国語で文法を苦手とする生徒たちは、文法用語の理解が不正確で不十分です。本記事では、彼らが理解しやすいように、国文法における「修飾」について解説します。
「修飾語」と「被修飾語」
「修飾」とは、他の言葉にかかって、その言葉に意味を付け加えたり、詳しく説明したりする働きのことです。
「他の言葉にかかる」という表現が分かりづらければ、「かかる」を「くっつく」と言いかえましょう。たとえば、「赤いリンゴ」は、「『赤い』が『リンゴ』にかかる」といいます。
また、修飾語とは、他の文節を修飾する文節です。一方、被修飾語は、修飾語に修飾される文節です。そもそも「被」は「~される」という意味です。
「文節」と「単語」を区別する
「文節」とは、意味が分かる程度に細かく区切った言葉のまとまりです。「私は広い公園で遊んだ。」を文節に分けると、「私は/広い/公園で/遊んだ」です。これを更に単語レベルで分けると「私/は/広い/公園/で/遊ん/だ」になります。
文節と単語をきちんと区別しましょう。なぜなら、「修飾語」「被修飾語」などの「~語」について問われている場合、国文法では文節単位で考えなければならないからです。
「私は広い公園で遊んだ。」で「広い」に対する被修飾語は「公園で」です。「公園」という単語で答えると×になるので要注意です。
被修飾語を見つける
被修飾語の見つけ方を解説します。
「『●●』の被修飾語を答えなさい」もしくは「『●●』がかかる文節を答えなさい」という問題では、次のルールに従って被修飾語を判断します。
- 修飾語とくっつけて自然な日本語となり、意味も通じる文節を探す。
- 倒置でない限り、修飾語の後ろの文節から探す。
- 2が複数ある場合、修飾語に近い位置にある方を答える。
これらのルールを具体的に確認しましょう。
「赤い帽子をかぶった男性が、リンゴの木の下に立っていた。」という文で、「赤い」の被修飾語を答えなさい。
1のルールに従って考えます。2のルールもふまえて、「赤い」に後ろの文節を次々とくっつけていきます。
- 赤い帽子を → 自然な日本語&意味が通じる
- 赤いかぶった → 不自然な日本語
- 赤い男性が → 意味がおかしい
このように考えた結果、「赤い」の被修飾語が「帽子を」だと分かります。
しかし、次のようにも考えられます。
- 赤いリンゴの → 自然な日本語&意味が通じる
こういう場合は、3のルールに従います。
「赤い」に近いのは「帽子を」の方です。したがって、「リンゴの」は却下します。
2のルールについてもう少し考えましょう。
「彼の家には、古い時計がある。」という文で、「古い」の被修飾語を答えなさい。
「古い」の被修飾語は、「家には」と「時計が」が考えられます。しかし、順序的な問題として、「古い」の前にある「家には」が「古い」の被修飾語になることはありません。したがって、「古い」の被修飾語は「時計が」です。
「連体修飾語」と「連用修飾語」
修飾には、「連体修飾」と「連用修飾」の2種類があります。これらを区別することが大切です。
「連体」の「体」は体言のことです。体言とは名詞のことです。「連体修飾」とは、名詞を修飾することです。
一方、「連用」の「用」は用言のことです。用言とは動詞・形容詞・形容動詞のです。名詞以外が用言だと思って構いません。「連用修飾」とは、名詞以外を修飾することです。
このように教わった生徒たちの中には、「『赤い』は『い』で終わるから形容詞です。だから、『赤い』は連用修飾語です」という生徒がいます。しかし、これは間違いです。
修飾語を連体修飾と連用修飾に分ける場合、見なければならないのは被修飾語の方です。被修飾語が体言(名詞)か用言(名詞以外)かで連体修飾と連用修飾を区別します。
「大きな窓から外を眺めた。」という文の修飾語を、連体修飾語と連用修飾語に分類しなさい。
この問題は、次のように考えます。
- 「大きな」の被修飾語は「窓から」 → 「窓」は名詞なので「大きな」は連体修飾語
- 「窓から」の被修飾語は「眺めた」 → 「眺める」は動詞なので「窓から」は連用修飾語
- 「外を」の被修飾語は「眺めた」 → 「眺める」は動詞なので「外を」は連用修飾語
「連体修飾」と「連用修飾」の区別は、国文法では「連体詞」と「副詞」の区別や、活用のある語(動詞・形容詞・形容動詞・助動詞)の「連用形」と「連体形」の区別につながります。また、英文法でも「形容詞」と「副詞」の区別につながります。
文法用語を区別して覚える
「修飾」と「被修飾」、「連体修飾」と「連用修飾」、加えて「文節」と「単語」、「体言」と「用言」など、区別して覚えるべき文法用語が盛りだくさんです。しかし、これらを区別できなければ国文法を理解できません。
逆にいえば、「文法が分かりません」と言う生徒たちのほとんどは、文法用語を区別して覚えられていません。最低限の知識を覚えもしないで「分かりません」を連発するのはやめましょう。
「修飾」の考え方は、国文法だけでなく、古典文法や英文法でも重要です。他教科の土台となる国文法を、中学生のうちにしっかり定着させる必要があります。
トップ画像=フリー写真素材ぱくたそ / モデル=河村友歌
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