都立高校入試社会の大問2は世界地理です。中でも、[問2][問3]は、産業を中心とする各国の特色に関する問題です。
本記事では、平成27年度の大問2[問2][問3]の解説を通して、世界地理分野の傾向と対策を考えます。
表から国を特定する
平成27年度の大問2[問2]は、次の問題でした。
下の表のア~エは、2012年における日本の鉄鋼輸出額の上位4か国である大韓民国、中華人民共和国、タイ、アメリカ合衆国のいずれかの国の、1985年と2010年における化学繊維生産量、自動車生産台数、鉄鋼生産量、日本の輸入額の上位3位の品目を示したものである。大韓民国に当てはまるのは、下の表のア~エのうちのどれか。
2010年における日本の輸入額の上位3位の品目からそれぞれの国を判断していきます。
まずは、「天然ゴム」といえば東南アジアです。特定の農産物の輸出に頼るモノカルチャー経済に支えられている東南アジアの国々には、天然ゴムやコーヒー、油やし、バナナなどの大規模な農園(プランテーション)が見られます。したがって、ウはタイです。
次に、「とうもろこし」といえばアメリカ合衆国です。アメリカ人はポップコーンをムシャムシャ食べているイメージがありませんか?そのポップコーンの原料がとうもろこしです(もっとも、収穫されたとうもろこしの多くが家畜の飼料になっています)。したがって、イはアメリカ合衆国です。
最後に、2010年も日本に衣類を大量に輸出し続けている国は中国です。安い衣類のタグを見ると「MADE IN CHINA」が多いですよね?したがって、エが中華人民共和国です。
消去法でアが大韓民国です。
略地図と説明文から国を特定する
続いて、平成27年度の大問2[問3]です。
次のⅠの略地図は、主なEU加盟国15か国の2001年と2012年を比較した日本からの輸出額の変化を示したものである。Ⅱの略地図は、主なEU加盟国15か国の2001年と2012年を比較した日系現地法人数の変化を示したものである。Ⅲの文章で述べている国に当てはまるのは、下のア~エのうちのどれか。
Ⅲ この国は、ヨーロッパ最大の工業国であり、EUの経済、通貨、政治的統合を推進する中心的存在となっている。古くからの加工貿易国として一般機械、自動車を主に輸出しており、医薬品の輸出でも有名である。2001年と2012年を比べると、日本からヨーロッパ各国への輸出額が全体的に減少傾向の中、日本からこの国への輸出額は30%未満の減少にとどまるとともに、この国での日系現地法人数の増加は40社以上であり、日本との結び付きは依然として強い。
ア フランス イ ドイツ ウ イタリア エ イギリス
まずは、選択肢の4か国がどこなのかを地図中で特定します。
次に、Ⅲの文章の2段落目に書かれている数値から、国を絞り込みます。「日本からこの国への輸出額は30%未満の減少にとどまる」とあるので、Ⅰの略地図から、ウのイタリアを除きます。また、「この国での日系現地法人数の増加は40社以上であり」とあるので、Ⅱの略地図から、エのイギリスを除きます。
最後に、Ⅲの文章の1段落目に「ヨーロッパ最大の工業国」「自動車を主に輸出」とあるので、正解はイのドイツであると分かります。ドイツといえば、「ベンツ」や「ポルシェ」といった高級車のイメージがありますよね?そのイメージ通り、ドイツは、自動車産業を中心とした工業が盛んです。教科書でも「工業(先進)国」として紹介されているはずです。
ちなみに、フランスは、パリのお上品なイメージがあるかもしれませんが、産業の中心は農業です。教科書によると、フランスは「ヨーロッパを代表する農業国」であり「EUの穀倉」と呼ばれているそうです。
この問題のように、国名や国の位置が分からないと解けない問題もしばしば出題されます。したがって、世界の有名な国については、国名と位置を暗記しておく必要があります。そうしないと、入試問題が、「どれにしようかな?」で選ぶ運試しになりますよ(笑)
各国の特徴を白地図にまとめる
大問2[問2][問3]対策として、一問一答形式で知識を丸暗記しても非効率的です。有効なのは、産業を中心に、各国(各地域)の特徴を白地図にまとめる勉強法です。
たとえば、東南アジアのところに「天然ゴム」「プランテーション」などを、アメリカ合衆国のところに「小麦」「とうもろこし」「先端技術」などを書きます。同様にして、都立高校入試の過去問が10年分収録されている「高校入試 虎の巻」で傾向を確認しながら、白地図を充実させていきます。
また、平成29年度の大問2[問2]では、社会体制や宗教の記述も見られました。社会主義国やイスラム教国・仏教国などは、ある程度把握しておくと有利です。
白地図にまとめる際は、有名な国の国名と位置もしっかり覚えてくださいね。「インドって、アフリカにあるんじゃないんですか?」と言っていてはいけません!(笑)
トップ画像=Pixabay
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