生徒や保護者から「すぐに忘れてしまうのはどうしてですか?どうすれば忘れませんか?」とよく質問されます。彼らにとっては、せっかく勉強したことをすぐに忘れてしまい、復習に時間がかかったり、テストで点数を取れなかったりするのが、深刻な悩みになっています。
そんな悩みを解決するには、勉強法を工夫する必要があります。保護者が子供に教える場合、教え方に注意しなければなりません。
好きなことや興味のあることなら覚えられるけれど……
まずは、忘れてしまう理由よりも、忘れない理由を考えましょう。
読者の皆さんは、どのような知識ならしっかり覚えていられますか?
多くの人たちはおそらく、次の2つをしっかり覚えているでしょう。
- 好きなことや興味のあることに関する知識
- 頻繁に使う必要のある知識
1から考えてみましょう。
たとえば、電車好きの子供ならば、電車の形や色などを区別し、それを「E127系」「211系」などと判断できます。電車に興味のない人からすると、どの電車も色の違いくらいしか気づきませんし、ましてや「E127系」「211系」などの言葉も覚えられません。
好きかどうかでここまで記憶に差が付くわけです。だからこそ、保護者や指導者は「子供を勉強好きにしよう」「子供が勉強に興味を持つようにしよう」と考えるのでしょう。
しかし、子供を勉強好きにするのは難しいことです。子供が勉強好きになったとしても、特定の科目や分野が好きになっただけでは、受験勉強に太刀打ちできるとは限りません。「英語は好きだけれど、数学はからっきし」みたいになる可能性が高いでしょう。
僕は、1を目指す勉強法や教え方には否定的です。
新しい知識と一緒に、以前習った知識も思い出し、使うようにする
2も考えてみましょう。
たとえば、皆さんも学校や職場で毎日会う人の顔と名前は覚えているはずです。その人のことが好きかどうかと関係なく、一緒に何かをしたり、コミュニケーションを取ったりしなければならないから、嫌でも覚えてしまうのです。そのため、学校などから離れてしばらくすると、どうでもいい人たちに関する記憶はきれいさっぱり忘れてしまいます。
勉強に関連する知識も同じです。好きかどうかや、興味があるかどうかにかかわらず、頻繁に使う知識は覚えられますし、使っている限り忘れません。
「すぐに忘れてしまうのはどうしてですか?どうすれば忘れませんか?」に対する僕の回答は、「使わないから忘れるのです。いつも使っていれば忘れません」です。勉強や教え方でも2を目指していくのが現実的です。
もっとも、多くの保護者や指導者は、「忘れないように」と考えて子供に復習をさせます。確かに忘れないように復習するのは適切であるものの、忘れてはいけない知識が増えると復習量が増えていくのが難点です。結局、復習が追いつかなくなって、過去に勉強したことをごっそり忘れるのが、「忘れてしまう」の原因でしょう。
一方、僕の家庭教師指導では、新しい知識を教える際、以前習った知識と絡めることで、自然と復習にもなるようにしています。
たとえば、小学生に分数のかけ算を教える場合、「分数のかけ算では、分母同士、分子同士をかけてOKだけど、分数の足し算や引き算はどうやって計算したかな?」「約分するときは分子と分母を同じ数で割るけれど、この同じ数を何と言うの?」「公約数ってどんな数?」など、周辺知識も確認していきます。
また、食塩水の濃度計算を教える場合、「濃度を求めるときは天秤図を使おう」ではなく、「以前割合って習ったよね?割合はどういう考え方だった?」「濃度計算も割合だよ。食塩水の重さを100%としたとき、食塩の重さが何%になるかを求めるだけなんだ」などと、生徒が既に習っている割合と同じであることを強調します。
このように、新しい知識とともに、以前習った知識も思い出し、使わざるを得ない状況にすることで、頭の中に知識の網の目が張り巡らされていきます。そうすると、授業時間外にゴリゴリ復習しなくても、知識をいつまでも覚えていられます。
知識同士の関連を意識した勉強法や教え方で、知識を忘れない
受験生が自分で勉強する際は、一手間かけて、関連する知識を一緒に思い出すことを行うとよいでしょう。保護者が子供に教える際も、新しい知識をどんどん詰め込ませるのではなく、子供が既に持っている知識との関連を考え、それらと結び付けて教えると効果的です。
とはいえ、知識同士の関連を意識した勉強法や教え方は、普通の受験生や保護者には難しいと思います。小学校から高校までの勉強内容を把握していて、受験勉強にも通じているプロだからこそ、適切な指導ができるのも確かです。受験生や保護者は、自力でどうにもならないのなら、プロに依頼して各科目の勉強法を具体的に教えてもらうとよいでしょう。
トップ画像=写真AC
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