小学校時代「算数が得意!」と言っていた生徒の多くが中学数学でつまずき、そのまま「数学が苦手!」に変わります。そのつまずきの原因を分析します。
文章題を誤魔化してもその先で悲惨なことに
中学数学第一の関門が、中学1年の中盤で学ぶ「一次方程式の利用」です。生徒たちは文章題に手も足も出ません。
そこを何とか誤魔化して(投げ出して?)も、第二の関門が待ち受けています。「比例・反比例」や「図形」の分野です。数学が苦手な生徒は学年末テストで20~30点台という悲惨なことに……。このような悲劇は、毎年全国の中学校で起こっています。
多くの中学生が、中学1年の中盤以降でつまずくのはどうしてでしょうか?
すぐに計算をしようとするからできなくなる
数学が苦手な生徒は多くの場合、やるべきことを理解しないまますぐに計算しようとします。
たとえば、円柱の表面積を求める問題があります。数学が苦手な生徒は、このタイプの問題を見ると、柱体の体積の公式に数値を当てはめます。何も考えずに、いきなり「底面積×高さ」を計算し始めます。当然、一生懸命計算したところで円柱の表面積を求められるわけがありません。
こういう生徒に僕は質問します。
僕「君は何をしようとしてるの?」
生徒「計算しようとしたんです」
僕「いや、だからどうしてその計算をしたの?」
生徒「えっ、だって公式じゃないですか!」
この生徒が何も考えていないのは明らかです。この生徒に必要なのは計算練習ではありません。「計算する前にやるべきことを言語化する」という意識付けです。
「計算する前にやるべきことを言語化する」とはどういうことでしょうか?
たとえば、円柱の表面積の問題では、次のようなやりとりをできれば合格です。
僕「君は何をしようとしてるの?」
生徒「表面積を求めようとしました」
僕「具体的には何を求めればいいの?」
生徒「側面積を求めて、それに2つの底面積を足します。側面積を求めるのに必要なので、底面の円周の長さも求めました」
ここまでスラッと言葉が出てこないにしても、「表面積」「側面積」「底面積」「円周の長さ」などの言葉くらいは、計算前に思い浮かべられないといけません。そうでないと、自分が何をすべきなのかが分からなくなります。
多くの生徒たちは、これらの言葉が曖昧なので、最終的に「数学分かんない!」と苦手意識が芽生えます。
言語化トレーニングの積み重ねで数学が伸びる
「数学は計算」と思い込んでいる生徒は言語化を怠ります。その結果、自分のやっていることがわからなくなって、数学が苦手になります。
そんな彼らには、問題を解くときに全ての手順をいちいち言葉で書かせる言語化トレーニングが効果的です。計算式だけでなく、「側面積と底面積2つ分の和が表面積なので」「側面積を求めるために底面の円周の長さを求めると」など、自分のやるべきことをしっかり書かせましょう
たとえば、(3x+2)-(2x-4)の計算をノートに書く場合も、次のように言葉による説明をたくさん書かせます。
手順や注意点をしっかり書き込んだノートは、生徒にとって最高の参考書になります。学校の授業や宿題で分からなくなっても、このノートを見直せば大抵は解決します。
このような言語化トレーニングの積み重ねによって、生徒の中から「数学が苦手!」が消えていきます。
トップ画像=フリー写真素材ぱくたそ
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