多くの小中学生たちが口語文法(現代文の文法)を苦手とします。特に品詞の識別問題が嫌われます。そんな嫌われ者の識別問題から、「ない」の識別を本記事では解説します。
理解不能な手抜き解説
都立新宿高校の2011年度の問題で「ない」の識別が出題されました。
本文「こうしたい、ああなりたいと思うのに、そうできない、……」の「ない」と同じ意味・用法のものは、次の下線を付けた語のうちではどれか。
ア.遊びに熱中している幼児の表情はあどけない。
イ.このテレビゲームはおもしろくない。
ウ.近所の公園にはゴミがない。
エ.荷物がなかなか届かない。
この問題の解説は、過去問集などに載っています。解説の内容は概ね次の通りです。
本文の「ない」は、打消の助動詞。
アの「ない」は、形容詞「あどけない」の一部。
イとウの「ない」は、形容詞「ない」。
エの「ない」は、打消の助動詞。
したがって、答はエ。
この解説を理解できますか?
理解できない人がほとんどでしょう。「形容詞の一部」「打消の助動詞」など、文法用語が分からないのなら知識不足です。が、そうした文法知識があっても、上記の解説を理解できないと思います。なぜなら、「どういう基準で『ない』を区別するのか?」という最も大切な視点が解説から抜け落ちているからです。まさに手抜き解説!!
「ない」の識別方法
過去問集などの解説に代わって、「ない」の識別方法を僕が分かりやすく説明しましょう。
知識を前提としない識別方法
「細かい文法知識を覚えていないと品詞の識別問題を解けない」と思い込んでいる生徒たちはとても多いですね。
確かに、口語文法をマスターするつもりならば、細かい文法知識が必要です。しかし、上記のタイプの問題を解くだけならば、知識は不要です。
品詞の識別問題は、次のことをすれば簡単に攻略できる問題がほとんどです。
- 傍線部の前後を注意深く観察する。
- 傍線部を他の語句に言い換えてみる。
1と2を踏まえて、新宿高校の入試問題にチャレンジしますよ!
観察と言い換えで攻める
アとイで1を使います。
アは、「あどけない」を「あどけ」と「ない」に分割できません。つまり、「あどけない」で一単語です。
イは、「ない」の前に「~く」という形がくっついています。このことから、「美しくない」や「珍しくない」の仲間だと考えられます。
この時点で、アとイは、本文中の「ない」の仲間でないと判断できます。
次に、ウとエで2を使います。
ウは、「ゴミがある」と言い換えられます。「ある」に言い換えられる「ない」です。
同様に、エは、「届かぬ」に言い換えられます。「ぬ」に言い換えられる「ない」です。
一方、本文中の「できない」は「できぬ」に言い換えられます。ということは、本文中の「ない」はエの仲間だと判断できます。
観察と言い換えで攻めれば、細かい文法知識なしでも「ない」を識別できます!!
「ない」の識別まとめ
知識なしでも識別できる「ない」ですが、最後に文法知識と一緒にまとめておきますね。
- 分割できない「ない」→形容詞の一部 (例)あどけない、せつない
- 「~く」「~で」+「ない」→補助形容詞 (例)楽しくない、静かでない
- 「ある」に言い換えられる「ない」→形容詞 (例)ゴミがない
- 「ぬ」に言い換えられる「ない」→打消の助動詞 (例)行かない
ここまできちんと理解できれば、口語文法マスターです!!
トップ画像=フリー写真素材ぱくたそ / モデル=みき。
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