記述式の現代文の試験では、本文の特定箇所に傍線が引いてあって「傍線部『~』について具体的に説明しなさい」という問題がよく出ます。
このタイプの問題は、多くの生徒が苦手とします。というのも、「具体的に」が何なのかは学校でも塾でもあまり説明されないため、生徒たちが混乱してしまうからです。
本記事では、「具体的に」という漠然とした言葉について、分かりやすく説明します。
具体的=分かりやすく、詳しく
たとえば、「犬」という言葉を考えましょう。
1~4のどれも「犬」であることは確かです。しかし、1→2→3→4の順番で、「犬」をイメージしやすくなっています。自分の家で「ポチ」という名前の犬を飼っている場合、「犬」と言われたら、真っ先にポチを思い浮かべるはずです。
このイメージしやすさこそが「具体的」です。言葉で説明する場合、「具体的に説明する」というのは、相手にイメージが伝わるように「分かりやすく、詳しく説明する」ことです。
具体例を答案に書くと×になる
現代文の問題で「『犬』について具体的に説明しなさい」とあると、多くの生徒は3や4を書いて×を食らいます。「犬」の具体的な説明として、どうして「チワワ」や「うちのポチ」ではダメなのでしょうか?
確かに3や4は具体的です。しかし、具体的過ぎて具体例になっています。現代文の試験では、「具体例は答にならない」という暗黙のルールがあります。このルールを知らないと、一生懸命書いた答が×になります。
では、「具体的」と「具体例」の違いは何なのでしょうか?
具体例が答にならない理由
「犬」を例にして、1、3、4の関係を考えます。3は1に含まれます。たとえば、チワワは犬の一種です。同じように、4は3に含まれます。うちで飼っているポチはチワワだわ……という感じです。
つまり、1→3→4の順番で、言葉の意味する範囲が狭くなっています。広い範囲の事物や概念の一部を取り出して、その一部を詳しく説明することを具体例といいます。
「チワワ」や「ポチ」などの具体例をいくら詳しく説明しても、全ての「犬」を説明したことにはなりません。だから、具体例を答にすると×なのです。
「具体的」と「具体例」の違い
1と2の関係も考えてみましょう。
2は、1を分かりやすく、詳しく説明しています。そして、ほとんどの犬は2の説明に当てはまります。
以上を踏まえて1~4の関係をまとめると、次のようになります。
現代文の解答として求められる「具体的」は2のレベルです。
具体例を見分けるスキルの大切さ
現代文の問題における「傍線部『~』について具体的に説明しなさい」は「『~』全体に当てはまる詳しい説明を書きなさい」という意味です。
このタイプの問題で自分の答が具体例になっていないかをチェックするには、「この答は全ての『~』を説明できるかな?」と考えてみましょう。
「経済学」を具体的に説明するのに、アダム・スミスやマルクス、ケインズなどの誰か1人を説明してもダメですよ。「環境問題」を具体的に説明するのに、地球温暖化や酸性雨のことだけ詳しく書いても×になります。
具体例を見分けるスキルは、記述答案作成で役立つだけではありません。現代文や英語などの長文読解で、筆者の主張を把握したり要約したりするとき、具体例を読み流すテクニックが求められます。
文章を読むときは常に「ここは具体例だろうか?」と考えるようにしましょう。
トップ画像=イラストAC
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