家庭教師先で保護者からよく聞かれるのが、「どうしたら子供が自分から勉強するようになりますか?」です。小学生、特に中学受験生の保護者にとっては、勉強しないで遊ぼうとする子供に頭を抱えます。
このときに僕がアドバイスすることは同じです。決して難しくなく、今すぐにでも実践できる子供との関わり方を伝えています。それを今回の記事で紹介します。
ただし、以下の内容は、子供が小学生までの場合です。中学生になってからは、対応を変えた方がよいこともあるのでご注意ください。
幼い子供の話を聞いてあげると、彼らはどうなる?
保護者へのアドバイスについて解説する前に、僕の家庭教師としてのスタンスを話しましょう。
僕は、家庭教師として指導している生徒に弟や妹がいれば、生徒の指導後、その弟や妹の話を聞いてあげるようにしています。幼い子供は、家族や学校・塾の先生ではない大人に興味を示すことが多く、僕と話したそうにしていることがよくあります。それに付き合ってあげます。
弟や妹との会話については、指導料などが発生するわけではないので、完全に僕のサービスです。彼らが後に生徒になるかどうかも関係ありません。それでも、幼い子供にとって大人と話す時間はとても大切だと思うから話を聞いてあげるだけです。家庭教師先でなくても、(滅多にありませんが)イベントや店などでも、子供に話しかけられればじっくり聞いてあげるようにしています。
話を聞いてあげるのは指導でないので、僕は弟や妹の言ったことに対して「そうなんだ。よく知ってるね」「そうなの?もっと詳しく教えて」などと、話を促すような相槌を打つだけです。それが彼らにとって嬉しいのでしょう。こうして彼らの話を聞く回数が増えていくと、彼らはどんどん話す内容が増えていきます。
彼らの話について、保護者はよく「何を言っているのかわからない」と言います。しかし、じっくり話を聞いてみると、彼らはわかりやすく話してくれます。保護者とは違う大人に自分のことを伝えようと思うから、言葉の使い方や説明のし方などを意識するのでしょう。というか、そもそも保護者が子供の話を聞いていないだけの可能性もありますが(笑)
このように継続的に弟や妹の話を聞いてあげていると、すんなりと彼らは勉強するようになることが多かったです。最初は指導でないので、僕は「~をやってみたら?」と伝える程度ですが、彼らはそれをきちんとやってくれます。僕が「●●について調べてみてよ」と言うと、彼らは次までにその●●を調べて、いろいろ話してくれます。そのまま彼らが生徒になって僕に教わるようになることも少なくありません。
彼らが生徒になった後は「指導が楽」です。彼らは勉強に対してニュートラルで、普段の会話の延長のような感じで教わるから、ある程度は自分から勉強してくれます。何よりも、僕に対して「もっと伝えたい」という思いが強まったことで、勉強に対して前向きになっていると考えられます。
これまでの指導経験では、勉強を中断してい(て、保護者も諦めてい)た小学5年生が、僕が話をたくさん聞いてあげたことをきっかけに中学受験の勉強を再開し、受験して志望校に合格した、という事例がありました。
「子供の話をしっかり聞いてあげてください」
僕は、家庭教師指導の経験もふまえて、「どうしたら子供が自分から勉強するようになりますか?」という保護者の質問に対して、「子供の話をしっかり聞いてあげてください」とアドバイスしています。
僕自身の幼少期を振り返っても、母親は僕に何も教えてくれませんでした。一方で、僕がベラベラ喋る話を(うるさがりながらも)聞いてくれました。小学生になる前は、保育園への送り迎えの車の中で、ウルトラマンの怪獣名しりとりに付き合ってくれたくらいです。このとき、僕は「もっと怪獣を覚えたい」と思って、勝手にひらがなやカタカナ、さらには漢字の一部も覚えました。自分から勉強していたのです。
子供のいる保護者は、僕の母親と同じように子供に接すればよいのではないでしょうか?
保護者の方から何かを話す必要はないので、運転中や料理中などでも対応できるはずです。「何を言っているのかわからない」と思うなら、子供に「それはどういうこと?」「もっと詳しく教えて」などと促せばよいだけです。子供がまちがったことを言っていても、それを否定するのではなく、「それは本当なの?」「どこで聞いたの?」などと確認して、子供本人にまちがいを訂正させます。
さらに、このような会話を勉強にも応用したらどうでしょうか?
保護者は子供に、学校や塾で教わってきたことについて「今日は何を勉強したの?」と聞いてみます。子供が答えられなければ、「ノートを確認して」などと促して、一緒にノートを見ながら授業内容を復習します。
子供が授業内容を覚えていなかったり理解していなかったりしても、保護者は教えたり、ましてや「どうしてできないの!」と叱ったりしないのがコツです。こういう場合も、子供と一緒に教科書などを見直し、子供に「ここに何が書いてあるのか、教えて」と声をかけます。
大事なのは、保護者が会話の方向性を調整しつつも、子供にたくさん話してもらうことです。保護者は子供の話の聞き役に徹しましょう。いわゆる「傾聴」です。そうすると、子供は自分から勉強するようになる可能性が高まるはずです。
子供が幼いうちは教えるよりも話を聞く方が大切
僕は、子供が幼いうちは教えるよりも話を聞く方が大切だと思っています。教えるのは、子供が成長して、それなりに言葉を理解できるようになってからでも遅くありません。むしろ、その方が、教わったことを効率よく吸収してくれます。
しかし、世間一般の保護者はこれと逆のことをしがちです。子供が幼いうちにあれもこれもと教えようとして、子供の話にはろくに耳を傾けません。そして、子供が成長して「反抗期(という言葉が僕は嫌いですし、使いたくありません)」となり、保護者が一生懸命子供の話を聞こうとしても、子供は口を利いてくれなくなることも……。
こうなってしまうのは、子供が幼い頃に話を聞いてあげなかったことも原因の一つだと僕は思います。だからこそ、僕はこれからも、家庭教師先の保護者に「子供の話をしっかり聞いてあげてください」とアドバイスし続けます。
トップ画像=写真AC
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