中学受験生やその保護者からよく相談されるのが「国語ができないので、どうすればいいですか?」です。模試などの成績では国語だけ異常に偏差値が低いため、彼らは「国語ができない」と悩みます。
しかし、「国語ができない」受験生が、本当に国語ができないのかといえば、必ずしもそうとは限りません。このことに気付かないまま国語の勉強に力を入れると、最終目標である志望校合格から遠のいてしまう可能性すらあります。
今回の記事では、「国語ができない」という悩みに対して、僕が家庭教師として考えることを紹介します。
各塾の国語の教材やテストは癖が強い
まず、国語の問題は、塾によって、さらには中学によって、大きく傾向が異なることを理解しましょう。特に、各塾の国語の教材やテストは癖が強く、たとえば次のようになっています。
- A塾…本文は難解だが、設問は素直なものが多く、本文内容を理解しなくてもパズル的に解ける。
- B塾…本文は簡単だが、選択肢問題がまぎらわしく、細かい言いかえなどまでチェックしないと解けない。
- C塾…授業で扱う教材が何を目的としているのかが不明で、この教材で勉強しても入試に対応できる読解力も解答力も身に付かない。
こうした癖の強さのせいで「国語ができない」となっている受験生が多いのは事実です。彼らに適切な難易度の入試過去問を解かせるとすんなり解けることもあります。僕の指導経験を振り返っても、「国語ができない」5年生に偏差値40~50程度の中学の過去問を解かせたら、ほぼ全問正解でした。このように、彼らが思っている「国語ができない」は「通っている塾の国語ができない」なのです。
「国語ができない」と悩む受験生は、塾の国語の問題ではなく、(国語専門の指導者に選んでもらった適切な難易度の)入試過去問を解いてみるとよいでしょう。それが解けるかどうかで、本当に国語ができないのかどうかを判定できます。
6年生で急に国語ができるようになった?
「4、5年生のときは国語が全然できなかったけれど、6年生で急に国語ができるようになった」という話をよく聞きます。
その理由としては一般的に「塾では6年生に解き方のテクニックを教えてくれるから」といわれます(それなら、4、5年のうちから「テクニック?」を教えろよ、と僕は思います(笑))。さらには、「子供の精神年齢が高くなったから」「抽象的な思考ができるようになったから」などといわれることすらあります(本当かよ?(笑))。
しかし、実際のところは、塾で扱う問題が、塾のオリジナル教材から入試過去問にシフトしたことが大きいと思います。癖の強いオリジナル教材ができなかった受験生も、素直な入試問題なら解けることが少なくないからです。
塾の国語の傾向に合わせて対策する
塾の国語の教材やテストと、志望校の国語の入試問題は、必ずしも傾向が一致しているとは限りません。むしろ、一致していないことの方が多いでしょう。そのため、塾の国語のテストで高得点を取れても志望校の過去問でさっぱり点数を取れない、もしくは、その逆になりがちです。こうした事情から、塾の国語をできるようにすることに時間や労力を割くのはあまり意味がありません。
もっとも、毎回の組分けテストや模試に国語があり、その結果でクラスが上がったり下がったりする以上、塾に通う受験生のほとんどは組分けテストなどの国語で点数を取りたがるはずです。それならば、組分けテストなどの傾向を分析し、その傾向に合わせて対策しましょう。
たとえば、本文は難解だが、設問は素直なものが多いA塾の対策としては、本文内容の理解に拘らず、設問をパズル的に解く練習をすると効果的です。一方、本文は簡単だが、選択肢問題がまぎらわしいB塾の対策としては、正しい選択肢や間違いの選択肢がどう作られているのかまで検討する必要があります。
僕が指導してきた生徒たちの中には、各塾の傾向に合わせた対策を行うことで、偏差値が10~20アップした生徒もいます。
一方、塾のテストができるようになったからといって、志望校の入試問題が解けるとは限らないことは、繰り返し強調しておきます。塾の国語の対策とは別に、早め早めに志望校の過去問を使って対策しておくと、他の受験生に差をつけられるでしょう。
僕は、某中学を志望する中学受験生に「君が通っている塾の国語の問題は、本文内容を理解しなくてもパズル的に解ける。でも、君の志望校の入試問題は、本文内容を理解しないと各設問でも間違うようになっている。パズル的に解けるわけではないから注意してね」と話しました。こういうことをしっかり伝え、国語の勉強の方向性をきちんと示すことが大切だと思っています。
また、塾の国語でも入試過去問の国語でも、本文を一読して「何がテーマなのか?」「主人公は何をどうしたのか?」などのざっくりとした理解すらできない受験生は、読解力がどうこう以前に、もっと根本的な日本語力が弱いといえます。彼らに必要なのは、本文内容の理解でも問題の解き方でもなく、基本的な文法知識と語彙力です。2学年くらいレベルを下げた教材を書店で購入して、それを徹底的にやり込むことからスタートした方がよいでしょう。
志望校の過去問で点数を取れるようにする
中学受験は算数で点数差が開きやすく、算数が合否に直結するのは事実です。そのため、多くの受験生や保護者は塾の良し悪しを算数の授業や教材で判断します。しかし、算数は、どの塾で教わろうと、どの教材を使おうと、習得すべき内容はほぼ同じです。もちろん、理科と社会も各塾や各教材で内容に大きな違いはありません。
一方、国語には各塾の癖が強く出やすく、その癖のせいで、受験生や保護者は「国語ができない」と思い込まされることがあります。A塾の模試では国語の偏差値がいつも低いけれど、B塾の模試では国語の偏差値がいつも高い、といったことも起こり得ます。
僕は、塾の良し悪しは国語の授業や教材で判断した方がよいのではないか、とすら思います。こうした塾の国語の出来不出来をいちいち気にせず、志望校の過去問(そして本番)で点数を取れるようにすることが大切です。
トップ画像=写真AC
コメント