小中学校の国語で学ぶ漢字は2136字で、常用漢字と呼ばれています。小学校では約1000字を、中学校では更に約1000字を学びます。これらの漢字は互いに結びついて熟語を作るため、覚えるべき言葉は2136字だけではありません。
そのため、小中学生の多くは「漢字を覚えられない!」と悩みます。この悩みを解決する方法を紹介します。
『うんこ漢字ドリル』ブームを考える
『うんこ漢字ドリル』が大ブームになりました。『うんこ漢字ドリル』は、「うんこ」という言葉を含む例文で、小学校で習う漢字を網羅しています。
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うんこに過剰反応する小学生にとっては、とても「楽しい」ドリルなのでしょう。従来のドリル学習(反復学習による暗記)よりは覚えられるのかもしれません。
しかし、うんこのインパクトが強過ぎて、漢字の意味や熟語が飛んでしまわないか、また、日常的に使える言葉として漢字を覚えられるのかは議論の余地があります。
『うんこ漢字ドリル』のような癖の強いものに頼らない漢字の覚え方を考えたいところです。
漢字を意味や熟語と一緒に覚える暗記法6選
漢字を意味や熟語と一緒に覚える暗記法を紹介します。
【その1】訓読みで覚える
たとえば、「エンジョ」を「援助」と漢字変換して「助」の訓読みに注目すると、「援助」の意味がすぐにわかります。「助」は送り仮名を付けて「たすける」だからです。
更には、「援」の字も「助ける」の意味だろうと考えられます。このような気づきから語彙が増えていきます。「支援」は「支えて助ける」、「援護」は「助けて守る(=護る)」、「援軍」は「助けるための軍隊」です。
漢字の訓読みは、熟語の意味を推測できるだけでなく、語彙を増やすのにも役立ちます。
【その2】部首で覚える
漢字の多くは形声文字です。形声文字とは、意味を表す意符(部首)と、音を表す音符の組み合わせから成る漢字です。
たとえば、「烈」は、「火」を意味する「れっか(れんが)」と、「レツ」という音を表す「列」から成ります。このような形声文字は、部首で分類して覚えると効率的です。
人間の内臓を表す「脳」「胸」「肌」「腹」「腰」「腕」などには「月」が含まれています。この「月」は、夜空に輝くお月様ではなく、「肉」を表す「にくづき」です。
更には、「胃」「背」「肩」などの下に付いている部首も「月(にくづき)」の仲間です。このことに気づくと、「にくづきシリーズ」を網羅したくなってきませんか?
逆に、形が似ている部首の違いも気になると思います。
たとえば、「祝」と「裸」の部首には微妙な違いがあります。「祝」の部首である「しめすへん」は「神様」を表しています。「神様が祝ってくれる」から、「祝」は「しめすへん」です。一方、「裸」の部首である「ころもへん」は「衣服」を表しています。「服を着ていない状態が裸」だから、「裸」は「ころもへん」です。
他にも、「店」の「まだれ」は「家」を、「原」の「がんだれ」は「崖(がけ)」を、「痛」の「やまいだれ」は「病気」を意味します。「池」の「さんずい」は「水」を、「凍」の「にすい」は「氷」を表します。
部首を意識すると、似たような意味の漢字を分類できるだけでなく、異なる意味の漢字を区別できます。
【その3】音読みで覚える
たとえば、「義」は「ただしい」という意味です。「正義」「義理」などの熟語があります。この「義」が音を表す音符となっている漢字には「議」「儀」「犠」などがあります。これらの漢字は「ギ」と音読みしますが、それぞれ部首が意味の違いを表します。
「議」の部首は「ごんべん」で「言葉」に表すので、「話し合い」である「会議」には「議」を使います。「儀」の部首の「にんべん」は「人間」を表すので、「人間が行なう式典」である「儀式」には「儀」を使います。「犠」の部首の「うしへん」は「牛」を表すので、「生贄の牛」である「犠牲」には「犠」を使います。
このように、音符が同じ漢字を部首で分類してみるとよいでしょう。
また、「義」は「正しい」ですが、逆に「正しくない」を意味する「ギ」もたくさんあります。「欺」は「あざむく(=だます)」、「疑」は「うたがう」、「偽」は「にせ」です。同じ音読みの漢字をイメージごとに分類するのもおもしろいでしょう。
音読みで漢字を集め、それらを意味やイメージで分類しておくと、似たような形の漢字を区別できます。
【その4】イメージで覚える
漢字の中には、象形文字(物の形から作られた文字)や指示文字(形の無い物事を表す文字)を組み合わせて作られた会意文字があります。たとえば、「少ない力」は「劣」で、「鳥の口」は「鳴」です。このように、会意文字の成り立ちには意味があり、イメージを伴います。
一方、形声文字は、意符(部首)ではない音符に意味はありません。しかし、形声文字についても、会意文字と同じように、自分なりのイメージを与えることで覚えやすくなります。本来の成り立ちとして正しいかどうかを考える必要はありません。
たとえば、「銅」は、古来より「銅銭」の原料として用いられてきました。このことに着目して、「お金と同じ金属」というイメージを「銅」に与えることができます。他にも、「ケモノの王」というイメージで「狂」、「心が荒れる」というイメージで「慌」、「言葉で相手の心を射る」というイメージで「謝」などはどうでしょうか?
自分なりに漢字のイメージを考えることでその漢字への愛着が増し、しっかり記憶に刻まれます。
【その5】類義語・対義語で覚える
たとえば、「憎悪(ぞうお)」は、同じような意味の漢字を重ねた熟語です。したがって、「憎む=悪む=にくむ」です。「にくむ」という意味の「悪」を使った熟語には、「嫌悪(けんお)=きらってにくむ」などがあります。
一方、「善悪(ぜんあく)」は、反対の意味の漢字を重ねた熟語です。したがって、「善=よい」と「悪=わるい」は対になります。「わるい」という意味の「悪」を使った熟語には、「悪評(あくひょう)=悪い評判」「悪党(あくとう)=悪い連中」などがあります。
こうしていくつかの熟語を見比べると、「悪」には、「オ」と「アク」という音読みに対応する形で、「にくむ」と「わるい」の意味があることがわかります。
類義語や対義語を集めると、意味の違いを理解しながら語彙を増やせます。
【その6】例文作りで覚える
漢字を定着させる一番の方法は、その漢字を使って例文を作ってみることです。「この言葉はこういうふうに使うのかな?」と考えながら例文を作ると、「覚えただけの言葉」が「使える言葉」になるからです。
例文は反社会的でもHでも構いません。
「契約」という言葉を覚えるため、「金持ちになりたくて悪魔と契約する。」という例文を作ってもいいでしょう。「間接」という言葉を覚えるため、「好きな人のリコーダーをなめて間接キスした。」という例文を作ってもいいでしょう。
うんこ好きならば、オリジナル『うんこ漢字ドリル』を作ってしまうのがおすすめです。
楽しく例文を作ることを通して、「使える言葉」を増やせます。
漢字の暗記は「苦行」ではなく「楽しい勉強」
本来、漢字を覚えることはとても楽しいことです。
「使える言葉」が増えれば興味関心の幅が広がり、考える能力も高まって、自分の世界がどんどん広がっていきます。子どもがその喜びを一度でも味わえば、漢字の暗記が「苦行」ではなく「楽しい勉強」になるでしょう。
トップ画像=写真AC
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