多くの中学受験生は、3kmを300000cmに変換するような問題を苦手とします。「1kmは1000mで、1mは100cmで……」というバラバラの知識のせいで混乱するからです。
このような混乱を防ぐには、小学6年の算数で最後に学習する「量の単位のしくみ」を理解するのがおすすめです。
本記事では、「量の単位のしくみ」をふまえて単位換算のコツを解説します。
「量の単位のしくみ」で学ぶSI接頭辞
「mL」は一つの単位ではなく、「m(ミリ)」と「L(リットル)」に分かれます。このことがわかると、「m(ミリ)」は「m(メートル)」や「g(グラム)」とくっついて「mm(ミリメートル)」や「mg(ミリグラム)」になっていることにも気づくはずです。
体積や長さなどの単位とくっつく「m(ミリ)」や「k(キロ)」などを「SI接頭辞」といいます。このSI接頭辞のうち、中学受験レベルで使うものは次の表の通りです。
日本ではdaやhをあまり見ないけど、しっかり覚えよう。特にdaとdをまちがわないでね!
たとえば、「k」を「×1000」に書きかえれば、「3km=3×1000m=3000m」と計算できます。一方、次の例題1はどうでしょうか?
例題1は「3km=3000m」よりも難しいと思います。しかし、小数点の移動を使えば、このような単位換算も簡単に解けます。
単位換算を小数点の移動と考える
たとえば、3.14×10=31.4、3.14×100=314…のように、ある数に10、100、1000…をかけると、小数点が右に1つ、2つ、3つ…と移動します。一方、3.14×\(\frac{1}{10}\)=0.314、3.14×\(\frac{1}{100}\)=0.0314、3.14×\(\frac{1}{1000}\)=0.00314…のように、ある数に\(\frac{1}{10}\)、\(\frac{1}{100}\)、\(\frac{1}{1000}\)…をかけると、小数点が左に1つ、2つ、3つ…と移動します。
単位換算でも同じように小数点の移動を使えます。
まず、SI接頭辞を書き並べます。左から「k(キロ)、h(ヘクト)、da(デカ)、×(なし)、d(デシ)、c(センチ)、m(ミリ)」とし、真ん中には「×」を必ず入れてください。
次に、もとの単位から換算後の単位まで、左右どちらの方向にいくつ移動したかを考えます。最後に、単位の移動と同じ方向に同じ個数分だけ小数点を移動します。
たとえば、3kmの単位をmに変えたい場合、kから×まで右に3つ移動していることがわかります。
同じように3の小数点を右に3つ移動して、3km=3000kmです。
同じ手順で35000cmの単位をkmに変えてみましょう。cからkまで左に5つ移動します。
同じように35000の小数点を左に5つ移動して、35000cm=0.35kmが例題1の答です。
実際のテストでは、テスト開始直後、問題用紙の空白に「k、h、da、×、d、c、m」を書き、それを見ながら単位換算するといいでしょう。
真ん中に×を入れるのを忘れないでね!
面積や体積の単位換算には要注意
例題2では、多くの受験生は「小数点を右に3つ移動するだけだから3000m2です」と答えます。しかし、これはまちがいです。
なぜなら、面積の単位換算は次のように考えなければならないからです。
1km2=1km×1km=1000m×1000m=1000000m2
面積の単位は、「m(メートル)」の右上に小さな「2(平方)」が付いています。これは、同じものを2回かける目印です。したがって、小数点の移動も2回行う必要があります。
3km2の単位をm2に変える場合、小数点を右に3つ移動×2回です。したがって、3の後ろに0が6つくっついて、3km2=3000000m2が正解です。
同じように考えて、3km3の単位をm3に変える場合、小数点を右に3つ移動×3回で3km3=3000000000m3となります。
小数点の移動を使えない単位換算
例題3ではこのままでは小数点の移動を使えません。そこで必要となるのが次の4つのルールです。
- 1mL = 1cm3 = 1cc
- 1kL = 1m3
- 1a(アール) = 100m2
- 1t(トン) = 1000kg
上の2つは、数字が同じで単位だけが変わっているんだ。
4つのルールをふまえて、0.5dLの単位をcm3に変えてみます。
まず、4つのルールにcm3はありますが、dLはありません。ルールを使うため、小数点の移動でdLをmLに変えます。小数点を右に2つ移動して0.5dL=50mLです。
次に、ルールを使って、mLをcm3にそのまま書きかえます。したがって、50mL=50cm3なので 0.5dL=50cm3が答です。
アールやトンの単位換算にチャレンジ
【例題4】□にあてはまる数を答えなさい。
(1) 11000m2=□ha (2) 2000g=□t
(1)の解答(面積の単位換算)
ルール通り、m2をaに書きかえます。その後、aを「h」の付いているhaに直すので、小数点を左に2つ移動します。
11000m2=110a
110a=1.1ha
したがって、11000m2=1.1ha
(2)の解答(重さの単位換算)
gをkgに書きかえるため、小数点を左に3つ移動します。その上で、ルール通り、kgをtに書きかえます。
2000g=2kg
2kg=0.002t
したがって、2000g=0.002t
小数点の移動と4つのルールを合わせて使うと、aやtの単位換算も簡単に解けるようになります。
SI接頭辞にはk~m以外に何があるんですか?
大きな数を表すSI接頭辞で、日常的に使うものとしては、M(メガ)・G(ギガ)・T(テラ)があるよ。Mは「×百万」、Gは「×十億」、Tは「×一兆」を表すんだ。
パソコンやスマホの容量を表す「メガバイト」や「ギガバイト」の「メガ」や「ギガ」ですね!
その通り!逆に小さな数を表すSI接頭辞は、μ(マイクロ)やn(ナノ)を聞いたことがあるんじゃないかな?μは「×百万分の一」、nは「×十億分の一」だよ。
「マイクロチップ」や「ナノマシン」という言葉は、SI接頭辞から来てるんですね!
SI接頭辞は中学以降の勉強にもつながる
公立小学校で「量の単位のしくみ」を習うのは6年の最後です。しかし、中学受験生は、小数計算ができるようになったら、すぐにSI接頭辞を覚えて使うようにした方がいいでしょう。
SI接頭辞は算数のすべての分野で大切です。たとえば、面積・体積や速さの問題では、単位換算ができないと解けない問題も少なくありません。
また、中学受験の理科でも、単位換算をしなければならない問題があります。さらに、中学進学後、単位換算がよくわかっていないと、密度や力などの計算問題ができなくなってしまいます。
小学生のうちにSI接頭辞に慣れておくことが、中学以降の勉強にもつながります。
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