都立高校入試共通問題平成30年度の大問5を解説します。この問題は、例年難しい空間図形問題に比べて、とても簡単な問題でした。
図形が正三角形だと気づければ瞬殺できる問題
[問1]は、例年、図形の性質に気づけば簡単に解ける問題になっています。平成30年度は、その中でも一二を争うくらいの簡単さでした。
PがCに一致しているので、∠BPDは下図の左のようになります。ついでにBとDも結んで△BPDを作ります。△BPDが正三角形になることに気づけるかどうかがポイントです(下図の右)。
見取り図だと分かりづらいですが、立体ABC-DEFの面ABEDと面ACFDは、一辺が9cmの正方形です。その対角線なのでBD=CDです。
また、△ABCも、一辺が9cmの正方形を対角線BCに沿って二等分した直角二等辺三角形です。
したがって、BD=CD=BCなので、△BPDが正三角形だと分かります。このことに気づけば、一切計算することなく、∠BPD=60°を求められます。
立体を平面図形に置きかえれば簡単に解ける問題
[問2]も、難しい発想は特に必要なく、ちょっとしたことに気づけば簡単です。
立体P-ABDの体積は、素直に△ABDを底面として考えます。高さは、Pから面ABEDに下した垂線PHです。Hの位置は下図のようになります。
補助線PHを引いたところで、まずは底面を抜き出してみましょう。
△ABDは、底辺9cm、高さ9cmの直角二等辺三角形なので、面積は9×9÷2=\(\frac{81}{2}\)(cm2)です。
次に、PH⊥面ABED、∠BAC=90°から、PHとACが平行であることに気づけるでしょうか?
PHとACが平行だと分かれば、立体を立体のまま考える必要はなくなります。立体ABC-DEFを上から眺めて、下図のように、△ABC上にM、P、Hを全て書き込んでしまいます。
EFとBCは平行で長さが等しいので、Mを真上にあるBCの中点に移動してしまいます。
Pは、CMをCP:PM=2:1に分けます。このPも真上に移動すると、CP:PM=2:1となる点と重なります。
BC上の比を考えると、BM=CM=CP+PMなので、BM:MP:PC=3:1:2です。これより、BC:BP=6:4=3:2となります。平行線と比の関係から、BA:BH=BC:BC=3:2です。
また、平行線の同位角が等しいので∠BAC=∠BHP、∠BCA=∠BPHとなり、2組の角がそれぞれ等しいことから、△BAC∽△BHPです。したがって、AC:HC=BA:BH=3:2なので、BH=AC×\(\frac{2}{3}\)=9×\(\frac{2}{3}\)=6(cm)です。
立体P-ABDの底面積と高さが分かったので、錐体の体積公式(底面積×高さ÷3)に当てはめて、立体P-ABDの体積は\(\frac{81}{2}\)×6÷3=81(cm3)です。
前年の大問5の難易度を事前に調べておく
[問2]を言葉で説明すると長くなりますが、発想自体はとても単純で、難しい要素が何もない問題でした。どうしてこんなに簡単な問題になったのでしょうか?
平成29年度の大問5[問2]の正答率があまりにも低かったため、易化の方向に調整したのでしょう。(平成29年度の大問5[問2]の問題と正答率は以下の記事を参照してください)
易化の結果、平成30年度の大問5[問2]の正答率は14.6%に急上昇しました。こうした変化が起こると、次の年は難化に調整されがちです。
大問5[問2]は、年によって難易度の差が激しいという特徴があります。前年が簡単だったか難しかったかについて、過去10年の都立高校入試問題を徹底分析して分野別にまとめた問題集「高校入試 虎の巻」で事前に調べておき、捨て問にするか頑張って解くかを考えておくとよいでしょう。
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