3回見たけど無い!~目の前にあるものを見えなくする思い込み~

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みみずく先生のプロ家庭教師&ライター奮闘記

かなり前の出来事です。

その日、僕は小学生のA君に国語を教えていました。

A君は抜き出し問題で手こずっていました。だから、僕は「本文のこの辺りから、『●●』という言葉を探して」とヒントを与えました。

僕が指で示した箇所はたった数行。生徒は「●●」をすぐに見つけるだろう、と僕は思っていました。しかし、事態は意外な方向へと展開しました。

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目の前にあるものを見えなくする思い込み

A君は「『●●』は無い!」と言います。

しかし、「●●」という言葉が無いはずはありません。

なぜなら、僕は「●●」という言葉を既に見つけていて、その上で「本文のこの辺りから、『●●』という言葉を探して」と指示したのですから。

だから、僕は、「もっと丁寧に見ていけば、必ず『●●』は見つかるよ」とA君に言いました。すると、A君は、僕が示した箇所をもう一度サッと眺め、今度は頭を抱え始めました。

「無いものは無い!3回見たけど無い!!」

そんなA君に対して、「3回見て見つからないなら、4回でも5回でも見なさい。1つ1つの言葉を丁寧に追いなさい」と僕。

しかし、A君は、「嫌だ!絶対に無いものを探すなんて嫌だ!先生は、『100万回本文を見ろ』って言うの?」と抗い続けます。決して本文を見ようとはしません。

ここで僕が激怒しました。

「ああ、そうだ。見つかるまで100万回でも見ろ!君が『●●』を見つけられるまで先に進まないし、授業も終わらねえぞ!!」

僕はA君を睨みつけ、A君は頭を抱えて「無い、無い」と言い続ける膠着状態が続くこと20分……。

結局、僕が根負けして、「ここに『●●』があるだろう?」とA君に教えてしまいました。

A君は、「こんなところに書いてあったんだ。こんなのも見つけられないなんて、自分は頭が悪いんだ!!」と半泣きでした。

そんなA君に僕は次のように言いました。

「今回君が『●●』を見つけられなかったのは、頭の善し悪しとは関係ない。『無い』と思って丁寧に見ることをやめると、目の前にあるものも見えなくなるんだよ。だから、『絶対にある!』と思って本文を何度も探せば良かっただけだよね」

読まない習慣・見ない習慣

最近生徒たちを指導していて、思い込みが強過ぎて目の前にあるものが見えなくなっている、A君のような生徒たちが多い印象を受けます。

彼らの中には、ワーキングメモリに問題がある生徒もいます。ワーキングメモリとは、短い時間に心の中で情報を保持し、同時に処理する能力のことです。これがうまく機能しないと、勉強にさまざまな支障をきたします。思い込みの強さも、ワーキングメモリの問題なのかもしれません。

一方で、強固な思い込みは生理的な要因だけに由来しているわけではない気がするんですよね。

というのも、ここ1年くらい、「問題文に書いてあることをきちんと読めば解けるよ」というアドバイスだけで、何人もの生徒たちが成績をグッと伸ばしたからです。彼らは、そもそも問題文を読まず、与えられた図も見ていませんでした。だから、「きちんと読みなさい」「きちんと見なさい」と言われて目から鱗が落ち、「何だ!書いてあるじゃん!!」となったんです。

こうした例から考えるに、生徒たちが思い込みを強めているのは、学校や塾の教育に欠陥があるからではないでしょうか?

学校の授業では、国語や英語以外で教科書を読むことはほとんどありません。先生は、生徒たちに教科書を一度も開かせることなく一方的に話をします。教科書を使う国語にしても、一度音読させた後、「感想を書いてね」という流れです。そうなると、生徒たちは教科書の文章を読まずに、自分の頭の中にある妄想ワールドへと旅立ちます。

塾の授業はさらに悪質で、算数などは「こうすれば解けるからね」という解法の詰め込みに終始しているようです。国語は、塾講師がダラダラと本文を解説しているだけ。文章や資料などとじっくり向き合う時間を生徒に与えません。

読まない習慣や見ない習慣は、学校や塾で培われているように思います。「丁寧に読んだり見たりしている暇はない」という、スピード社会特有の余裕の無さも悪習慣に拍車をかけているのでしょう。

考える前にきちんと見なさい

もう一つ、生徒たちの思い込みを強めているのは、「自分の頭で考えなさい!」という最近流行りの無茶振りです。「自分の頭で=何も見ないで」となっているケースが多く、それを真に受けた生徒たちが「バカの考え休むに似たり」状態に陥っているんですね。

分からない問題を前にした生徒たちは考え込みます。天井や自分の手元をじっと見つめながら……。どうして彼らはそんなところを見つめているのでしょうか?天井に答でも書いてあるんでしょうか?(笑)

もちろん、そんなわけはありません。彼らは知らないだけです。「与えられた問題文や資料などを丁寧に見ればヒントを得られる」という真実を。だから、僕は彼らに「考える前に丁寧に見なさい!」と言っています。

勉強に限らず、生徒たちには、物事を丁寧に見る人間になってもらいたいと思っています。周囲を注意深く観察すれば、誰が自分のことを大切に思ってくれているのか、そして、誰が自分を食い潰そうとしているのか、が分かるはずです。「こうじゃなきゃダメ!」という思い込みを捨てれば、目の前に多様な可能性が広がっていることにも気づけるはずです。この「気づき」をたくさん得てほしいんですね。

そして、問題に直面したとき、すぐに「解決策は無い!」と諦めないで、「絶対に解決策はある!」という気持ちで何度も何度も物事に挑戦する――こういう逞しい人になってもらいたいとも思っています。

そんなことを考えながら、僕は生徒たちに「考える前に丁寧に見なさい!」と言い続けています。

トップ画像=フリー写真素材ぱくたそ / モデル=河村友歌

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