家庭教師の依頼として多いのは学校や塾の復習や補習です。このような依頼を受けた家庭教師は、生徒が授業で既に習ったことについて、理解が不十分なところを解説したり、苦手なところを克服させたりします。
もちろん、学校や塾の復習や補習のために家庭教師を活用するのはよいことです。しかし、家庭教師の最も効果的な活用法は学校や塾の予習です。
僕の指導経験を振り返っても、「算数苦手!嫌い!」と言っていた小学生が、指導開始から数か月後には学校より2単元くらいを先取りしていました。彼らは「算数苦手!嫌い!」を克服し、算数検定や数学検定で1~2学年上の級に合格したほどです。
僕が彼らを無理やり追い立てるわけではありません。中学受験をしない小学生なら、週30分~2時間の指導時間だけで、小学校卒業時点で中学1~2年の数学まで先取りできます。
他にも、中学生や高校生、さらには中学受験生でも、予習の効果を実感できる例がたくさんありました。これらを紹介しながら、家庭教師と一緒に予習することのメリットをお伝えします。
小中学生が家庭教師と一緒に予習するメリット
予習中心の指導に対して、「小中学生に予習は必要ない!」という反対意見もあります。この意見はもっともで、小中学生の勉強で予習が必要なわけではありません。
しかし、予習中心の指導には、復習中心の指導にはないメリットがあります。そのメリットは次の通りです。
- 学校の授業を理解しやすくなる。
- 「自分はできる!」という自信につながる。
- 数学検定や英語検定の受検に余裕ができる。
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
1. 学校の授業を理解しやすくなる。
予習している生徒は、学校で同じ内容を教わる際に「知ってる!」となります。そうすると、先生の話もスムーズに頭に入ってきます。こうして、学校の授業が復習になります。さらに、宿題やテスト勉強などで復習すれば、同じ内容を3回勉強するので、学習効果がとても高いといえるでしょう。
学校や塾の先生の中には、「予習をすると、授業で新しいことをワクワクしながら学ぶことができない」と言う先生がいます。
しかし、そもそもの話として、家庭教師が必要な生徒は授業で新しいことをワクワクしながら学べません。ワクワクどころか、授業内容をさっぱり理解できなくてイライラしていることすらあります。
生徒にとって、理解できない授業に参加するのは時間の無駄です。しかも、その授業内容を後でもう一度勉強し直さなければなりないので、どんどん時間が失われていきます。復習中心の勉強が時間のロスにつながります。
また、「授業の前に変な教え方をされると、生徒が混乱する」という意見もあります。これには僕も同意します。
しかし、僕が指導する限り、生徒が混乱することはありません。僕は、小学校から高校までで学ぶ内容を意識し、その上で、受験に必要な知識や技術が確実に身に付くように教えるからです。大学生講師や保護者が教えるのとは別格です。
むしろ、学校や塾で変な教え方をされ、他の生徒たちが混乱している中、僕の生徒だけが問題を解けて褒められたことが何度かあります。
2. 「自分はできる!」という自信につながる。
同じことを2回、3回……と繰り返すと学習内容は定着します。繰り返しの回数が多ければ多いほど、テストの点数がよくなって順位もアップします。その結果、生徒の中に、「自分はできる!」という自信が生まれます。
ある小学生は算数が苦手で僕の指導を受け始めました。彼は算数のテストで100点を取れるようになって、「算数が得意!」と豪語するまでに成長しました。同時に、他の科目の点数も大幅にアップしました。
ちなみに、彼は小学5年で英語をスタートしました。しかし、 ”This is a pen.” をずっと「わからない」と言い続けて、さっぱり先に進みませんでした。それがあるとき「やる」と言って ”This is a pen.” を丸暗記したことから「わからない」が「わかる」に変わり、英語ができるようになりました。英語をスタートしてから1年半後のことでした。
彼は中学でもずっと英語が得意科目のまま、中学3年で英検準2級も取りました。もちろん、他の科目もそこそこ成績が良かったので、第一志望の都立高校に推薦入試で合格しました。
もし彼が中学生になってから英語を始めていたら、”This is a pen.” でつまずいたまま中学の授業だけは先に進んでいき、良い成績を取るどころではなかったでしょう。彼の英語のように、つまずいたところにじっくり時間をかけられるのも予習のメリットです。
そんな彼があるとき友人に「おまえはやらないからできないんだよ」と言っていました。これは、小学時代の彼が僕に散々言われたことです(笑)
この生徒のように、1科目だけでも得意になれば、「勉強すればできる」という手応えを得ます。結果に裏打ちされた「自分はできる!」は、生徒の学習意欲を高めると同時に、全科目の成績を引き上げます。
3. 数学検定や英語検定の受検に余裕ができる。
中学生の多くは数学検定(数検)や英語検定(英検)を受験します。これらの検定の3級以上を持っていると、受験で有利になることがあるからです。
しかし、数検や英検の受験日が定期試験の日と近いため、検定試験の勉強に時間をかけられない場合が多々あります。それでも大丈夫なように、早め早めに検定試験の出題範囲を先取りし、定期試験前に検定対策を終わらせておくと有利です。
また、検定の3級以上を中学3年で受検すると、不合格になったときに2度目を受けられないこともあり得ます。中学3年の中盤くらいまでに検定試験に合格しないと、その結果を内申書に記載できないからです。
こうしたリスクを減らすためにも、検定の3級以上を2~3回受検できるように、中学3年の学習内容を中2で終わらせておくのが理想です。
義務教育の学習内容に長時間指導は必要ない
義務教育の学習内容程度なら、長時間指導はそもそも必要ありません。体系的に、効率的に、そしてわかりやすく指導しさえすれば、短時間指導であっても、生徒たちはきちんと結果を出してくれます。
僕の指導では、機械的に教科書内容を先に進めていくだけの予習は行いません。生徒の理解度に合わせて、立ち止まって思考を促したり、他科目の内容に触れたり、前の単元に戻って復習させたりします。柔軟に指導内容を変えているからこそ、学校や塾の授業よりも結果に結びつきやすいのです。
大手塾に通って教わっていたにもかかわらず、分数計算すらできなかった小学6年生が、僕の指導を何回か受けて分数計算がスラスラできるようになった例があります。
学校で怒られてばかりいた小学5年生が、僕の指導を受けているうちに担任から褒められることが増え、中学生になっても勉強や部活などで活躍し続けた例もあります。
最初から僕の指導を受け続けていた生徒たちの多くは、週1回1~2時間の指導だけで、好成績を維持していました。一方、彼らの友人たちは、塾の長時間拘束や大量の宿題に疲弊しながらも、成績がさっぱり上がらないどころか、むしろ下がっていきました。僕の生徒たちの中には、「おまえは俺より勉強していないのに、どうして俺より成績が良いんだ?」と聞かれた生徒もいました。
予習で先取りすることで受験対策にもなる
学校で学ぶ内容を予習することは、そのまま高校受験や大学受験の対策にもなります。どんなに遅くても、受験学年の夏休みが終わるまでには、受験で使う科目の全範囲を終わらせ、その後はひたすら受験勉強に打ち込めるようにすることが大切だからです。高校受験では、僕が最初から最後まで教えていた生徒たちは全員、第一志望に合格しました。
一方、中学受験の勉強は小学校で学ぶ内容から逸脱していて、塾に通って勉強するのが一般的です。しかし、生徒が塾に通っている場合でも、特に算数は予習をおすすめしています(強制はしません)。
もっとも、算数の予習といっても、学校で学ぶ内容の先取りとは異なります。僕が中学受験生に算数を教える場合、知識や解き方のつながりを意識した上で、基礎を徹底的に身に付けさせ、それを応用できるように誘導していきます。
たとえば、「1gあたり50円」「1枚あたり3分」のように、「1」に対応する数は「単位量あたりの大きさ」と呼ばれます。僕は、単位量当たりの大きさを「5個で1セット」などの身近な例からスタートし、これと速さや割合、濃度などが同じであることを教えます。そして、もとにする量を1ではなく他の数字にして、「比」という考え方に話をつなげます。
このように、中学受験生には、同じような問題は同じように考えて解くことを意識させ、たくさんの解法やパターンを丸暗記しなければならないわけではないことを理解させます。塾のスパイラル学習のカリキュラムには拘らず、「この問題が解けるなら、こっちのページの問題も解けるよね?」と言って、ある問題を解説した後、全く別の単元に配置されている問題を解かせることもよくあります。
こういう予習を続けていた中学受験生は、Y偏差値60半ばの中学に合格しました。月1回1時間程度の指導でも、このくらいの成果は出ることがあります(もちろん、生徒の素質にもよるのは確かです)。
ただ、中学受験生を指導する場合、塾の復習やフォローを依頼されることが多く、なかなか予習のメリットを享受させられないので、個人的にとても残念に思っています。
小中学生に予習させたければ、まずは家庭教師に相談する
小中学生が自学自習で予習を進めると、わからないところでつまずいたり、やたらと時間がかかったりして、デメリットばかりが目立ちます。そうなると、「予習よりも復習の方が効果的だ」という結論になります。
小中学生が予習で成果を出すには、彼らを適切にリードする指導者が必要です。そういう役割を期待して家庭教師に相談してみるのもよいでしょう。
トップ画像=写真AC
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