「こんでいるのはどっちかな」という単元を小学生に教えたときのことです。
生徒が困惑した表情で「先生、2人の言っていることが違うんですけど……」と言いました。
本記事では、「単位量あたりの大きさ」で生徒が混乱しがちな理由を分析し、その解決策を紹介します。
生徒が混乱していた問題とは?
東京書籍『新しい算数5上』には次の問題が載っています。
AとBのうさぎ小屋では、どちらがこんでいますか。
A…面積6m2にうさぎの数9ひき
B…面積5m2にうさぎの数8ひき
この後、みほとしんじの考え方が紹介されます。
みほ
1m2あたりのうさぎの数で比べる。
A…9÷6=1.5(ひき)
B…8÷5=1.6(ひき)
Bの方がこんでいる。
しんじ
1ぴきあたりの面積で比べる。
A…6÷9=0.66(m2)
B…5÷8=0.62(m2)
Bの方がこんでいる。
生徒は数値の大小を見て、「数値の大きい方がこんでいる。それなのに、みほの考え方だとBの方がこんでいるのに、しんじの考え方だとAの方がこんでいる」と混乱しました。
「単位量あたりの大きさ」とは?
「こんでいるのはどっちかな?」という単元で扱われるのは「単位量あたりの大きさ」です。
小学算数だと、「単位」という言葉は、「m」や「g」などの記号の意味で使われます。一方、高校数学では、「単位」は「1」を表す場合があります。たとえば、「単位円」といえば「半径が1の円」ですし、「単位ベクトル」といえば「大きさが1のベクトル」です。「単位量あたりの大きさ」の「単位」も「1」のことです。
このように、「単位」を「1」だと考えると、「単位量あたりの大きさ」は「1あたりの大きさ」と言いかえられます。したがって、考え方自体は、小数や分数で表す割合(1を基準とした量)と同じです。
そのため、単位量あたりの大きさを求める場合は、2つある数量のうち、どちらかを1にします。
たとえば、「10mで1000円のテープA」と「5mで450円のテープB」の値段を比べる場合、長さがそろっていないと、「どちらが高いか?」を判断するのは困難です。そこで、Aは「1mあたり100円」、Bは「1mあたり90円」というふうに、両方の長さを1mにそろえます。そうすると、「Aの方が高い」と判断できます。
この例からも分かる通り、単位量あたりの大きさを求めると比較が簡単になります。
みほとしんじが求めた数値の意味は?
単位量あたりの大きさについて理解したところで、改めてみほとしんじの考え方に迫ってみます。2人は、計算によって何を求めたのでしょうか?
そもそも、みほとしんじは、求めている「単位量あたりの大きさ」が違います。だから、単純に計算結果の大小を比較しただけでは、どちらがこんでいるかは分かりません。
ここで考えるべきは、「それぞれの数値が何を意味しているか?」です。
1平方メートルあたりのうさぎの数
みほが求めた「1m2あたりのうさぎの数」は、「1m2の場所に何ひきのうさぎがいるか?」です。この場合、1m2の場所にいるうさぎの数が多ければ多いほど「こんでいる」といえます。だから、「数値が大きい方がこんでいる」と判断できます。
面積を1にした数値でこみ具合を比べる考え方に「人口密度」があります。人口密度のメリットは、「数値が大きい方がこんでいる」と直感的に把握できることです。
1ぴきあたりの面積
しんじが求めた「1ぴきあたりの面積」は、「1ぴきのうさぎが占有できる面積は何m2か?」です。この場合、1ぴきが占有できる面積が狭ければ狭いほど「こんでいる」といえます。だから、「数値が小さい方がこんでいる」と判断しなければなりません。
言葉の定義や単位の意味が大切
以上の説明で、生徒の頭の中にあった「数値が大きい方がこんでいる」という思い込みは解消しました。同時に、この生徒は、「計算しただけでは何もわからない」ということにも気づきました。
小学高学年の算数では「単位量当たりの大きさ」「平均」「割合」などを習っていきます。これらの分野で大切なのは、計算をがんばることではなく、「計算結果から何が分かるか?」を理解することです。計算自体は単純ですし、オマケのようなものに過ぎません。
こうした疑問を解決しながら、言葉の定義や単位(mやgなどの記号)の意味をしっかり理解する必要があります。
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