「国語が苦手」は危険信号!国語ができないから他の科目もできない?

みみずく先生のプロ家庭教師&ライター奮闘記 教育論

教育関係者の間では、「国語ができないから他の科目もできない」としばしば言われます。しかし、何でもかんでも国語のせいにする前に、もう少し広い視点で「何ができないのか?」を考える必要があります。

国語力が他の科目にも影響を及ぼす

たとえば、日本語の語彙力が貧弱だと、教科書を読んだり先生の話を理解したりするのに苦労します。また、読解力が壊滅的だと、長めの問題文を読み取る場面で撃沈します。

語彙力や読解力を含む国語力が、日本語を使って勉強する他の科目にも影響を及ぼすのは確かです。

しかし、「国語が苦手」と悩む生徒たちが他の科目もできないのは国語力の問題だけではないと考えられます。というのも、彼らのほとんどは、国語力がどうこう以前に、勉強全般で問題を抱えているからです。

「国語が苦手」と悩む生徒たちの特徴3選

「国語が苦手」と悩む生徒たちの特徴を詳しく紹介します。

【その1】曖昧な記憶に頼る

まずは、数学を例に考えましょう。

数学ができる生徒は、習いたての単元の問題を解く場合、最初のうちは教科書やノートを確認しながら解きます。

一方、数学ができない生徒は、習いたての単元の問題を解く場合でも、曖昧な記憶に頼って解こうとします。彼らは教科書やノートを開くことなく、間違った考え方で最後まで問題を解き続け、挙句「わかんねぇ~」と混乱するんですね。

分からないことを教科書やノートで見直しながら、正しい考え方に基づいて問題を解くことは勉強の基本です。これができるかどうかが、数学の出来不出来に影響します。

同様のことが国語にもいえます。国語の読解問題では、問題を解く際、必ず本文に戻って解答根拠を確認する必要があります。国語ができる生徒は本文を何度も見直しますが、国語ができない生徒は一読後の曖昧な記憶をもとに考えます。

「数学ができる・できない」と「国語ができる・できない」は共通しています。

【その2】細かいことを気にしない

次に、英語を例に考えましょう。

たとえば、”He read this book yesterday.”を訳す場合、英語ができない生徒は「彼は昨日、本を読みました。」と訳します。この訳ではthisを訳出できていません。「thisの訳がないよ」と指摘されると、彼は「彼は昨日、その本を読みました。」と訳します。彼はthisとtheが区別できていないんですね。

このタイプの生徒は、次の点でつまずいています。

  • 細かい部分を見落としてしまう。
  • 同じもの同士や違うもの同士を把握できない。

これらの問題を抱える生徒たちは、thisなどの形容詞や副詞を見落としたり、時制を適切に訳せなかったりします。thisとthatとtheなど、形の似ている単語を区別できないという問題にもつながります。いずれも細かいことを気にしない雑な性格に由来します。

雑な性格は、都立高校入試や大学入学共通テストなど、記号選択がメインの国語の読解問題にとっても天敵です。記号選択問題では、本文中に解答根拠を求めることに加えて、選択肢の丁寧な分析が大切だからです。選択肢の分析を行う際、たった一語を見落としたり、言い換え表現を把握できなかったりすれば、正解を選べません。

「英語ができる・できない」と「国語ができる・できない」も共通しています。

【その3】検索スピードが遅い

理科や社会などの暗記科目では、分からない語句を教科書などで調べる必要があります。この作業に手こずる生徒たちがいます。彼らは、索引や目次を使っているにもかかわらず、調べたい語句をなかなか見つけられません。とにかく検索スピードが遅いんですね。

  • そもそも調べたい語句を索引で見つけられない。
  • 調べたい語句の載っているページにたどり着いても、その語句をページの中から見つけられない。

こうした問題を抱える生徒たちは、集団授業についていけません。「■ページの▲行目の●●を丸で囲って」という先生の指示があっても、いつまでも●●を見つけられないからです。

もっとも、彼らは、授業中であれば、先生の目が気になって●●を見つけようと頑張ります。しかし、自習のときは頑張れません。分からない語句があっても、ちょっと調べてその語句を見つけられなければ、「書いてないから分からなくても仕方ない」と諦めます。彼らは、教科書を調べれば分かることについても「分かりません」を貫き、結果として学力が伸びません。

検索スピードの遅さは、国語の読解問題では致命的です。問題を解くのに必要な語句を、長い本文から探し出せないからです。

「理科や社会ができる・できない」と「国語ができる・できない」にも共通点がありましたね。

勉強全般に問題があるから国語もできない

僕は、「国語ができないから他の科目もできない」ではなく、「勉強全般に問題があるから国語もできない」と考えます。

確かに、他の科目はできるのに国語だけできない生徒もいます。しかし、「国語が苦手」という生徒のほとんどは、全科目の勉強法がダメダメです。

そもそも、高校までの主要5教科(国語・数学・英語・社会・理科)に文系も理系もありません。科目ごとに暗記量の多寡は違いますが、求められるスキルは同じです。いずれの科目も理系的思考で勉強するのに適しています。中でも国語(現代文)は理系要素が強く、数学と同じ論理的思考力を試されます。

それにも拘らず、巷の国語指導では、「背景知識をたくさん覚えよう」とか「近現代を理解することが国語の勉強だ」とか、怪しげな言説がまかり通っています。こういう言説を鵜呑みにした生徒たちは、「国語は他の科目と違うのかな?」と誤解してしまいます。

【背景知識と現代文読解】国語の勉強で芸術論や文化論を重視すべき?
「現代文の読解では背景知識が必要だ」といわれます。それは本当でしょうか?背景知識とそれに基づく内容理解に偏った国語指導に疑問を投げかけます。

しかし、くり返しになりますが、国語の勉強で大切なことは、他の科目の勉強で大切なことと共通です。したがって、他の科目の勉強法を見直せば、「国語が苦手」が自然と解消される場合も多いんですね。具体的には次のことに注意しながら勉強するといいでしょう。

  • 曖昧な記憶に頼らない。
  • 細かいことを気にする。
  • 検索スピードを速くする。

これらがきちんとできるようになれば、わざわざ国語だけを一生懸命勉強する必要はありません(ただし、漢字や語句を暗記する勉強は必要です)。

実際、数学や英語で僕の指導を受けている生徒たちのうち、僕が求める水準を満たした生徒は、国語の指導を数回受けただけで国語も得点源になりました。僕の指導では、他の科目の指導がそのまま国語の指導にもなります。

「国語が苦手」と悩む生徒たちは、国語しか教えられない指導者の変てこな方法論に飛びつくよりも、まずは他の科目の勉強法を見直してみましょう。

トップ画像=フリー写真素材ぱくたそ / モデル=河村友歌

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