僕の指導では、推薦入試を受ける受験生のために、面接の練習や志望理由書の添削を実施します。彼らの話を聞いたり、彼らが書いた文章を読んだりすると、僕は「う~ん……」と頭を抱えてしまいます。というのも、彼らの話や文章には説得力がないからです。
では、どうすれば説得力を高められるのでしょうか?本記事では、推薦入試を成功させるためのコツを紹介します。
説得力のある話や文章には一貫性が必要
説得力のない話や文章は内容に一貫性がありません。
たとえば、「志望動機は貴校の文武両道の校風に魅力を感じたからです」「中学生活ではバスケ部の部長を務めました」「高校では理系科目の勉強に力を入れたいです」という3つの内容を話す(書く)とします。
それぞれの内容を詳しく説明するのは誰でもできます。しかし、多くの生徒たちは、その3つがどうつながっているのかを説明できません。このことを「一貫性がない」といいます。
ストーリーを支える将来の目標
一貫性のある話をしたり文章を書いたりするには、ストーリーが必要です。一見すると脈絡のないことでも、ストーリー仕立てにするとつじつまが合うものです。「桃、犬、キジ、サル」だけでは意味不明ですが、「桃から生まれた桃太郎は、犬、キジ、サルと一緒に鬼退治に出かけました。」とすれば、「ああ、なるほど!」となります。
そして、このストーリーを支えるのが将来の目標です。桃太郎の話であれば、「鬼退治」という目標があるから、桃から桃太郎が生まれますし、犬もキジもサルも仲間になるのです。推薦入試の面接や志望理由書も、まずは将来の目標を定めることから始めましょう。
将来どんな仕事に就きたいか?
高校受験や大学受験の場合、将来の目標は「将来どんな仕事を就きたいか?」です。まずはこの目標を決めてしまいましょう。本記事では、「将来医者になりたい」という将来の目標を例にして、そこから面接や志望理由書の内容を膨らませていきます。
まずは、「医者になりたい」と思った動機を考えましょう。本記事では、「私が子どもの頃、大好きな祖父ががんで亡くなりました。このときの悲しみがきっかけで、がん患者を救うために医者になりたいと思うようになりました。」というところからスタートします。
「医者になりたい」といっても、「父が開業医で跡を継がなければならない」「テレビ番組で医者の活躍を見てかっこいいと思った」などの動機もあるでしょう。別にこれらの動機が悪いわけではありません。しかし、そのまま書くとダサいので、少し言葉を変える必要があります。例を以下に示します。
将来の目標に合わせた情報の取捨選択と経験の解釈
将来の目標を定めた後は、その目標につながるように情報を取捨選択したり、経験を解釈したりします。「私が子どもの頃、大好きな祖父ががんで亡くなった。だから、がん患者を救うために医者になりたい。」という目標ならば、あらゆる話題をこの目標に絡めて膨らませます。逆に、目標に関係のない情報は切り捨てます。
具体的に、志望動機と中学でがんばったこと、高校でがんばりたいことの3つについて、先ほどの「医者になりたい」をもとに膨らませてみましょう。
志望動機
「志望動機は貴校の文武両道の校風に魅力を感じたからです」という志望動機は、医者になることとどう関係するでしょうか?
医者は、患者の診察をするだけでなく、手術も行わなければなりません。また、夜間の救急外来に対応しなければならないこともあるでしょう。そうなると、「頭が良い」だけでは仕事を続けられません。長時間の手術や徹夜にも耐えられるように、体力作りや複数のタスクを同時にこなす訓練が必須です。だから、「文武両道」が大切なのです。
中学でがんばったこと
「中学生活ではバスケ部の部長を務めました」も、医者になることと絡めます。
医者は、自分一人で仕事をするわけではありません。看護師や診療放射線技師、作業療法士など、医者以外の人たちと協力して患者の治療に当たります。近年は「チーム医療」という言葉が流行している通り、メディカルスタッフ間の連携が重視されます。そうした中でリーダーシップを発揮しなければならないのが医者です。
また、医者には、患者やその家族に対する十分な説明と適切なケアも求められます。「治療さえ成功すればOK」という時代は終わりました。
これらをふまえて、バスケ部の部長として、何をどうがんばったのかを具体的に述べます。「県大会出場」といった実績があれば、それも盛り込むべきです。しかし、実績以上に大切なのは、将来の夢との整合性です。したがって、実績が全くなくとも物怖じする必要はありません。
高校でがんばりたいこと
「高校では理系科目の勉強に力を入れたいです」という目標は、そのまま医学部受験につながるのでわかりやすいでしょう。しかし、これだけだと、他の受験生と差がつきません。もう一ひねりあるとさらに良くなります。
たとえば、「英語をがんばりたい」というのを前面に出してみてはどうでしょうか?近年、カルテを英語で書く医者が主流になってきました。また、日本でグローバル化が進んだ結果、国内に外国人が増えてきました。外国人患者を来院することが多くなるでしょうし、メディカルスタッフが外国人になることも考えられます。医者には英語力が必須です。
こうした理由から「英語をがんばりたい」と書きますが、漠然と「勉強をがんばる」ではダメです。いつまでに何をどうしたいかを具体的に明示します。以下を参照してください。
想定外に質問には将来の目標から逆算して答える
面接で事前に回答を準備していなかった質問をされた場合、将来の目標から逆算して答えましょう。
たとえば、「あなたの尊敬する人は誰ですか?」という質問をされたら、「医者になりたい」に関連する人物を答えます。歴史上の人物であれば、オランダ語を学んで翻訳本『解体新書』を著した杉田玄白でしょうか?杉田玄白のおかげで、日本にも解剖学が浸透しました。
もし、歴史上の人物を答えられなければ、父母などの身近な人物を答えても構いません。その際も、「医者になりたい」という目標から外れない人物を選びます。父親が医者なら答えやすいでしょう。しかし、親族に医者がいなくても、次のように言えば、説得力のある回答になります。
ストーリー仕立ての話や文章に面接官や採点官は感動する
本記事では、面接や志望理由書の説得力を高めて推薦入試を成功させるコツを紹介しました。具体的には、話や文章をストーリー仕立てにする方法を具体例に基づいて解説しました。中学生(高校生)が自力でこのレベルに到達するのは難しいでしょう。そのため、信頼できる指導者に添削などをお願いすることをオススメします。
多くの受験生は、自分の思ったことをたどたどしく話したり書いたりするので精いっぱいです。彼らが必死である一方で、面接官や採点官は箸にも棒にかからない話や文章にうんざり……。だからこそ、ストーリー仕立ての話や文章に、面接官や採点官は「おっ!」と反応するわけです。
推薦入試を受ける受験生は、「その場で何とかしよう」と思わずに、事前準備を十分過ぎるくらい行ないましょう。そうすれば、面接官や採点官は感動させることも可能です。
トップ画像=フリー写真素材ぱくたそ
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