【浮力】力のつり合いの図を描こう!計算問題をわかりやすく解説する

【浮力】力のつり合いの図を描こう!計算問題をわかりやすく解説する 理科

中学受験理科の物理分野では浮力の計算問題がよく出ます。自力で解けないだけでなく、参考書の解説を読んでも理解できない受験生も少なくないでしょう。そんな受験生は力のつり合いの図を描きながら考えてみましょう。

基本的な浮力の計算問題を解く

【問題1】次の問いに答えましょう。ただし、水1cm3の重さを1gとします。

(1) 100gのビーカーに水を300cm3入れて、台はかりで重さをはかりました。台はかりは何gを示しますか。

(2) 下の図のように、(1)の水の中に、体積100cm3、重さ150gの物体Aをばねばかりにつるして入れました。Aに働く浮力は何gですか。

(3) (2)のとき、ばねばかりは何gを示しますか。

(4) (2)のとき、台はかりは何gを示しますか。

【浮力】力のつり合いの図を描こう!計算問題をわかりやすく解説する

浮力は、物体が押しのけた液体の重さと同じ大きさの力です。液体が水の場合、「水1cm3の重さを1gとする」という条件があれば、次の関係が成り立ちます。

浮力の大きさ=水に沈んだ物体の体積(単位のcm3をgに変える)
浮力は体積に比例?浮力と重力との関係から物体の浮き沈みを考えよう
中学理科第1分野に登場する「浮力」は、水深に関係なく、物体の体積にのみ比例します。浮力の公式を求めた後、物体の浮き沈みについて考察します。

(1)の解き方(水とビーカーの重さを求める)

浮力は関係しない問題です。水1cm3の重さを1gなので、水300cm3の重さは300gです。したがって、水の重さとビーカーの重さを足して、300+100=400(g)です。

(2)の解き方(Aに働く浮力の大きさを求める)

Aが押しのけた水の体積はAの体積と同じで100cm3です。水1cm3の重さを1gなので、「浮力の大きさ=水に沈んだ物体の体積」です。したがって、Aに働く浮力は100gです。

(3)の解き方(ばねばかりが示す数値を求める)

物理分野の問題では、1つの物体に着目して、その物体に触れているものを見つけることがとても大切です。なぜなら、物体は、触れているものから力を受けるからです。(ただし、重力(重さ)は別に考えます)

物体Aには、ばねばかりと水が触れています。したがって、Aに働く力は、ばねばかりがAを引く力、水の力(浮力)、重力(重さ)です。これらの力を図に書き込みます。

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Aが動かないので、上下の力はつり合っています。これより、次の関係が成り立ちます。

ばねばかりがAを引く力+浮力=重力(Aの重さ)

ばねばかりが示す重さは、ばねばかりがAを引く力と同じです。□+100=150を解いて、□=150-100=50(g)が答です。

(4)の解き方(台はかりが示す数値を求める)

台はかりの上にあるものを1つの物体Bだと考えます。すなわち、「A+水+ビーカー=物体B」として、Bに触れているものを探し、Bに働く力を図に書き込みます。

【浮力】力のつり合いの図を描こう!計算問題をわかりやすく解説する

ここで注意すべきは、Bに外側から触れているのは台はかりとばねばかりで、Bの内部にある水を無視できるということです。したがって、(4)で浮力を考える必要はありません。

Bの重さは150+300+100=550gです。また、ばねばかりがBを引く力は、(3)と変わらないので50gです。

Bが動かないので、上下の力はつり合っています。これより、次の関係が成り立ちます。

台はかりがBを押す力+ばねばかりがBを引く力=重力(Bの重さ)

台はかりが示す重さは、台はかりがBを押す力と同じです。□+50=550を解いて、□=550-50=500(g)が答です。

複雑な浮力の計算問題を解く

【問題2】水が入らないようにふたをした長さ20cmの円筒の底におもりが入っています。この円筒全体の重さは300gです。また、水を入れた容器を台はかりにのせたら、重さは2500gでした。水を入れた容器を台はかりにのせたままで、円筒の底を水中に入れるとまっすぐに立って浮き、水面上に円筒が5cm出ました。水1cm3の重さを1gとして、次の問いに答えなさい。

(1) 円筒が浮いているとき、台はかりは何gを示しますか。

(2) 円筒の底面積は何cm2ですか。

(3) 円筒を上から押して、円筒全体が水中に入りました。このとき、台はかりは何gを示しますか。

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(1)の解き方(台はかりが示す数値を求める)

水を入れた容器と円筒を1つの物体Aだと考えます。その上で、Aに触れているものを探し、Aに働く力を図示すると次の通りです。

【浮力】力のつり合いの図を描こう!計算問題をわかりやすく解説する

Aに外側から触れているのは台はかりだけでAの内部にある水を無視できるので、浮力を考える必要はありません。

Aは動かないので、上下の力はつり合っています。Aの重さは2500g+300g=2800gで、台はかりがAを押す力□gなので、□=2800gです。

(2)の解き方(円筒の表面積を求める)

円筒に着目すると、円筒に触れているものは水だけです。したがって、円筒に働く力は、水の力(浮力)と重力(円筒の重さ)だけです。これらを図示すると次の通りです。

【浮力】力のつり合いの図を描こう!計算問題をわかりやすく解説する

円筒は動かないので、上下の力はつり合っています。したがって、浮力は△=300gです。水1cm3の重さを1gなので、円筒の水中に入っている部分の体積は、300gから300cm3です。

また、円筒の水中に入っている部分の高さは20-5=15(cm)です。したがって、「底面積=体積÷高さ」より、300÷15=20(cm2です。

(3)の解き方(円筒を沈めたときに台はかりが示す数値を求める)

水面上に出ていた円筒の体積は、20cm2×5cm=100cm3です。これを水中に沈めると、100cm3から100gの浮力がかかります。この浮力と同じ力で上から押すと、円筒全体が水中に入ります。上から押す力はAに働く力になるので、これを加えて図を描き直すと次の通りです。

【浮力】力のつり合いの図を描こう!計算問題をわかりやすく解説する

ここでも、Aの内部にある水を無視して、浮力を考えないのがポイントです。

Aは動かないので、上下の力はつり合っています。したがって、台はかりがAを押す力は◇=100+2800=2900(g)です。

台はかりが示す重さは浮力の分だけ大きくなる

中学受験の浮力の問題は、力のつり合いの図を描きながら考えると視覚的に理解しやすくなります。同時に、参考書などに書かれていることの意味もわかります。

たとえば、中学受験理科の参考書などには、「台はかりが示す重さは浮力の分だけ大きくなる」と書かれています。これは、力のつり合いの図から式を作って計算すれば、その通りの結果になります。

意味も分からずに参考書などの言葉を丸暗記するのではなく、原理原則から考えることが大切です。

トップ画像=Pixabay

コメント

  1. ダンボ より:

    浮力‼️懐かしくも情けない思い出の浮力‼️47年前の中学受験経験者です。亡き父に散々しごかれましたが、いまひとつ、よく理解出来ないまま、今に至りますこの図解が、涙出そうです‼️本当に解説頂き、ありがとうございました現役の人間でなくて、すみません⤵️あの当時の勉強で、得られた知識や、色々な事柄の名残で現在も生きています。勉強出来て、また、勉強出来る環境で、有り難かったです。中学受験は、大変良き思い出です。また、他のところも拝見したいです。感謝。

    • みみずく みみずく より:

      コメントありがとうございます。

      中学受験の理科、特に力やてこ、滑車などの物理分野は魔界ですね(笑)
      理解できない小学生が悪いのではなく、よくわからない説明でごまかそうとする塾や参考書に問題があります。困ったものです…

      ダンボさんの長年の疑問が解消されたようで何よりです。

      > 中学受験は、大変良き思い出です。

      このように考えられるのはとても幸せなことだと思います。
      中学受験生には、ダンボさんのように、その後につながる勉強をしてもらいたいものです。

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