「国語の物語文が苦手」という中学受験生、特に酷語男子は、中学入試によく出る、家族や友情などをテーマとした物語文をそもそも読みたがりません。
入試問題になりやすい物語文は、心情や情景の描写がていねいな一方で、ハラハラドキドキの展開が少なく、酷語男子は退屈に感じるからです。
彼らにおすすめなのが怖い話(怪談)、特に、数百時から数千字程度のショートショートがたくさん収録された怖い話のオムニバスがおすすめです。
酷語男子に怖い話(怪談)をおすすめする理由
怖い話は「恐怖」で統一されていますが、そのテーマはバリエーションが豊富です。
怖い話には、家族や友情、恋愛、成長、葛藤など、中学入試でよく出るテーマがあります。物語の舞台は日本、外国、異世界、核戦争後の世界など、時代も現代、戦時中、江戸時代、近未来など、実にさまざまです。
物語文に興味のない酷語男子も、いろいろなタイプの怖い話を読んでいく中で、「これが好き」という物語にきっと出会えるでしょう。
私は個人的に小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)『怪談』や、田中貢太郎『日本怪談全集』、古典作品の『今昔物語集』などが好きですし、多くのお子さんに読んでもらいたいと思っています。
ただ、これらの物語は背景が古いので、お子さんにはとっつきづらいかもしれません。そうであれば、少し前に流行った廣嶋玲子『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』などをおすすめします。
もちろん、お子さんに本を買い与えるのが理想ではあります。しかし、最近は本が高いです。せっかく本を買ってあげても、お子さんはその本にすぐ飽きて……。
中学受験国語の対策として、本をたくさん買い与えるのは現実的ではないでしょう。
そこで、AI家庭教師に頼んで、怖い話を量産してもらいましょう。

「家族」や「恋愛」をテーマにした怖い話
AI家庭教師は、「中学受験に詳しい小説家」として、小学生でも読みやすい自然な怖い話を執筆してくれます。
以下は「家族」をテーマにした怖い話です。
夏の終わり、翔太は母と妹の結衣、それから祖母といっしょに、山あいの古い家へ向かった。
春の法事の帰り、祖母がふいに「あの家を、もう一度見ておきたいねえ」と言ったのだと、母は車の中で話してくれた。日帰りのつもりだったが、窓を開けたり、仏間を整えたりしているうちに日が傾き、そのまま一晩だけ泊まることになった。
家は、山の影に寄りそうように立っていた。黒ずんだ柱、少し波打つガラス戸、歩くたびに鳴る廊下。夕方になると、ひぐらしの声が庭の木立に沈み、風が土と草のにおいを運んできた。
祖母は、仏間に線香をあげ、古いたんすの上を静かに撫でた。母はそのそばで、干した布団を取りこんでいた。結衣は最初こそはしゃいでいたが、日が落ちるころには、知らない家の広さに少しだけ口数が減った。
夕飯のあと、祖母が言った。
「二階の奥には行かないでおくれ。暗くなると、あそこは少し……人の気配がするんだよ」
結衣は目を丸くし、母は「またそんなことを」と笑った。けれど、その笑い声は長くつづかなかった。
夜、四人は一階の和室に布団を並べた。明かりを消すと、家はひとまわり大きくなったようだった。板の鳴る音も、雨戸をなでる風も、どこか遠いのに、耳のすぐそばで聞こえる。
そのとき。
とん。
天井の向こうで、小さな音がした。
つぎは、もう少しはっきり。
とん。とん。
二階の奥から、だれかが廊下へ出てくるような足音だった。急がず、迷わず、ただそこにいることだけを知らせるような音だった。
結衣が布団の中で身をよせる。翔太はその肩に手を置いた。暗がりの中で、祖母だけがじっと耳をすましていた。
やがて祖母は、そっと身を起こした。
「階段のところまで見てくるよ」
母も起き上がった。
「私も行く」
祖母はうなずいたが、翔太には首を振った。
「結衣のそばにいておくれ。あの子を一人にしないで」
翔太は何も言わず、うなずいた。
祖母と母が廊下へ出る。障子の向こうで、床板がかすかに鳴る。二人は二階へは上がらず、階段の下で立ち止まったらしかった。
足音は、そこで止んだ。
しばらくして、祖母の声がした。
「……お父さんかな」
遠くへこぼれるような声だった。
そのあと、ことり、と乾いた音がした。何か軽いものが、木の段に触れたような音だった。
母が戻ってきた。手には、古い写真が一枚あった。
若いころの祖母。まだ幼い母。そのとなりに、知らない男の人が立っていた。やわらかな目をした人だった。
祖母は写真を受け取ると、指先でそのふちをなぞった。階段の上は暗く、何も見えない。けれど翔太には、その暗がりのどこかに、白いものが立っている気がした。目をこらすほど、ただの闇に見えるのに、たしかにだれかの気配だけがあった。
風もないのに、写真のすみがかすかに揺れた。
それから、声がした。
低く、遠く、土の中からしみ出すような声だった。
「……よく来たな」
祖母は写真を胸に寄せた。
「ええ」と言った。
「みんなで来たよ」そのひと言のあと、家の気配がすっとゆるんだ。天井の重さも、階段の暗がりも、足音の冷たさも、少しずつほどけていった。
祖母は写真を仏間へ運び、静かに手を合わせた。母もそのとなりに立った。翔太は結衣の手を引いて、少し離れたところから見ていた。結衣はもう、何も聞かなかった。
布団にもどると、家はただの古い家だった。柱のきしみも、風の音も、もとの場所へ帰っていた。
眠る前、結衣が小さな声で言った。
「こわいおばけじゃ、なかったの?」
翔太は暗い天井を見ながら答えた。
「たぶん、会いにきたんだよ」
結衣はそれきり黙って、すぐに寝息を立てはじめた。
翔太だけが、しばらく目を閉じられなかった。
二階の奥の部屋ではなく、そこへつづく階段の暗がりに、まだなにかが残っている気がした。けれどそれは、だれかをおどかすものではなかった。
長いあいだ言えなかった「おかえり」が、ようやく家の中に戻ってきた。
そんな気がした。
翔太たち家族は、祖母と祖父が住んでいた家に泊まった夜、祖父の幽霊と出会いました。
翔太の父親が出てこないので、母子家庭なのかもしれません。祖母と祖父と過ごした家がどういう状態で現存しているのかが不明です。母が持ってきた古い写真の出どころも気になります。
いろいろとツッコミどころ満載ですが、気にせず、ストーリーの流れだけを追えばよいでしょう。
続いて、「恋愛」をテーマにした怖い話です。
六年生になってから、健太はときどき、美咲のことを目で追うようになった。
図書室で高い棚を見上げる横顔。花だんの前にしゃがみこみ、倒れかけた草をそっと起こす指先。にぎやかな子ではないのに、なぜかそういう小さな場面ばかりが、放課後の光のように心に残った。
その日も、雨が降っていた。
いったん家のほうへ向かいかけてから、健太は図工の作品を教室に忘れたのを思い出した。引き返して学校へ戻る。校門はまだ開いていて、職員室には明かりがついていた。けれど、二階へ上がったとたん、空気が変わった。雨のにおいの中に、古い井戸の底のような冷たさがまじっていた。
ろうかの先に、白っぽい影が立っていた。
健太は足を止めた。窓ぎわにいたのは、美咲だった。白いカーディガンの肩が、夕方の薄暗がりの中に、かすかに浮いて見えた。
「美咲さん」
呼ぶと、美咲はゆっくりふり向いた。顔色はいつもより白かったが、その目を見たとたん、健太は少しだけ息をつけた。
「健太くん」
美咲は小さな声で言った。
「そこ、通らないで」
細い指が、理科室の前を指した。
次の瞬間、閉まっているはずの引き戸が、内側から強く揺れた。ガタッ、ガタガタッ、と音がして、そのあと、机かいすを引きずるような、重たい気配が続いた。健太は肩をこわばらせた。
美咲が手首をつかんだ。
ひやりとしていて、雨にぬれた石のようだった。
「こっち」
二人はそのまま遠回りをした。曲がり角、ろうかのすみ、窓に映る暗い景色。そのたびに、黒いランドセルを背負った小さな子が、立っているようにも、しゃがんでいるようにも見えた。けれど、目をこらすともういない。
うしろから、こと、こと、と足音だけがついてくる。
健太がふり向こうとすると、美咲の指先が少しだけ強くなった。
「見ないで」
その声はかすかだったが、不思議なくらいまっすぐだった。
教室に入ると、雨音が少し遠のいた。健太は自分の作品を抱えこみ、ようやく息をついた。窓のそばでは、美咲が校庭を見ていた。灰色の空の下で、鉄棒もジャングルジムも、だれもいないままぬれていた。
「三年前ね」と美咲が言った。
「ここで、帰れなくなった子がいるんだって」健太は黙って、その先を待った。
「雨の日に、一人で理科室の前を通って」
窓を打つ雨が、少しだけ強くなった。
「さっきの子……」
美咲はうなずいた。けれど、こわがっている顔ではなかった。どこか、長く忘れられなかったことを見つめるような顔だった。
「でも今日は、もう大丈夫」
「どうして」
「健太くんが、一人じゃなかったから」その言葉は、雨音に消えるほど静かだったのに、健太の胸の奥には、はっきりと残った。大きな音もなく、ただ水面に輪が広がるみたいに、そこだけがそっと揺れた。
そのとき、ろうかの足音がふいに止んだ。
かわりに、遠く、理科室のほうから、子どもの声がした。
――ありがとう。
たしかに聞こえたのに、次の瞬間には雨の気配にまぎれ、ほどけて消えた。
教室の空気がふっと軽くなる。さっきまでまとわりついていた冷たさが、いつの間にか消えていた。
健太は作品を抱えたまま、美咲を見た。白いカーディガンの袖口。ぬれた窓に映る横顔。さっきまで冷たかった手の感触が、まだ手首のあたりに残っている。
「……あのさ」
自分でも驚くほど小さな声が出た。
「今度、図書室に行くとき……」
そこまで言って、言葉が急にたよりなくなる。美咲が静かにこちらを向いた。
「ぼくも、いっしょに行っていい?」
美咲は少しだけ目を丸くして、それから、雨雲の切れ目に光がさすみたいに、やわらかく笑った。
「うん」
その返事とほとんど同時に、窓ガラスに小さな手形がひとつ浮かんだ。けれどそれはすぐ、流れる雨の筋にまぎれて見えなくなった。
帰り道、雨の学校はまだ少し暗く、少しだけ不気味だった。けれど健太の胸には、それとは別の、名まえのつかない明るさが残っていた。
だれかを待っていたものが静かに帰り、まだ言葉にならない気持ちだけが、そっと心の中に残った。そんな雨の夕方だった。
健太と美咲は、夕方の学校で幽霊と出会い、このことがきっかけで関係を深めます。
健太が一人でなかったことから、幽霊は無事に成仏できたようです。しかし、この辺りの論理もよくわかりません。
AI家庭教師に頼めば、もう少しわかりやすく書き換えてくれるはずです。ただ、物語の出来はあまり気にせず、健太と美咲の気持ちを読み取れれば問題ないでしょう。
小泉八雲「雪女」を現代風に書き換えた物語
お子さんにはとっつきづらい古典的な名作も、AI家庭教師に頼めば、現代風に書き換えてもらえます。
以下の物語文は、小泉八雲の代表的な怪談「雪女」の現代版です。オリジナルの文章は青空文庫から読み込ませました。
冬休みの終わり、健太は父といっしょに祖父の家へ向かっていた。
東京を出たころは晴れていたのに、山に近づくにつれて雪は強くなり、最後に乗ったバスは峠の手前で止まってしまった。「この先は危ないので、今日はここまでです」
運転手がそう言うと、乗客たちはそれぞれスマホを取り出した。迎えを呼ぶ人、近くの宿を探す人。けれど父は困った顔で言った。
「まいったな。じいちゃんの家、電波が弱いんだよ」
「どうするの?」
「向こうに待合小屋がある。朝までそこでしのごう」
古い木の小屋には、小さな電気ストーブがひとつあるだけだった。
父はベンチに腰を下ろし、「寒いけど、まあ何とかなるだろ」と笑った。「父さん、こんなところで寝るの?」
「少し目をつぶるだけだよ。健太も寝なさい」
そう言って、父はコートをかぶるようにして、すぐ眠ってしまった。
けれど健太は眠れなかった。
窓の外では雪が風に巻かれ、白いものが行ったり来たりしている。ときどき、人が立っているようにも見えた。「……気のせいだよな」
小さくつぶやいた、そのときだった。
戸が、すうっと開いた。
入ってきたのは、白いコートの女の人だった。
髪にも肩にも雪が積もっていて、まるで外の雪がそのまま人の形になったみたいだった。女の人は父のそばへ行き、しばらく黙って顔を見ていた。
それから、ゆっくり健太のほうを向いた。健太は思わず身をすくめた。
「……だれ?」
女の人はすぐには答えなかった。
ただ、冷たいのに、どこか悲しそうな目で健太を見つめた。「この夜のことは、だれにも言わないで」
声は小さいのに、すぐ耳もとで聞こえたようだった。
「どうして?」
「言ったら、だめ」
「父さんに何かするの?」
その言葉に、女の人は少しだけ目を伏せた。
「しないよ。今日は、しない」
「今日は……って」
健太がそう言いかけたとき、白い風がふっと吹いた。
思わず目を閉じて、もう一度見たときには、戸口には誰もいなかった。朝になって、父が大きく伸びをした。
「いやあ、寒かったな。健太、眠れたか?」
「……うん、少しだけ」
「顔色悪いぞ。こわい夢でも見たか?」
健太は少し迷ってから、首を横に振った。
「別に」
それから何年かたった。
中学生になった健太は、雪の日、近所の公園でひとりの女性と出会った。小さな子が転びそうになると、とっさに手を伸ばすような、そんな人だった。
「大丈夫?」
その声を聞いた瞬間、健太の胸が妙にざわついた。
「あ……はい」
「手、冷たいね」
「そっちこそ」
そう言うと、彼女は少し笑った。
「私、由希」
「健太です」
それから雪の日に会うたび、二人は少しずつ話すようになった。
ある夕方、商店街の帰り道で、由希がふいに言った。「健太くんって、約束を守る人なんだね」
「え?」
「ちゃんと、言わなかったでしょう」
健太は足を止めた。
白い街灯の下で、由希のまつげに雪が光っていた。
あの夜と同じだ、と健太は思った。「……あのときの人?」
由希はすぐには答えず、やわらかく笑った。
「聞かないほうがいいこともあるよ」
「でも、ずっと気になってた」
「そう」
「父さんに何もしなかったのは、どうして?」
由希は少しだけ空を見上げた。
「眠っている顔が、あんまり静かだったからかな」
「そんな理由?」
「そんな理由」
それから彼女は、健太を見て言った。
「あなたが、あの夜、泣かなかったからかもしれない」
風が吹いて、由希の肩の雪がさらりとこぼれた。
「春になったら、ここを離れるの」
「また会える?」
「雪が降れば、思い出すでしょう?」
「それだけ?」
由希は答えなかった。
ただ、「さよなら」とも言わずに、少し笑っただけだった。春になるころ、由希はいなくなった。
けれど雪の夕方になると、健太は今でも思い出す。
あの小屋の戸が静かに開いた音を。
そして、寒さの奥に、どうしてか、ひどく静かなやさしさがあったことを。
オリジナルと違って登場人物は誰も死んでいないので、どんなお子さんにも安心して読ませられます。
健太は雪女と結婚していませんし、もちろん二人の間に子どももできていません。オリジナルとはだいぶ異なる展開で、オリジナルにはない雪女の「ひどく静かなやさしさ」が描かれています。
お子さんにオリジナルと読み比べさせてみるのもおもしろいと思います。
このように、AI家庭教師に古典的な名作を現代風に書き換えさせ、それらをお子さんに読ませれば、お子さんの中に自然と文学的な素養が蓄積されます。
特に、『今昔物語集』や『宇治拾遺物語』などの古典の現代版を読ませておくと、お子さんが中学や高校で古典を習うとき、スムーズに理解できるかもしれません。
私自身も、幼少期に怖い話が大好きで、そこから人生の機微を理解しました。有名な怪談の原典を読みたくて、高校時代は古典に興味を抱き、ずっと古典が大好きでした。
怖い話からたくさん学んだ私は、「国語の物語文が苦手」という中学受験生、特に酷語男子にこそ、怖い話をたくさん読んでもらいたいと思っています。


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