私は投資をしています。具体的には株取引と投資信託積立です。
投資で増えた資産があるため、現在は、収入が少ない期間があっても、すぐに困ったことにはなりません。
FIRE(労働収入に頼らず、資産運用による不労所得で生活すること)には程遠いものの、何もしなくても、何年かは生活していけるはずです。
こうした投資のあれこれについて、私は生徒や保護者にも話します。
とはいえ、リスクのある投資を安易に勧めるわけではありません。あくまでも、投資の成功や失敗から得た教訓を伝えています。
これらの教訓をいくつか紹介します。
iDeCoからNISA、そして個別株の売買へ
本題に入る前に、私の投資歴を簡単にお話しします。
私は2019年10月頃に投資を始めました。
当時は比較的収入が多かった時期で、節税と年金補充のため、SBIベネフィット・システムズでiDeCo(個人型確定拠出年金)に加入しました。投資といっても、毎月淡々とインデックス投信を積み立てるだけです。
これとは別に、私は長年、中古戸建を買うために貯金していました。しかし、立ち退きによる引っ越しでバタバタして、中古戸建を買うのは先延ばしになりました。
まとまった金額を銀行に預けていましたが、ほとんど利息がつきません。
「すぐに使う予定のないお金をこのまま放置しているのはもったいない」と思い、増やす方法を調べた結果、NISA(少額投資非課税制度)にたどり着きました。そして、2020年1月頃にSBI証券で証券口座を開設しました。
最初は、iDeCoと同じように、つみたてNISAだけにするつもりでした。
しかし、日本の個別株を眺めていたら買ってみたくなり、少しずつ入金しては、さまざまな銘柄を100株ずつ買っていきました。含み益が出たら、ちょくちょく売ってお小遣い稼ぎをしました。楽しいひとときでした。(損益通算できないNISA枠は使いませんでした)
ここで悲劇が起こります。2020年2月終盤のコロナショックです。
証券口座の保有資産の評価額がどんどん減っていきました。当初は6,000円だった含み損が、60,000円になり、600,000円になり……。吐き気を催す減りっぷりでした。
ここまで来ると、私は逆に「定期預金だと思って放置しよう」と覚悟を決めました。
iDeCoもつみたてNISAも淡々と積み立て続けました。入金して、株価がだだ下がっている銘柄を新たに買いました。
私は、株も投資信託も何年も放置するつもりでした。しかし、コロナショックからの回復は予想以上に早く、コロナ禍まっただ中に買った銘柄はどんどん含み益になっていきました。これらを売却し、別の銘柄を買い、また売却し……。
こうした売買の繰り返しでそこそこ資産が増えました。しかし、「売らなければよかった」と後悔した銘柄も多く、私は大いに反省しました。
とはいえ、投資家デビュー直後に大暴落を経験したにもかかわらず、資産を減らさず、「少しの含み益で売ってはいけない」という大事なことを学べたのは幸運でした。
これ以降、私は、長期保有を前提とした株の買い方をするようになりました。
株式投資の成功と失敗から得た教訓3選
私の株の買い方は「良いものを安く買う」です。
株価がだだ下がっている銘柄を探し、SBI証券の提供する数値と『四季報』、チャートの位置、掲示板の書き込みをざっと見て、「この企業は倒産しないだろう」と判断したら100株だけ買います。
買い値の20~30%安くなったら買い増し、逆に買い値の50%以上の含み益になったら売却を検討します。原則として損切りはせず、常時70銘柄ほどを保有しています。
投資や経済の勉強はしませんし、財務諸表(決算書)なども見ません。全く興味がないからです。
このように「いい加減」な買い方ですが、約5年で資産は入金額の2.5倍ほどになりました。インデックス投信よりは優秀な成績です。
しかし、ここにたどり着くまで、私も手痛い失敗を何度かしましたし、逆に資産を大きく増やすのに成功したこともあります。そこから得た以下の教訓は、株式投資だけでなく、勉強や仕事、さらには人生全般で活かせるものだと思います。
1. 地味でも大切な存在に目を向ける
私が買うのは、誰もが知っている有名企業だけではありません。
たとえば、トリプルバガー以上になっている日本リーテックは、電気設備工事を行う会社で、JR東日本を支えています。
最近ダブルバガー以上になったオプトランは光学薄膜装置を製造販売しています。そもそも光学薄膜装置が何なのかわかりませんが、生産がストップすると困りそうです。
このように、私は、名前を聞いたことがなく、事業内容も地味ですが、社会や産業をしっかり支えている企業を発掘してコレクションしています。
同時に、日常生活においても、地味でも大切な存在に目を向けるようにしています。
人はキラキラした存在に目を奪われがちです。しかし、そのキラキラの背後には、派手さがなくて目立たないけれども、私たちの生活を支える「縁の下の力持ち」がいます。コロナ禍の時期にエッセンシャルワーカーが脚光を浴びましたが、こうした存在を意識できるかどうかで、人間関係の充実度や社会構造の見え方などが変わってきます。
以前、社長の息子を教えていたときのこと。彼は「うちの会社はマクドナルドみたいに有名じゃないんだ」と嘆いていました。彼が言うには、彼のお父さんが経営する会社は、さまざまな商品のパッケージを作っているそうです。私は彼に「君のお父さんの会社は、さまざまな商品を支えていて立派だし、そう簡単に倒産しない体力もある。マクドナルドのように有名でなくても、誇るべき会社だよ」と話しました。
彼のように、キラキラに憧れる生徒たちには、私の銘柄選びの話も絡めながら、「本当に大切なのは誰(何)なのか?それに気づけているか?」と問います。そして、「表舞台に立って活躍することだけが人生の意義ではない」と伝えています。
2. 予想や期待はギャンブルになる
多くの個人投資家は、企業の将来を予想し、株価上昇や増配などを期待して株を買います。予想を的中させるため、経済や産業の動向を熱心に勉強する投資家も少なくありません。
一方、私は予想や期待で株を買いません。というのも、予想や期待はギャンブルになるからです。
企業、さらには経済や産業の将来は、簡単に予想できません。新型コロナウイルスが全世界に蔓延したり、生成AIがあっという間にインフラ化したり、ロシアがウクライナに侵攻したり、トランプ大統領がイランを攻撃したり……。
予想外の出来事が頻発する現代において、競馬や競輪のように、予想に基づいた行動をするのはリスキーです。ましてや、不確実な未来に期待するのは愚の骨頂です。
こうした理由から、私は予想や期待ではなく、堅実性を重視して株を購入します。堅実性とは、簡単に言えば「この企業は倒産しないだろう」です。
たとえば、コロナショック回復期、私は三井松島ホールディングスの株を買い集めて平均取得単価を700円台まで下げ、数年後に約4,000円で売却しました。
三井松島ホールディングスはもともと石炭事業が中心の企業でした。二酸化炭素削減が世界的な課題となっている昨今、石炭事業はどう考えても儲かるわけがありません。しかし、三井松島ホールディングスは、利益剰余金が多い一方で有利子負債が少なく、いわゆる「お金持ち」でした。ここに注目した私は「この企業は石炭事業がポシャっても倒産しないだろう」と判断して、株を少しずつ買い集めました。
私は知らなかったのですが、有名投資家で億り人の井村俊哉氏が買い集めていたこともあり、三井松島ホールディングスの株価が急騰しました。株価が2,000円台、3,000円台で少しずつ売り、最終的には4,000円台のときに全て売却しました。
このように、私は、企業の輝かしい未来を予想し、その可能性に期待して株を買うわけではありません。企業が十分なキャッシュを持っているか、借金は多過ぎないかを見て、長期保有に耐え得るのを確認して買います。何なら事業内容すらどうでもいいと思っています。お金さえあればスクラップ・アンド・ビルドも簡単だからです。
こうした投資スタンスに基づき、私は生徒にも「予想や期待をするな」と伝えています。「●●になるだろう」と山を張って定期テストや入試に臨むと、大抵は失敗します。自分に都合のよい未来を期待すればするほど、その期待は裏切られ、取り返しのつかない結果になります。だから、十分な学力を身に付け、不測の事態が生じても対応できるように事前に訓練することを推奨します。
3. 選べるなら、最初から優秀なものを選ぶ
2とも関連しますが、私は株を買うとき、その企業の成長性には一切期待しません。選べるなら、最初から優秀なものを選ぶのが最善だと考えます。
たとえば、私はWDBホールディングスをちまちま買い増ししていました。その理由は有利子負債(借金)が0だからです。事業内容も「理学系研究職や研究補助職の人材派遣で首位」とあり、AI人材が不足しがちな時代に強みを発揮するとも思っています。
ただ、WDBホールディングスの株価は直近1年間、多少上下はするものの、下がる一方でした。買い増しする度に含み損が膨らみましたが、私は「有利子負債0=優秀」を信じて保有し続けました。そして先日、大幅増配のニュースで株価が急騰し、無事にプラ転しました。
同様に、有利子負債が少ない銘柄としては、大手芸能プロダクションのアミューズ、医療機器の輸入・製造を軸とする日本ライフライン、イメージセンサ関連の機器を製造販売するインターアクション、前に紹介したオプトランなどがあり、私はこれらの株を少し多め(300~500株程度)に保有しています。
また、もともと国営事業だった日本郵政は、たとえ郵便事業が縮小してもしぶとく生き残るでしょうから、平均取得単価700円台の600株をガチホしています。ただ、そろそろ売り時かもしれません。
私も株取引を始めた当初、グロース株(成長性や将来性に期待し、株価の値上がり益(キャピタルゲイン)を狙う銘柄)に手を出していました。当時の「マザーズ」「JASDAQ」、現在の「グロース」に属する銘柄です。
しかし、グロース株は低配当な上に、ちょっとしたことで株価が暴落するため、私は買うのをやめました。成長性や将来性への期待に大金をつぎ込むのは「投資」ではなく「投機」です。
私は、優秀かどうかわからないグロース企業に期待するのではなく、最初から優秀なプライム企業の堅実性を評価します。そのため、現在は一貫してバリュー株(企業本来の価値に対して、現在の株価が割安に放置されている銘柄)だけを購入しています。
昨年から今年にかけて、私は元教え子の就職活動をサポートしました。このとき、彼女から「大企業とベンチャー企業のどちらに就職したらいいと思いますか?」と質問されました。あくまでも「僕の考えだけど」と前置きした上で、私は「選べるなら、最初から優秀な大企業に就職した方がいい」と伝えました。
就活に限らず、受験でも結婚でも何でも、私は同じ考えです。しかし、最初から優秀なものを選ぶには、選べる立場になる必要があります。この立場を確保する上で必要なのは、受験ならば学力ですから、生徒たちには「豊富な選択肢を得るために勉強しよう」と話します。
逆に、学校や企業、好きな人などから選ばれるには、最初から優秀であると有利です。「学歴は関係ない」という主張も根強いですが、優秀さの一つの指標として今でも通用するのが学歴である以上、できるだけ偏差値の高い大学に進学しておいた方がよいとは思います。この辺りについても生徒に話しています。
一番の投資は、学校の勉強を頑張ること
私が株の話をすると、生徒に「僕も株をやった方がいいですか?」と聞かれることがあります。これに対して、私は「株式投資はリスクがあるから、必ずしも勧めない」と答えた上で、「それよりも、今の君にとって一番の投資は、学校の勉強を頑張ることだよ」と伝えています。
株を買うには、どんなに安い銘柄でも数万円は必要です。しかし、学校の勉強を頑張って、第一志望の高校や大学を目指すだけなら、ほとんどお金がかかりません。
「学力向上には塾通いが必要」、さらには「重課金しないと第一志望には合格しない」と思い込んでいる学生や保護者もいますが、これは間違いです。
正しい方法で地道に勉強を継続すれば、月に何万円も塾などに支払う必要はありません。逆に、正しい方法でなければ、どんなにお金をかけても、望む結果を得られないでしょう。
正しい方法の第一歩として、学校で教わるレベルの知識や技術を完璧にすることが大切です。学校の勉強は受験勉強の土台になりますし、さらには人生全般で役立つ基礎になります。
学校の勉強は、必ずしも実用性と直結するわけではありません。そのため、「学校の勉強は役に立たない」と主張する人たちがいます。彼らは、学校教育に最新の知識や技術を取り入れる必要性を訴えます。
確かに、最新の知識や技術は一見すると「実用的」ですが、陳腐化の速度も速く、数年後には実用的でなくなることが少なくありません。これらと対照的なのは、普遍的な知識や技術に絞った現在の学校教育です。
たとえば、古典を「趣味」「教養」と捉えれば、多くの人たちにとって不要な科目です。しかし、古典が読み継がれてきた理由を考え、記載されている内容の面白さを知れば、現代のビジネスに活かせます。これはまさに「温故知新」です。
また、ChatGPT、Claude、Geminiなどの生成AIが発達し、遠くない将来、AIが何でもやってくれる時代になるかもしれません。しかし、その「何でも」を言語化して設計するのは人間です。このとき、学校で学ぶ国数英社理などが役立ちます。
人間がAIに適切な指示(プロンプト)を出さない限り、AIは人間の望むものを出力してくれません。この指示を出せない人間は、最終的にAIの言いなりにならざるを得ず、「AIに使われる側」に甘んじるしかなくなるでしょう。
世界情勢も、経済の動きも、技術の進歩も、何もかもが予測不可能な現代において、特定の企業に投資する以上に確実なのは、自分にしっかり投資することです。自分で学んで得た知識は一生ものの財産ですし、自信を持って「これは確実にできる」と言えるだけの技術はピンチを救ってくれます。
生徒たちには、自分への投資に時間と労力を割ける学生時代を大切にしてもらいたいと思っています。

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