭で考えなさい!」というメッセージを発していることにあると僕は思っています。

自分の頭で正しく考えるのに必要な知識と技術

「自分の頭で考えなさい!」は、ある程度訓練を積んだ大人相手ならとても有効です。一方、同じことを子どもに指示すると、子どもは何もできなくなったり混乱したりします。というのも、子どもたちは、自分の頭で正しく考えられるだけの知識も技術も持っていないからです。

僕たち大人でも、初めて訪れる、言葉の通じない国に単身で放り出され、「自分の頭で考えて生活していきなさい」と言われれば、途方に暮れるでしょう。未熟な小中学生に「自分の頭で考えなさい!」と言うのは、これと同じくらい過酷なことです。

それにもかかわらず、社会全体が「自分の頭で考えなさい!」を連呼するのは、「オリジナリティーあふれる人間が国際社会で生き残れる」などという、ビジネスの「常識」に人々が毒されているからです。グローバル化した世界で競争し「勝者」となりたければ、確かにオリジナリティーが大切でしょう。しかし、オリジナリティーの土台となるのは、先人たちが積み上げてきた知識であり、与えられた情報を上手く利用する技術です。それらをすっ飛ばしていきなり自分の頭で考えたところで、オリジナリティーはおろか、猿真似すらできません。

オリジナリティーがどうこうの前に、基礎基本である知識や技術の習得が先決です。しかし、現在の日本は、知識や技術の習得に力を入れてきた従来の教育へのアンチテーゼから、「詰め込み教育は悪だ」「子どもの自主性を尊重しろ」などの思想のもと、義務教育課程にまで「アクティブ・ラーニング」や「ICT教育」などの胡散臭い手法が取り入れられようとしています。「時代の最先端」に飛びつく国の教育方針は、「自分の頭で考えなさい!」という社会のメッセージを強める役割を果たします。結果として、いたずらに子どもたちを混乱させ、ひいては国力の衰退につながる、と思うのは僕だけでしょうか?

子どもを育てている保護者は、「日本の教育は危機に瀕している」という認識を持った方がよいでしょう。その上で、自分の子どもを「考え込むバカ」にしたくなければ、「自分の頭で考えなさい!」という言葉を封印する必要があります。

では、「自分の頭で考えなさい!」の代わりとして、保護者は子どもにどのような声がけをすればよいのでしょうか?ここでは、知識の習得についてではなく、与えられた情報を上手く利用する訓練となる声がけを具体的に2つ紹介します。

「この中から選びなさい」

子どもが迷いそうなことやぐずりそうなことについては、保護者が選択肢を複数作って、その中から選ばせるといいでしょう

たとえば、「いつ勉強するか?」について、保護者は次の2つの選択肢を子どもに示します。

  • 今遊んで後で勉強する。この場合、友達と遊べるけれども、夜7時の『ドラえもん』は見られない。
  • 今勉強して後で遊ぶ。この場合、友達とは遊べないけれども、夜7時の『ドラえもん』は見られる。

選択肢を示す際のポイントは、その行動を選ぶメリットとデメリットの両方をきちんと伝えることです。その上で「この中から選びなさい」と言って、子どもに選ばせます。

保護者は、自分が伝えたメリットもデメリットも実現させる必要があります。先ほどの選択肢について、子どもが「今遊んで後で勉強する」を選んだ場合、夜7時の『ドラえもん』を見せてはいけません。子どもがどんなに駄々をこねようとも、「約束は約束」と言って、「『ドラえもん』を見たい」という子どもの要求を撥ねつけます。逆に、「今遊んで後で勉強する」を選んだ子どもに対して、「やっぱり友達と遊ぶのはダメ」などと言うのもNGです。保護者もまた、自分の言ったことに責任を持たなければなりません。

保護者が示した選択肢全てを子どもが拒否する場合もあるでしょう。そのときは、保護者は「どうしてこの中から選べないの?」「この中から選べないならあなたはどうしたいの?」と質問して、子どもの言い分に耳を傾けましょう。そして、その言い分が「正しい」「合理的だ」と判断できるなら、子どもの提案をOKします。ただし、「子どもが反抗するから」「言い合いになるのが面倒だから」などの理由で子どもの言い分を認めてはいけません。主導権を握るのはあくまでも保護者です。

「書いてあることを確認しなさい」

家族関係でのトラブルは、「言った」「言わない」の水掛け論から発生します。そもそも、口頭での約束を子どもに守らせるのは至難の業です。子どもは忘れますし、場合によっては保護者も忘れます。忘れないまでも、約束の内容が変わって混乱することも多々あります。「朝7時に起きて歯を磨く」という約束が、数日後には「朝7時に起きる」だけになっていたり、「朝7時に起きて歯を磨いて朝食を食べる」みたいにルールが増えていたり……。これでは子どもも言うことを聞きません。

では、どうすれば水掛け論を防げるのでしょうか?一番確実なのは、守るべき約束を紙に書いて、目立つところに貼っておくことです。子どもにトイレの電気を消させたいなら、トイレのドアに「使用後は電気を消す」と書いた紙を貼っておきます。1日のスケジュールは、紙に書いて冷蔵庫のドアに貼っておくか、ホワイトボードに書いて子ども部屋の目立つところに掲示しておきます。

保護者は、子どもに細かい約束事を覚えさせるのではなく、子どもが忘れることを前提に記録を残しておくべきです。約束を守れない子どもを注意する場合も、「約束を思い出しなさい」と言っては意味がありません。もし記録を残さなかったせいで子どもが約束を守れなかったのなら、それは保護者の責任です。まして、何をすべきかを事前に伝えてすらいないのに、「どうすればいいの?自分の頭で考えなさい!」と事後的に叱るのは最低です。

子どもが約束を守れなかったら、保護者は「●●に約束が書いてあったよね?それを確認しなさい」と指示します。保護者が約束の内容を言うのではなく、子どもに自分で確認させることが重要です。

保護者が情報を与えた上で子どもに行動を促す

「この中から選びなさい」という声がけは、子どもが複数の情報を比較して論理的に結論を出す訓練になります。一方、「書いてあることを確認しなさい」という声がけは、確認作業の習慣化を通して子どもの注意力を高めます。いずれの声がけにも共通するのは、保護者が情報を与えた上で子どもに行動を促すという方向性です。

当然のことながら、保護者もまた、自分の掲げた選択肢や紙に書いた約束に拘束されます。この点を保護者がいい加減にすると、子どもは「大人の言うことは信頼できないので、自分で考えて行動しよう」という誤った方向に突っ走ってしまいます。

こうした家庭内でのやり取りを通して、子どもは、与えられた情報を上手く利用することに慣れていきます。その成果は勉強面でも表れます。「問題文を正確に読む」「問題文に書かれた指示をチェックする」「複数の選択肢を丁寧に比較検討する」など、勉強で必要となるスキルも鍛えられるからです。

最近の子どもたちは概して、問題文も選択肢もろくに読まず、自分の頭で(=与えられた情報を無視して)すぐに考え始めます。僕の指導では毎回、「考える前に読みなさい(探しなさい)」と生徒を注意しているくらいです。そんな子どもたちばかりですから、問題文や選択肢からヒントを得られる子どもはそれだけでも有利になります。

「自分の頭で考えなさい!」という声がけは、子どもが与えられた情報を上手く利用できるようになってからでも遅くありません。小中学生のうちは、それよりも大切な基礎基本を固めましょう。

トップ画像=フリー写真素材ぱくたそ / モデル=あんじゅ

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