同じものを何個でも取り出せる組合せを「重複組合せ」(「重複」は「ちょうふく」「じゅうふく」と読みます)といいます。これは、同じものを何人かで分けるときの場合の数を求めるときに使う考え方です。今回は、多くの中学受験生が苦手とする重複組合せについて、さまざまな解き方を紹介します。
1人1枚は必ずメダルをもらえる問題
【例題1】同じ種類のメダル5枚を太郎君、次郎君、三郎君の3人で分けます。1人1枚は必ずもらえるとして、分け方は何通りありますか。
この問題が重複組合せの問題です。解き方は大きく分けて2種類あるので、1つずつ見ていきましょう。
【解き方1】地道に分け方を数え上げる解き方
1つめは、地道に分け方を数え上げる解き方です。
1人1枚は必ずもらえる場合は、最初に1人1枚ずつメダルを分けてしまうのがコツです。こうすると、残っているメダルが2枚だけになります。この2枚の分け方を考えると、1人が2枚もらって他の2人は0枚になる(2、0、0)と、2人が1枚ずつもらって他の1人は0枚になる(1、1、0)です。
(2、0、0)のとき、2枚もらえる人は太郎君、次郎君、三郎君の3通りです。
(1、1、0)のとき、0枚の人は太郎君、次郎君、三郎君の3通りです。
(2、0、0)と(1、1、0)は同時に起こらないので、和の法則より3+3=6(通り)が答です。
【解き方2】仕切りを入れて分ける解き方
2つめは、仕切りを入れて分ける解き方です。
まずは5枚のメダルを○として横1列に並べます。そして、○と○の間に仕切りの|を2本入れて、○を3つに分けます。3つに分けた○を、左から太郎君、次郎君、三郎君のそれぞれのメダルとします。太郎君、次郎君、三郎君の並び順を固定するのがポイントです。
たとえば、次のように分けます。
○|○○|○○ → 太郎君1枚、次郎君2枚、三郎君2枚
○○○|○|○ → 太郎君3枚、次郎君1枚、三郎君1枚
ただし、次の分け方は認められません。なぜなら、メダルを1枚ももらえない人がいるからです。
|○○○|○○ → 太郎君0枚、次郎君3枚、三郎君2枚
○||○○○○ → 太郎君1枚、次郎君0枚、三郎君4枚
このような分け方にならないように仕切りを入れるためには、下の図の■から2か所を選んで仕切りを入れればよいことがわかります。
○■○■○■○■○
4つの■の中から2つを選ぶ組合せ(順列ではありません)なので、(4×3)÷(2×1)=6(通り)が答です。
太郎君、次郎君、三郎君の並び順を固定するのはどうしてですか?
もし固定しないと、(太郎君3枚、次郎君1枚、三郎君1枚)と(次郎君1枚、太郎君3枚、三郎君1枚)が出てきて、同じものをダブって数えることになるからだよ。
メダルを1枚ももらえない人がいてもよい問題
【例題2】同じ種類のメダル5枚を太郎君、次郎君、三郎君の3人で分けます。1枚ももらえない人がいてもよいとして、分け方は何通りありますか。
例題1との違いは、「1枚ももらえない人がいてもよい」という条件です。解き方は例題1と同じく2通りですが、答は違ってきます。
【解き方1】地道に分け方を数え上げる解き方
1つめは、地道に分け方を数え上げる解き方です。
メダルを1枚ももらえない人がいる分け方は、1人が5枚もらって他の2人は0枚になる(5、0、0)、4枚もらう人と1枚もらう人が1人ずつで他の1人は0枚になる(4、1、0)、3枚もらう人と2枚もらう人が1人ずつで他の1人は0枚になる(3、2、0)です。
(5、0、0)のとき、5枚もらえる人は太郎君、次郎君、三郎君の3通りです。
(4、1、0)のとき、太郎君の枚数は4枚、1枚、0枚のどれかになるので3通り、次郎君の枚数は太郎君の枚数以外の2通り、三郎君の枚数は太郎君と次郎君の枚数以外の1通りで、積の法則より3×2×1=6(通り)です。
(3、2、0)のときも(4、1、0)のときと同じように考えて6通りです。
(5、0、0)(4、1、0)(3、2、0)は同時に起こらないので、和の法則より3+6+6=15(通り)です。これに、1人1枚は必ずもらえる例題1の答を足して15+6=21(通り)です。
【解き方2】仕切りを入れて分ける解き方
2つめは、仕切りを入れて分ける解き方です。
基本的には例題1と考え方は同じです。しかし、次の分け方もOKとなる点が例題1と違います。
|○○○|○○ → 太郎君0枚、次郎君3枚、三郎君2枚
○||○○○○ → 太郎君1枚、次郎君0枚、三郎君4枚
1枚ももらえない人がいてもよい場合、5枚のメダルと2本の仕切りを合わせた7つを全て○にして横に並べます。この7つの○の中から2つを選んで仕切りにします。
○○○○○○○
左から2番目と6番目の○を|にすると、
○|○○○|○ → 太郎君1枚、次郎君3枚、三郎君1枚
左から3番目と4番目の○を|にすると、
○○||○○○ → 太郎君2枚、次郎君0枚、三郎君3枚
仕切りの入れ方は、7つの中から2つを選ぶ組合せなので、(7×6)÷(2×1)=21(通り)が答です。
メダルと仕切りを合わせた○から仕切りを選ぶのがポイントね!
例題1の別解を考えよう
例題1も、例題2の【解き方2】と同じ解き方で解けます。
最初に1人1枚ずつメダルを分けてしまい、残りの2枚と仕切り2本を4つの○にして横に並べます。この4つから2つを選んで仕切りにします。
○○○○
左から2番目と4番目の○を|にすると、
○|○| → 太郎君1枚、次郎君1枚、三郎君0枚
左から1番目と2番目の○を|にすると、
||○○ → 太郎君0枚、次郎君0枚、三郎君2枚
仕切りの入れ方は、4つの中から2つを選ぶ組合せなので、(4×3)÷(2×1)=6(通り)が答です。
重複組合せに公式は必要ない
重複組合せにも公式があります。しかし、この公式は複雑な上に、どの場面で使えるのかが分からないと使い道がありません。公式に頼るのではなく、場合分けをして数え上げたり、絵を描いて考えたりすることが大切です。
次の質問に答えましょう。(解答例は最後のページにあります)
① 同じものを何人かで分ける場合の数の問題では、数え上げる解き方以外にどのような解き方がありますか。
② 同じもの5つを3人で分ける場合の数を考えます。1人1つは必ずもらえるときと、1つももらえない人がいてもよいときとでは、仕切りを入れる解き方にどのような違いがありますか。
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