都立高校入試(共通問題)国語では、大問4の[問4]で二百字以内の作文が出題されます。たとえば、平成31年度の問題は次の通りです。
国語の授業でこの文章を読んだ後、「新しい『何か』に出会うこと」というテーマで自分の意見を発表することになった。このときにあなたが話す言葉を具体的な体験や見聞も含めて二百字以内で書け。
多くの高校受験生がこのような作文を苦手とします。しかし、都立高校入試国語の作文は、実はとても簡単に対策できて、得点源にすることすら可能です。
今回は、入試本番直前でも間に合う作文対策を紹介します。
作文対策は「採点のポイント」の分析から始めよう
都立高校入試国語の作文については、東京都教育員会の「都立高等学校入学者選抜 学力検査問題及び正答表等」のページに「(参考)採点のポイント」が掲載されています。この「採点のポイント」に書かれている正答例と採点のポイントを分析すれば、どのような作文を書けばよいかが明らかとなります。
この「採点のポイント」に沿って、作文の書き方を具体的に考えてみましょう。問題や正答例は、都立高校入試の過去問が10年分収録されている「高校入試 虎の巻」で確認してください。
作文に書くべき“3つのこと”を把握しよう
「採点のポイント」に書かれている採点のポイントは次の3点です。
○テーマ「新しい『何か』に出会うこと」に即した自分の意見、主張が適切に書かれている。
○本文中の筆者の意見を的確に捉え、その主張を踏まえて、文章が適切に書かれている。
○自分の意見、主張の根拠となる具体的な体験や見聞について、適切に書かれている。
簡単にまとめると、「自分の意見、主張」「筆者の意見」「具体的な体験や見聞」の3つを作文に盛り込めばよいというわけです。
次に、正答例を分析しながら、これら3つがどのように書かれているかをチェックしていきます。
正答例を分析して作文の書き方を理解しよう
正答例を「自分の意見、主張」「筆者の意見」「具体的な体験や見聞」の3つにわけてみましょう。
正答例は2段落構成です。1段落が「具体的な体験や見聞」、2段落1文目が「筆者の意見」、2段落2~3文目が「自分の意見、主張」になっています。
これらをさらに分析していきます。
「具体的な体験や見聞」の書き方
平成31年度の正答例は、1段落が3文で構成されています。これら3文の内容は次の通りです。
- 1文目…出来事の簡単な紹介
- 2文目…自分の感情・感想
- 3文目…感情の原因となった印象的なこと
この型は毎年同じわけではありません。たとえば、平成29年度は2文で構成されていて、これらの内容は次の通りです。
- 1文目…出来事の簡単な紹介
- 2文目「その時~聞き、」…印象的だったこと
- 2文目「料理の~もちました。」…自分の感情・感想
もっとも、どの年度を見てもわかるのは、1段落に書くべき内容は原則としてほぼ同じだということです。具体的には、「出来事の簡単な紹介」「印象的なこと」「自分の感情・感想」の3つを書きます。年度によって、「印象的なこと」と「自分の感情・感想」のどちらを先に書くかが違っているだけです。
ちなみに、実際に書くべき具体的な体験や見聞は創作でも構いません。ただ、創作すら思い浮かばない場合は、本文中の例をパクるのが手っ取り早いです。たとえば、平成28年度は「書」がテーマの本文ですが、作文の正答例でも体験談が「書ぞめ」になっています。このように、本文の例を自分が体験したかのように書くと楽です。
「筆者の意見」の書き方
平成31年度の正答例では、2段落1文目に「筆者は、~と述べています。」とあります。これは、筆者の意見に賛成していると考えられます。平成29年度もほぼ同じ書き方です。
次に、筆者の意見をどこから抜き出したのかをチェックします。平成31年度は第3段の1文目を、平成29年度は第18段の最終文をそれぞれ使っています。本文のどこに書かれている意見を使っても問題なさそうです。
「筆者の意見を探そう」と言われても戸惑う受験生は、傍線部の1つを抜き出すか、傍線部のある段落から筆者の意見になりそうな部分を抜き出すようにしましょう。
「自分の意見、主張」の書き方
平成31年度の正答例では、2段落2文目に「私は~気づかされました。」とクッションを挟んだ後、3文目で「見慣れた~していきたいと思います。」と当たり障りのない意見を述べています。平成29年度の正答例でも、2段落2文目が同様に「~になりたいと思います。」となっています。
「自分の意見」と言われても困る場合は、筆者の意見を少し書きかえて「~たいと思います。」にしましょう。たとえば、筆者の意見が「環境を守ることが大切だ。」ならば、自分の意見は「私も環境に配慮した生活をしていきたいと思います。」とします。筆者の意見が「古典には学ぶべきことが多い。」ならば、自分の意見は「私は高校進学後に古典を深く学んでいきたいと思います。」とします。それっぽいことを書いておけば十分なので、難しく考える必要はありません。
都立高校入試国語の作文は“型”に当てはめて書こう
最後に、作文が苦手な都立高校受験生は、次の“型”に当てはめて作文を書くとよいでしょう。
(出来事の簡単な紹介)がありました。このとき(印象的なこと)して、私は(感想)と感じました。
筆者は(筆者の意見)と述べています。私もこれから(自分の意見)したいと思います。
「作文が苦手」となる原因は、作文の“型”から考えてしまうことにあります。一方、“型”を決めておき、( )の部分だけを自分で考えて埋めていくようにすれば、二百字程度なら簡単に書けます。
都立高校入試国語の作文に高度な文章力は必要ありません。都立高校入試の過去問が10年分収録されている「高校入試 虎の巻」を使って“型”通りに書く練習を積み重ね、短期間で作文を得点源にしましょう。
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