暗科科目と考えられがちな理科は、本番直前に追い込みが効きやすいといわれます。しかし、都立高校一般入試の理科は、単なる暗記よりも、実験や現象の理解を求められます。やみくもに重要語句を暗記しても、がんばった割に結果が出ないかもしれません。
都立高校入試直前は、必要な知識を総整理するとともに、理科的な思考方法を見直しましょう。
図を自分で正確に描けるようにする
過去問集などで理科の解説を見ると、文字がずらずら書かれています。しかし、これを読むだけでは、理科の直前対策としては不十分です。
都立高校一般入試の理科では、図をもとに考えたり、図を選択したりする問題が頻出です。そうした傾向を踏まえて、図を自分で正確に描けるようにしましょう。
では、どのような図を描ければいいのでしょうか?
平成27年度の過去問で、問題を解くのに役立った図は次の通りです。
第1分野
- イオン
- 回路
- 滑車・力の図示
第2分野
- 軟体動物(アサリ)の体の仕組み
- 動物の神経
- 地層・ボーリング調査
- 天気図
- 金星の観測
教科書や資料集、問題集などに載っている図を、自分の手でノートに書き写し、自分で理解できる説明を書き加えましょう。理解できない図は学校や塾の先生に質問してください。
理科的な頭の使い方に慣れる
都立高校入試理科の過去問を何年分も眺めると、同じようなことが毎年問われていると気づくはずです。
たとえば、回路とイオンは、25年度から27年度まで3年連続で出題されています。
10年分くらい過去問を確認すれば、数年おきに大問となっている実験や観察もはっきりしてきます。化学・物理・生物・地学の4分野、しかも中学理科の範囲内からそれぞれ大問が作られるので、出題される分野もある程度は予想できます。
以下では、問題の設定が変わっても必要となる考え方を説明します。
比例を利用した計算
物質の燃焼実験や酸とアルカリの中和実験など、ある物質が減少したり増加したりする現象は、比例を利用した計算を用いて考えます。
平成27年度の大問5[問1]を考えてみましょう。マグネシウムの加熱実験がテーマの問題です。与えられた<結果1>では、「加熱前の全体の質量」と「質量が変化しなくなるまで加熱した後の全体の質量」が与えられています。
物質の増加量を考える
大問5[問1]でポイントとなるのは、物質の増加量だけを考えることです。また、「全体の質量」が与えられていても、計算の際には特定の物質の質量だけを考えます。したがって、<結果1>の表を書き直すところから始めましょう。
マグネシウムの質量に関しては、文章の中に「マグネシウムの粉末の質量を、0.6g, 0.9g, 1.2g, 1.5g, 1.8gに変え」とあり、表にも数値が書き込まれています。
一方、物質の増加量(本問では、反応した酸素の質量)は算出する必要があります。「増加量=変化後の全体の質量-変化前の全体の質量」です。この関係を知らない場合は覚えましょう。
表を書き直す
<結果1>の表を次のように書き直しました。
この表から分かる通り、マグネシウムの粉末の質量が2倍、3倍、4倍……となると、反応した酸素の質量も2倍、3倍、4倍……となります。このような関係を比例といいます。比例のグラフは原点(0, 0)を通る直線です。したがって、大問5[問1]の正解はアです。
規則的に量が増減しない場合は?
比例関係では、規則的に物質の量が増減します。たとえば、大問5[問1]と同じ条件下でマグネシウムの粉末2.7gを加熱するとします。この2.7gは0.3gの9倍です。ということは、反応した酸素の質量も0.2g×9倍=1.8gとなるはずです。
しかし、酸素の質量が1.8gより少なくなる場合があります。ここでは、何が原因で比例関係が成り立たなくなったのか、を考えなければなりません。このような考察を求められているのが、大問5[問2]でした。(問題となっている実験は、〔問1〕で扱った実験とは別です)
理科の計算問題では、比例がとても大切です。
対照実験の考察
生物分野では、対照実験が特に大切です。
対照実験とは、ある特定の条件以外の条件を全て同一にして行う実験です。たとえば、唾液を入れたデンプン溶液と唾液を入れないデンプン溶液を用意することで、唾液がデンプンにどう作用するかを調べられます。この実験では、唾液の有無以外を全て同一条件にします。デンプン溶液の温度などを変えてはいけません。
このような問題の対策としては、以下の記事を参照してください。
重要語句を漢字で覚える
比例計算や対照実験のような頭を使う問題は「慣れ」が必要です。一方、入試本番直前に効率よく復習できるジャンルもあります。第2分野を中心とした知識問題です。
27年度の知識問題で出題された重要語句は次の通りです。
- 外骨格と外とう膜
- ガス調節ねじと空気調節ねじ
- 胞子と種子
- 感覚神経と運動神経
- 示相化石と示準化石
- 中生代と新生代
- 光合成と呼吸
似たような語句の違いが問われていることがわかります。
たとえば、「外骨格」は骨の一種で、「外とう膜」は膜の一種です。「アサリに骨があるわけないじゃん!」と考えて外とう膜を選び、同じ「骨のない生き物」としてイカを選べれば、大問1の[問1]は正解のエをすぐに選べるはずです。
「シソウカセキ」「シジュンカセキ」などと音だけで重要語句を覚えるのはやめましょう。重要語を漢字で書けるようにして漢字の意味と一緒に理解することが知識問題攻略のカギです。
都立高校入試直前期にできることは?
都立高校入試の理科は、自校作成校の受験生と共通の問題であるため、高度な理科的思考力を問う独特な出題が目立ちます。とはいえ、他県の入試問題と同じような知識問題も出題されます。
どのような問題がよく出るのかは、過去10年の都立高校入試問題を徹底分析して分野別にまとめた問題集「高校入試 虎の巻」で確認することが大切です。
理科が苦手な受験生は、「捨て問」を作っても構わないので、解けそうな問題を確実に解けるようにする必要があります。第2分野を中心に重要語句の暗記を頑張ってください。
一方、理科が得意な受験生は、複雑な思考や計算を求められる問題にも対応するため、やや難レベルの応用問題をたくさん解きましょう。
トップ画像=イラストAC
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