英語が苦手な中高生のほとんどは、英語と日本語のルールをごっちゃにしています。彼らは、「日本語だと~なのに、英語だとどうして…なの?」を連発します。
「どうしても何も、英語と日本語は根本的に違う言語なのだから、ルールが異なるのは当たり前でしょ?」と僕は思うのですが、そこを納得できない生徒たちの多いこと……。
とはいえ、そんな生徒たちに対して、「当たり前でしょ?」ではあまりにも酷ですね。もっと具体的なアドバイスを提示します。
英語と日本語の違いはたくさんあります。しかし、その中でも特に覚えるべき違いを3つ、次の通りにピックアップします。
これらの違いを1つずつ解説していきます。
1. 語順
英語と日本語とでは、修飾・被修飾の語順が大きく異なります。
- 日本語…前から後ろを修飾
- 英語…後ろから前を修飾
英文法の授業では、「目的語」「補語」といわれるものも、日本語では多くの場合修飾語扱いです。それも踏まえて考えてみます。
修飾・被修飾の語順が異なる例
「私は本を読みました。」の「本を読みました」の部分は、「本を」が修飾語、「読みました」が被修飾語です。前から後ろを修飾していますね。
一方、「私は本を読みました。」を英訳した “I read a book.” です。「本を」と「読みました」の語順が、”read a book”と逆転してしまいます。これが、英語は後ろから前を修飾する、ということです(もっとも、”read a book”の語順は“修飾・被修飾”とはいわずに、“述語+目的語”として説明されるのが普通です)。
同様に、「その川で泳いでいる男性」を英訳すると”the man swimming in the river” です。「その川で泳いでいる」(修飾)+「男性」(被修飾)は、”the man”(被修飾)+ “swimming in the river”(修飾)に逆転します。
このように、後ろから前を修飾することを後置修飾といいます。後置修飾は、不定詞・分詞・関係詞で特に重要です。
修飾・被修飾の語順が一致する例
一語同士が結び付く場合、英語と日本語とで修飾・被修飾の語順が一致します。
「新しいカメラ」なら “new camera”(冠詞省略)、「とても楽しい」なら “very interesting” となりますよね。ただ、このような英語の語順は例外と認識した方が楽です。
2. 時制
中高生の英作文では、「彼は学校へ行った。」を”He goes to school.” と英訳する間違いがよく見られます。時制を表す「昨日」などの表現がないと、何でもかんでも現在形で書いてしまうのです。
こうした間違いの根拠となる「時制」という概念について見てみましょう。
日本語における時制
日本語の文章では、過去形の文体の中に現在形を混ぜても違和感がありません。むしろ、文末表現を変えるために、過去形の文を現在形にすることを推奨されることすらあります。
昨日、僕は友達とかくれんぼをしました。鬼の僕は友達を一生懸命探しました。しかし、どんなに探しても、A君だけは見つかりません。A君はどこに隠れたのでしょうか。
過去の出来事を書いた文章の中で、「A君だけは見つかりません。」は現在形ですね。日本語では、このような表現が許されます。
また、「私は毎日英語を勉強する。」も「私は毎日英語を勉強している。」もあまり意識的な使い分けがなされません。「~する」を「~している」に書き換えても大丈夫な場合が多いんですね。
英語における時制
時制がゆるゆるの日本語に対して、英語では時制の概念が厳密です。そのため、日本語と英語とで必ずしも時制が一致しない、という悲劇も生まれます。
たとえば、「私は毎日英語を勉強している。」を英訳するなら”I study English every day.”と現在形です。一方、「私は今英語を勉強している。」は”I am studying English now.”と現在進行形です。「勉強している」という同じ日本語が、現在形と現在進行形になるんですね。
とはいえ、中学英語レベルなら、日本語の文末表現と英語の時制を一致させても問題ない場合が多いです。「~している」なら現在進行形、という感じです。
そこで、僕が口を酸っぱくして中学生に言うのは、「文末表現に敏感になれ」です。
これらは全て異なる英語表現です。上から順に英訳していきますね。
“can”などの助動詞は時制ではありません。しかし、文末表現に注意するという意味では要注意です。
【上級者向け】時制の一致・不一致
上位私立高校などを受験する時制の一致・不一致が大切です。
たとえば、「彼女は美しいと思いました。」では、「美しい」も「思いました」も過去です。この場合、両方の時制を過去形に一致させます。
一方、「彼女は美しかったと思いました。」では、「美しかった」は大過去(「思いました」の時点よりさらに前の出来事)、「思いました」は過去です。この場合、大過去の方を “had + 現在分詞(p.p.)” で表現します。
この2つの例文からも分かりますが、日本語と英語とで表記上の時制がずれています。「彼女は美しいと思いました。」の「美しい」は、素直に考えれば現在形です。しかし、英訳すると過去形になるんですね。日本語と英語のずれは、時間軸を意識しながら考える必要があります。
3. 名詞
日本語の「猫」を英語に直すと”cat”です。しかし、「彼女は猫を飼っています。」を”She has cat.”と書くと×を食らいます。
英文法では、数えられる名詞(可算名詞)と数えられない名詞(不可算名詞)があります。そのうち、数えられる名詞には要注意です。
数えられる名詞の単数形・複数形
数えられる名詞(可算名詞)の単数形の直前には、冠詞や所有格、“this/that” などが必要です。一方、複数形には、単複同形でない限り、末尾に“-s/-es” を付けます。
日本語では、「彼女は1匹の猫を飼っています。」のように、「1匹の」をいちいち言いません。しかし、英語では、この「1匹の」に当たる “a” が必須です。そのため、「彼女は猫を飼っています。」は “She has a cat.” と英訳します。
また、「彼女は3匹の猫を飼っています。」も、”She has three cats.” と英訳します。“cat”の後ろに必ず“s”を付けます。日本語では普通「3匹の猫たち」とはいいませんよね?この「たち」に当たるものが英語では必要なんですね。
日本語では、単数形と複数形を必ずしも区別しません。一方、英語では、両者を厳密に区別します。
冠詞に関する個別ルール
英語には、他にも冠詞(a/an/the)に関する個別ルールがあります。楽器の前や公共の場所の前には “the” を付ける、”by + 交通手段” の交通手段を表す名詞は無冠詞などですね。
こうした個別ルールは、英文法全体の中で論理的に位置づけられるのかもしれません。ただ、「ここの名詞に“the”が付くのは、英文法的に説明すると~だから」と理屈をこねるよりも、場面ごとに個別ルールを覚える方が賢明だと思います。
語順!時制!名詞!
中学生で英語が苦手な生徒は、「語順!時制!名詞!」と呪文のように唱えましょう。英作文で正解できなかったときは「語順・時制・名詞のどこかに間違いがないかな?」と考えることが大切です。
トップ画像=フリー写真素材ぱくたそ
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