小学生に三角形の面積計算をさせると、毎回のように間違う生徒がいます。間違いで多いのは、「2で割るのを忘れた!」です。そんな間違いに対する生徒本人の認識は「ケアレスミス」「ポカミス」なんですよね。
しかし、プロの視点で彼らの間違いを分析すると、そこには単なるミス以外の原因が……。
本記事では、「2で割るのを忘れた!」にある本質的な問題をあぶり出し、その解決策を提案します。
「2で割るのを忘れた!」の原因3選
三角形の面積計算で「2で割るのを忘れた!」と言う生徒に対して、僕は問い詰めます。そうすると、概ね以下の3パターンに分かれます。
【Case1】「自分が何をしたいのか?」が分からない
僕「君は、この問題で何をしようとしたの?」
生徒「10と5をかけました」
僕「いや、そうじゃなくて、何をしたくて10と5をかけたのかを聞いてるの!」
生徒「えっ、だから10と5をかけて50を求めたんですよ」
このタイプの生徒たちは、そもそも「自分が何をしたいのか?」すら把握できていません。彼らは、目についた数字を適当にかけたり割ったりしているだけです。「算数=計算」という思い込みが強くて、日本語で論理的に考えることが算数では大切だということを理解していないのでしょう。
【Case2】図形が三角形であることに気づけない
僕「君は、この問題で何をしようとしたの?」
生徒「面積を求めようとしました」
僕「どんな図形の面積を求めようとしたの?」
生徒「この図形の面積です」(と言って生徒は図形を指差す)
このタイプの生徒たちは、「三角形の面積を求める」という意識がありません。生徒によっては、問題として与えられた図形が三角形であることに気づいていないこともあります。彼らは、「この図形の名前は?」と聞かれると、「う~ん……」と首をかしげます。
三角形や四角形などを区別できない生徒たちは、当然のことながら、「三角形の面積公式を使う」という発想に至りません。彼らは、何となく覚えている「公式らしきもの」に目の前の数値を突っ込んでいるんですね。
【Case3】公式を正確に覚えられていない
僕「三角形の面積公式を教えて」
生徒「えっと、一辺×一辺……」
このタイプの生徒たちは、公式を正確に覚えていないんですね。生徒によっては、「底辺×高さ÷2」と言葉で公式を覚えるのではなく、「ここ×ここ……」のように覚えます。そんな覚え方だと、図形の向きや数値が変わっただけで、「あれ?何をどうすればいいんだっけ?」となってしまいます。
また、公式をいい加減に覚えてしまうと、その公式を適用する問題を解けないだけでなく、他の公式とごっちゃになって混乱します。「縦×横÷2」と言う生徒は、長方形の公式と三角形の公式が混ざっています。
算数の勉強法を根本的に改めさせる
「2で割るのを忘れた!」の原因を3つ挙げましたが、いずれもかなりマズイ状況です。「ケアレスミス」「ポカミス」などと言ってごまかしてはいけません。
生徒がこれらのいずれかに該当する場合、算数の勉強法を根本的に改めさせる必要があります。具体的には、以下に記載した手順を一つ一つずつ意識させるといいでしょう。
- 「自分が何をしたいのか?」をはっきりさせる。
- 自分が着目している図形の名前を確認する。
- 適用すべき公式を正しく把握する。
- 公式の中の言葉(「底辺」「高さ」等)が問題の図形ではどこに当たるのかを見極める。
僕の指導では、1~4について、生徒にいちいち答えさせています。
また、算数でもノートに日本語をたくさん書かせます。場合によっては、「三角形の面積=底辺×高さ÷2」という公式を毎回書くように指導することもあります。

こうしたことを徹底的に行わない限り、生徒はいつまでも「2で割るのを忘れた!」から抜け出せません。数値計算をたくさん練習させても無駄ですよ。
生徒たちの「できる」を増やすために
本記事で紹介したことは、三角形の面積の求め方に限った話ではありません。あらゆる面積・体積を求める問題に共通します。
たとえば、円の問題で円周の長さと面積がごっちゃになってしまう生徒がいます。そもそも「直径」と「半径」の区別すらついていない生徒も少なくありません。彼らは、目についた数値に3.14をかけているだけなんですね。だから、半円や四分円の周の長さを求められません。
「2で割るのを忘れた!」の背後にある本質的な問題をあぶり出し、それを潰していくことで、生徒たちの「できる」は増えていきます。
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