国語の記述問題で満点を狙おう!部分点しかもらえないNG解答例5選

国語の記述問題で満点を狙おう!部分点しかもらえないNG解答例5選 国語

国語(現代文)の記述問題では、解答の方向性を大きく間違わない限り、部分点をもらえます。しかし、多くの受験生は「どうせなら部分点ではなく満点が欲しい!」と思うでしょう。そんな彼らのために、記述問題の解答作成でやらかしがちなNGを紹介しながら、より良い解答の書き方をお伝えします。

記述問題の解答を作ってみよう

次の文章を読んで、後の問に答えなさい。

「愛」が狂気に変わる前兆は、「おまえのためを思って」「あなたのことが心配で」という言葉だ。これらの言葉には、自分の思い通りに相手をコントロールしたいという欲求が隠れている。しかし、言葉を発した本人はその欲求を自覚していないことが多い。むしろ、本当に「相手のため」を思っているため、相手への配慮がどんどん失われていく。相手を自分の理想の姿に変えようとしている時点で、自分しか見えていないのだ。

また、「愛」を強く意識するとき、上手くいかない状況に執着している可能性も高い。相手をコントロールできないと、そのことばかりを考えるようになる。そして、頭の中が相手のことでいっぱいになって、「相手を愛している」と勘違いしてしまう。「愛」は、思考や感情を縛り付ける頑丈な鎖である。身動きが取れなくなって視野が狭まると、狂気が芽生える。

一方、本当の愛とは、自分を抜きにして相手の幸福を願う気持ちに他ならない。この愛は、相手の嫌な面や上手くいかない状況も受け入れる懐の広さと表裏一体である。たとえ自分が満たされなくても相手を尊重できる心の余裕があれば、「おまえのためを思って」などの言葉が口をついて出てくることはないだろう。

恋愛関係や親子関係のトラブルを泥沼化させないコツは、「愛」ではなく愛に生きることである。

問、下線部「『愛』ではなく愛に生きること」とはどういうことか。六十字以内で説明しなさい。

NG解答の前に模範解答を紹介します。

下線部には、かぎかっこ有りの「愛」とかぎかっこ無しの「愛」があります。同じ「愛」という言葉でも、かぎかっこの有無で違いを持たせています。したがって、それぞれの「愛」を本文に即して言いかえる必要があります。

かぎかっこ有りの「愛」については、第1段落と第2段落で詳しく説明されています。

第1段落で紹介される「おまえのためを思って」などの言葉は、かぎかっこ有りの「愛」の具体例なのでカットします。こうした言葉を発する人についてまとめている最終文から、「自分しか見えていない」を解答の要素とします。「自分しか見えていない」結果どうなるのかはその前の文に「相手への配慮がどんどん失われていく」とあるので、こちらも解答に盛り込みたいところです。

第2段落1文目「『愛』=上手くいかない状況に執着している」も解答の要素にします。「上手くいかない状況」は長いので、字数オーバーになりそうなら、「困難」などに言いかえる必要があります。2文目以降は「執着」の具体例や比喩なのでカットします。

一方、かぎかっこ無しの「愛」については、第3段落1文目に「本当の愛=自分を抜きにして相手の幸福を願う気持ち」が言いかえになります。2文目以降はかぎかっこ無しの「愛」を直接説明したわけではないので、解答の要素から外します。

下線部の「~に生きる」は「~をもって生活する」といった意味ですから、解答に入れなくてもいいでしょう。

以上を踏まえて解答をまとめると次の通りです。

(模範解答)自分しか見えなくなって相手への配慮を欠いたり、困難に執着したりするのではなく、自分を抜きにして相手の幸福を願うこと。(58字)

部分点しかもらえないNG解答例5選

(模範解答)と比べながら、5つのNG解答例を検討していきます。

1. 要素が不足している

(NG解答例No1)相手をコントロールできないという、上手くいかない状況に執着するのではなく、自分を抜きにして相手の幸福を願うこと。(56字)

(NG解答例No1)は、解答に盛り込むべき要素の不足が減点対象です。かぎかっこ有りの「愛」の説明のうち、第1段落の内容が欠落しています。

(NG解答例No1)では、「相手をコントロールできない」と「上手くいかない状況」が同内容なので、どちらかを削ったうえで、第1段落の内容を挿入するといいでしょう。

要素の不足を無くすコツは、解答を書き始める前に準備をすることです。

今回の問題では、かぎかっこ有りの「愛」の説明が第1段落と第2段落にあり、かぎかっこ無しの「愛」の説明が第3段落にあることをチェックします。そして、解答作成に使いたい言葉(「相手への配慮がどんどん失われていく」「自分しか見えていない」など)に線を引き、字数の目安(それぞれの要素20字前後×3)を考えます。

準備をしないでいきなり解答欄に書き始めると、字数不足に陥って要素の不足になりがちです。

2. 具体例を入れている

(NG解答例No2)「おまえのため」と言って相手への配慮を欠いたり、困難に執着したりするのではなく、自分を抜きにして相手の幸福を願うこと。(59字)

(NG解答例No2)には、具体例が入っています。かぎかっこ有りの「愛」の説明に「『おまえのため』と言って」とありますが、これは「自分の思い通りに相手をコントロールしたいという欲求」がある状況の具体例です。

記述問題では、具体的に説明することを求められますが、具体例を用いて説明すると減点対象になります。なぜなら、具体例は特定の事例の説明にしかならず、筆者が伝えたいこと全般の説明にはならないからです。「チワワ」のことを熱く語るだけでは「犬」全体の説明にはなりません。

具体的と具体例の違いとは?現代文の記述問題で失点しないためのコツ
「具体的に説明しなさい」という問題では、具体例ではなく具体的な説明を書かなければなりません。「具体的」と「具体例」の違いは何なのでしょうか?

(NG解答例No2)では、「『おまえのため』と言って」を「相手をコントロールしようとして」などと言いかえるといいでしょう。もっとも、「自分しか見えていない」を入れるとなると、「相手をコントロールしようとして」などを入れる余地は無くなります。

解答に具体例を入れないようにするコツは、解答を書き始める前に具体例を線で消してしまうことです。

今回の問題では、第1段落1文目「『愛』が狂気に変わる前兆は、~」を線で消しましょう。

3. 比喩を入れている

(NG解答例No3)自分しか見えなくなって相手への配慮を欠いたり、鎖に思考を縛られたりするのではなく、自分を抜きにして相手の幸福を願うこと。(60字)

(NG解答例No3)には、比喩が入っています。かぎかっこ有りの「愛」を説明した第2段落にある「鎖」は「執着=『愛』」のたとえです。

比喩は、ある物事をよりわかりやすくするために別の物事に置きかえた表現です。そのため、比喩だけを抜き出しても意味がわかりません。

たとえば、「彼女はいつも微笑んでいて、職場を明るく照らす太陽のような存在だ」ならば、「太陽」から「いつも微笑んでいて職場を和ませている彼女」の姿が思い浮かびます。一方、「彼女は太陽のような存在だ」だけだと、具体的なイメージにはつながりません。したがって、「彼女」についての説明で「太陽のような存在」だけを書くのはNGとなります。

(NG解答例No3)では、「鎖に思考を縛られたりする」を「困難に執着したりする」などと言いかえるといいでしょう。

解答に比喩を入れないようにするコツは、具体例と同様に、解答を書き始める前に比喩を線で消してしまうことです。

今回の問題では、第2段落最後の2文「『愛』は、~」を線で消しましょう。

4. 抽象的な言葉を入れている

(NG解答例No4)自らの欲求に捕らわれて相手への配慮を欠いたり、困難に執着したりするのではなく、自分を抜きにして相手の幸福を願うこと。(58字)

(NG解答例No4)は、一見すると何も問題はないように思われます。そして、多くの受験生がこのような解答を書きます。

どこが減点対象なのかといえば、「自らの欲求」という言葉です。なぜなら、「自らの欲求」だけではどのような欲求なのかが採点者に伝わらないからです。「自らの欲求」は「自分の思い通りに相手をコントロールしたいという欲求」などと具体的に書かなければなりません。

「自らの欲求」のような抽象的な言葉は、可能な限り具体的に言いかえることが求められます。たとえば、「環境問題を解決する第一歩として自分にできることをすべきだ」よりも、「地球温暖化を解決する第一歩として資源の再利用とエネルギーの節約に努めるべきだ」の方が望ましい解答です。「環境問題」は「地球温暖化」に、「自分にできること」は「資源の再利用とエネルギーの節約」に言いかえられているからです。もっとも、「地球温暖化」が「環境問題」の具体例に過ぎない場合は、「環境問題」を言いかえる必要はありません。

解答に抽象的な言葉を入れないようにするコツは、「この言葉だけで採点者に正しく意味が伝わるかな?」と考えることです。

今回の問題では、「自らの欲求」だけだと採点者がさまざまに解釈する可能性がある、と気づけるかどうかがポイントです。

ちなみに、「上手くいかない状況(困難)」や「相手への配慮」も抽象的といえば抽象的です。しかし、「上手くいかない状況」は、第2段落1文目でかぎかっこ有りの「愛」の説明で使われているので、そのまま解答に盛り込んで問題ないでしょう。また、「相手への配慮」の具体的説明は本文から読み取れないので、こちらはそもそも具体的に言いかえられません。

5. 論理関係を誤っている

(NG解答例No5)自分しか見えなくなって相手への配慮を欠いたため困難に執着してしまうのではなく、自分を抜きにして相手の幸福を願うこと。(58字)

(NG解答例No5)は、解答に盛り込むべき要素は全てありますが、採点者によっては大減点になる可能性があります。というのも、論理関係を誤っているからです。

本文では、第1段落と第2段落は「また」で結ばれています。この「また」は、2つの別々の事柄を対等な関係で並べる並列の接続詞です。一方、(NG解答例No5)は、第1段落の内容と第2段落の内容を「ため」で結んでいます。この「ため」の働きによって、第1段落の内容が理由で第2段落の内容が結果という因果関係となってしまいます。本文の論理関係を解答に反映させないとガラッと意味が変わるため、大減点もしくは失点となるリスクが高まります。

論理関係を誤らないようにするコツは、本文中の接続表現に印をつけることです。さらに、解答の形式を先に決めてしまうのも有効です。

今回の問題では、第2段落の「また」、第3段落の「一方」に丸をつけます。そして、「(第1段落の内容)したり、(第2段落の内容)したりするのではなく、(第3段落の内容)こと。」という形式を決めてから書き始めるといいでしょう。

減点解答から次につながるヒントを得よう

摸試の記述問題で減点された解答は学びの宝庫です。自分の解答と模範解答を見比べ、どこが正しくて、どこが誤っていたのかを把握できれば、「次回は●●を▲▲しよう」と方針を立てられます。

しかし、多くの受験生は点数だけを見て一喜一憂し、減点された解答の分析をしません。それでは、いつまでも「記述問題が苦手」のままです。

減点された解答を分析することを習慣化して、そこから次につながるヒントを得ていくことが大切です。

トップ画像=写真AC

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