国語(現代文)の記述問題では、解答の方向性を大きく間違わない限り、部分点をもらえます。しかし、多くの受験生は「どうせなら部分点ではなく満点が欲しい!」と思うでしょう。そんな彼らのために、記述問題の解答作成でやらかしがちなNGを紹介しながら、より良い解答の書き方をお伝えします。
記述問題の解答を作ってみよう
次の文章を読んで、後の問に答えなさい。
「愛」が狂気に変わる前兆は、「おまえのためを思って」「あなたのことが心配で」という言葉だ。これらの言葉には、自分の思い通りに相手をコントロールしたいという欲求が隠れている。しかし、言葉を発した本人はその欲求を自覚していないことが多い。むしろ、本当に「相手のため」を思っているため、相手への配慮がどんどん失われていく。相手を自分の理想の姿に変えようとしている時点で、自分しか見えていないのだ。
また、「愛」を強く意識するとき、上手くいかない状況に執着している可能性も高い。相手をコントロールできないと、そのことばかりを考えるようになる。そして、頭の中が相手のことでいっぱいになって、「相手を愛している」と勘違いしてしまう。「愛」は、思考や感情を縛り付ける頑丈な鎖である。身動きが取れなくなって視野が狭まると、狂気が芽生える。
一方、本当の愛とは、自分を抜きにして相手の幸福を願う気持ちに他ならない。この愛は、相手の嫌な面や上手くいかない状況も受け入れる懐の広さと表裏一体である。たとえ自分が満たされなくても相手を尊重できる心の余裕があれば、「おまえのためを思って」などの言葉が口をついて出てくることはないだろう。
恋愛関係や親子関係のトラブルを泥沼化させないコツは、「愛」ではなく愛に生きることである。
問、下線部「『愛』ではなく愛に生きること」とはどういうことか。六十字以内で説明しなさい。
NG解答の前に模範解答を紹介します。
下線部には、かぎかっこ有りの「愛」とかぎかっこ無しの「愛」があります。同じ「愛」という言葉でも、かぎかっこの有無で違いを持たせています。したがって、それぞれの「愛」を本文に即して言いかえる必要があります。
かぎかっこ有りの「愛」については、第1段落と第2段落で詳しく説明されています。
第1段落で紹介される「おまえのためを思って」などの言葉は、かぎかっこ有りの「愛」の具体例なのでカットします。こうした言葉を発する人についてまとめている最終文から、「自分しか見えていない」を解答の要素とします。「自分しか見えていない」結果どうなるのかはその前の文に「相手への配慮がどんどん失われていく」とあるので、こちらも解答に盛り込みたいところです。
第2段落1文目「『愛』=上手くいかない状況に執着している」も解答の要素にします。「上手くいかない状況」は長いので、字数オーバーになりそうなら、「困難」などに言いかえる必要があります。2文目以降は「執着」の具体例や比喩なのでカットします。
一方、かぎかっこ無しの「愛」については、第3段落1文目に「本当の愛=自分を抜きにして相手の幸福を願う気持ち」が言いかえになります。2文目以降はかぎかっこ無しの「愛」を直接説明したわけではないので、解答の要素から外します。
下線部の「~に生きる」は「~をもって生活する」といった意味ですから、解答に入れなくてもいいでしょう。
以上を踏まえて解答をまとめると次の通りです。
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