ある事柄の起こり方全てを数え上げるのが「場合の数」です。その中でも、並び順を考えない場合の数を「組合せ」といいます。今回は、異なるものを選ぶ組合せの公式について解説します。
Cの公式が成り立つ理由を考えよう
【例題】1、2、3、4、5の書かれた5枚のカードがあります。このとき、次の各問いに答えなさい。
(1) この5枚の中から2枚を選んで2けたの整数を作るとき、何通りの整数ができますか。
(2) この5枚の中から2枚を選ぶとき、何通りの選び方がありますか。
(3) この5枚の中から3枚を選ぶとき、何通りの選び方がありますか。
まずは、(1)と(2)の違いをきちんと説明できますか?
「どちらも『選ぶ』問題だから、解き方は同じだ」と考えてはいけません。
(1)は、並び順を考える場合の数なので「順列」です。一方、(2)は、並び順を考えない場合の数なので「組合せ」です。
順列と組合せの違いがわからない受験生は、以下の記事で復習してね!
(1)と(2)の違いをはっきりさせたところで、それぞれの問題を計算で解いてみましょう。
(1)の解答(順列の問題を計算で解く)
(1)では、十の位と一の位の数字をそれぞれ選んでいきます。
十の位から選ぶ場合、十の位は1~5の5通りがあります。一の位は、十の位に使った数字を除いた4通りがあります。
たとえば、十の位に1を選んだ場合、一の位は2~4の4通りです。同じように、十の位に2に選んだ場合、一の位は1、3、4、5の4通りです。
このように、十の位に1~5のどの数字を選んでも一の位は4通りです。したがって、2けたの整数は5×4=20(通り)です(積の法則)。
さて、5×4を公式で表すと5P2です。5P2は「異なる5個のものから2個を選んで並べる順列」を意味します。
さらに、5P2を!(階乗)を使って表すと、5P2=\(\frac{5!}{(5-2)!}\)=\(\frac{5!}{3!}\)=\(\frac{5×4×3×2×1}{3×2×1}\)=5×4となります。
(1)のような順列の問題で使える公式は次の通りです。
異なるn個のものからr個を選んで並べる順列は、
nPr=\(\frac{n!}{(n-r)!}\)=\(\underbrace{ n \times (n-1) \times (n-2) \times \cdots }_{r個}\)
Pの公式や階乗がわからない受験生は、以下の記事で復習しよう!
(2)の解答(組合せの問題を計算で解く)
(1)の解き方をもとにして(2)の問題を考えてみましょう。
(1)では、1と2を選んだ場合、12と21を区別して2通りです。しかし、(2)では、1と2を選んだ場合、12と21を区別しないで1通りと考えます。
では、12と21を1通りにするにはどうすればいいのでしょうか?
1と2の並べ方を考えます。十の位は1か2の2通りで、一の位は十の位の数を除いた1通りなので、並べ方は2×1=2!(通り)です。
12と21を1通りにするには2!で割ればいいことがわかりました。これは、3と4を選んだ場合や1と5を選んだ場合などでも同じです。
したがって、(1)で求めた並べ方5P2を2!で割って、\(\frac{{}_{ 5 }P_{ 2 }}{2!}\)=\(\frac{5×4}{2×1}\)=10(通り)が(2)の答です。
さて、\(\frac{{}_{ 5 }P_{ 2 }}{2!}\)を公式で表すと5C2です。5C2は「異なる5個のものから2個を選ぶ組合せ」を意味します。
ちなみに、5P2=\(\frac{5!}{(5-2)!}\)=\(\frac{5!}{3!}\)なので、5C2=\(\frac{{}_{ 5 }P_{ 2 }}{2!}\)=\(\frac{5!}{2!×3!}\)と書きかえられます。
(2)のような組合せの問題で使える公式は次の通りです。
異なるn個のものからr個を選ぶ組合せは、
nCr=\(\frac{{}_{ n }P_{ r }}{r!}\)=\(\frac{n!}{r!×(n-r)!}\)
組合せに限らず、r個のものの並び順を考えない場合はr!で割ります。このことを覚えておくといいでしょう。
(3)の解答(nCrとnCn-rの関係を考える)
(3)も(2)と同じく、並び順を考えない場合の数なので組み合わせです。
組合せの公式を使って、5C3=\(\frac{{}_{ 5 }P_{ 3 }}{3!}\)=\(\frac{5×4×3}{3×2×1}\)=10(通り)が答です。
(2)と(3)の答が同じなのは偶然ではありません。実は、5C3=5C2なのです。
(3)に限らず、nCr=nCn-rが成り立ちます。それは、nCrもnCn-rも\(\frac{n!}{r!×(n-r)!}\) と書き表せるからです。
もっとも、nCr=nCn-rが成り立つ理由は、公式をいじらなくても明らかです。
たとえば、(3)の「5枚の中から3枚を選ぶ」は「5枚の中から選ばない2枚を選ぶ」と同じです。つまり、5枚の中から選ばない2枚を選んで除いてしまえば、必ず残り3枚を選ぶことになります。だから、5C3=5C2が成り立ちます。
nCr=nCn-rは当たり前のことを公式として表しているだけです。
意味もわからず公式に頼ってはいけない
中学受験生の多くは、塾などで習うためか、組合せの公式(C)を知っています。一方、どうしてこの公式が成り立つのかまでを理解している受験生はあまりいません。
確かに、組合せの公式は便利です。しかし、意味もわからず公式に頼って答を出していると、入試本番で公式を使えない問題が出て、手も足も出なくなります。
そうなるくらいなら、初めから公式を使わず、樹形図などを描いて地道に数え上げる練習をするべきです。
次の質問に答えましょう。(解答例は最後のページにあります)
① r個のものの並び順を考えない場合、どうしますか。
② 異なる100個のものから2個を選ぶ問題では、どのように考えると楽に計算できますか。
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