都立高校入試国語の裏ワザ?小説の表現技法問題で正解するためのコツ

みみずく先生のプロ家庭教師&ライター奮闘記 国語

都立高校一般入試の国語では、大問3で小説の表現技法が問われます。

その解法をしっかり理解すれば、都立高校一般入試国語で確実に5点をゲットできます。

表現技法問題を解くための3つの手順

「…………」とあるが、この表現について述べたものとして最も適切なのは、次のうちではどれか。

多くの受験生は、このような表現技法問題を苦手とします。本文中からきっちり根拠を拾えないので、彼らは戸惑ってしまいます。

しかし、表現技法問題は、次の手順で考えれば難しくありません。

  1. 各選択肢の中から表現技法に関する語句を探して印をつける。
  2. 傍線部と各選択肢を照らし合わせ、消去法で選択肢を消していく。
  3. 複数の選択肢が残った場合、傍線部以外の事実関係を確認する。

1. 表現技法に関する語句を探す

表現技法問題は、次の手順で考えます。

  1. 各選択肢の中から表現技法に関する語句を探して印をつける。
  2. 傍線部と各選択肢を照らし合わせ、消去法で選択肢を消していく。
  3. 複数の選択肢が残った場合、傍線部以外の事実関係を確認する。

1の「表現技法に関する語句」とは、たとえば「比喩」「句読点を多用して」「印象的」などです。都立高校一般入試では、特に「●●的」という言葉が大切です。

平成20年度以降の都立高校一般入試の過去問から、表現技法に関する語句を抜き出してみましょう。

年度 記号 表現に関する語句(正解は◎)
令和6 「対照的に」◎
「交互に」
「明確に」
「順序立てて」
令和5 「説明的」
「対照的」
「躍動的」
「印象的」◎
令和4 「丁寧に描写」「説明的」
「場面の描写を短く区切りながら」「印象的」◎
「同じ語句の繰り返しとたとえ」「躍動的」
「細部まで詳しく描く」「写実的」
令和3 「対比」「象徴的」
「たとえを用いて技巧的に」「情緒的」
「視覚的に」「印象的」◎
「絵画的に」「写実的」
令和2 「多角的に分析」「対照的」
「時間の経過とともに順序立てて分かりやすく」
「擬音語」「印象的」◎
「誇張して」
平成31 「順序立てて説明的」
「感覚的な言葉を用いて」
「たとえを用いて」◎
「対比を用いて」
平成30 「躍動的」
「印象的」◎
「説明的」
「写実的」
平成29 「様々な角度からありのままに」
「時間の経過とともに一つ一つ順序立てて」
「語句の繰り返しとたとえを用いて」◎
「細部まではっきりと対照的に描き分けて」
平成28 「絵画的」
「印象的」◎
「象徴的」
「対照的」
平成27 「二人の声を描き分ける」「対照的」
「時間の経過とともに」「説明的」
「たとえ」「印象的」◎
「細部までありのままに」
平成26 「光と影を描き分けて」「対照的」
「順序立てて」「論理的」
「たとえ」「印象的」◎
「躍動的」
平成25 「対になるような語句とたとえ」◎
「語句の順番の並び替え」
「感覚的な言葉」
「対比や語句の繰り返し」
平成24 「相いれない二つの言葉を並べる」「対照的」
「文章中に句読点を多用」「躍動的」
「時間の経過とともに」「説明的」
「句読点を効果的に用いた短文を重ねて」「印象的」◎
平成23 「短い言葉を重ねる」「印象的」◎
「細部までありのままに」
「順序立てて丹念に」
「対照的」
平成22 「時間の経過とともに」「説明的」
「細やかな視点で丁寧にとらえて」「写実的」
「鮮やかに描き分けて」「対照的」
「感覚的な言葉を用いて」「印象的」◎
平成21 「二人の言葉を描き分ける」「対照的」
「短い言葉を重ねる」「印象的」◎
「会話を順序立てて描く」「説明的」
「生き生きとした会話」「躍動的」
平成20 「鋭い感覚でとらえ」「細部までありのままに」
「巧みに描き分け」「対照的」
「想像力豊かにとらえ」「たとえを用いて」◎
「すばやくとらえ」「躍動的」

こうして一覧表を作ってみると、正解の法則のようなものが見えてきませんか?

その詳細は後ほど説明するとして、2以降の手順を次ページで説明しますね。

2. 消去法で選択肢を消していく

表現技法に関する語句と傍線部とを照らし合わせ、その表現技法が傍線部中に存在するか、をチェックします。

たとえば、傍線部が次の文章だとします。

【傍線部】

僕は溢れる涙を手の甲で拭った。何度も。何度も。見上げると、黒雲が空を覆いつくしていた。冷たいものが一滴、また一滴、僕の頬に落ちてきた。

【傍線部】に「たとえ」はありませんね。「たとえ」という言葉の入っている選択肢があれば、それを消してしまいます。

「対照的」が不正解になる理由

【傍線部】を「対照的」というのも誤りです。したがって、次の選択肢は不正解ですよ。

悲しみに暮れて涙を流す「僕」の姿と、雨を降らせている黒雲の存在とを描き分け、対照的に表現している。

「対照的」とは、2つの違いをはっきりさせることです。

一方、【傍線部】は、悲しみに暮れて涙を流す「僕」の姿と、雨を降らせている黒雲の存在とを重ね合わせています。「僕」と雨雲の違いがはっきりするどころか、両者はイコールの関係にあるんですね。

【傍線部】の例からも分かる通り、小説における情景描写の多くは登場人物の気持ちとイコールの関係です。これは、都立高校一般入試国語で出題される小説でも例外ではありません。

したがって、「対照的」と書いてある選択肢は不正解である場合がほとんどです。

ただし、令和6年度は、「対照的」と書いてある選択肢が正解でした。この選択肢では「夜空」と「凛久の声」が対照的で、情景描写と気持ちが対照的ではありません。こういう場合は正解になることもあるので要注意です。

「説明的」が不正解になる理由

表現技法問題では、次の語句が入っている選択肢も基本的に不正解です。

「説明的」「時間の経過とともに」「順序立てて」

これらの語句が不正解になるのは何故でしょうか?

理由は簡単です。「説明的」は、つまらない小説の条件だからです。

先ほどの【傍線部】を「説明的」にしてみますね。

【傍線部(説明的バージョン)】

僕は悲しくて涙を流した。いつまでも泣いていられないので、涙を何度も何度も手の甲で拭った。気を紛らわせるために空を見上げた。黒い雨雲が空を覆いつくしていた。雨が数滴、僕の頬に落ちてきた。

読んでいてうっとうしいですよね?「説明的な小説はつまらない」といわれる所以です。

「写実的」が不正解になる理由

「写実的」「細部までありのままに」

これらの語句が入っている選択肢も基本的に不正解です。

「写実的」とは、見たままを描くことです。「写実」の「写」から、「写真」を連想してくださいね。

先述の通り、登場人物の気持ちと情景描写はリンクします。そのため、小説の情景描写は、カメラで撮ったありのままの風景ではなく、登場人物の状況に合わせて加工された風景となります。

もし小説で写実的な描写をしたら、くどくど説明する文章になって、読者が登場人物に感情移入しにくくなります。つまり、「写実的」も、つまらない小説の条件なのです。

「印象的」「躍動的」などは保留

「印象的」「躍動的」「効果的」「感覚的」「生き生きとした」

これらは曖昧な語句です。「印象的」や「躍動的」などのイメージは人によって判断が分かれます。先ほどの【傍線部】で考えてみましょう。

  • 「僕」の悲しみを印象的に表している。
  • 黒雲の描写を効果的に用いて……
  • 「僕」の頬に当たる雨粒が感覚的に描かれ……

どれだって解釈としては正解です。したがって、「印象的」「躍動的」などの語句がある選択肢は判断を保留してください。

3. 傍線部以外の事実関係を確認する

2までの作業で選択肢のほとんどは消えます。ただ、複数の選択肢が残った場合は、本文の傍線部以外も検討します。傍線部以外に描かれている事実関係と選択肢を照合しながら、最終的に正解を絞り込みます。

事実関係については、次の点に注意しながらチェックするといいですよ。

  • 出来事の順序
  • 行為の主体
  • 登場人物の心情
  • 言い換え表現の正誤

表現技法問題に正解の法則!?

解法の説明は以上です。

ところで、冒頭一覧表を見ると、都立高校一般入試国語の表現技法問題には正解の法則があるように思われます。表現技法問題の正解の選択肢のほとんどに「印象的」という言葉が入っているのです。

「本当か?」と思う慎重な受験生は、都立高校入試の過去問が10年分収録されている「高校入試 虎の巻」で真偽を確認してみてください。

今後も「印象的=正解」が続くかどうかは分かりませんし、「裏ワザ」的なインチキ解法を受験生たちに勧めるつもりもありません。とはいえ、過去問分析から判明した事実については、頭の片隅に入れておくといいでしょう。

トップ画像=フリー写真素材ぱくたそ / モデル=河村友歌

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