【書評】『中学受験 SAPIXの国語』杉山由美子・清水昭弘

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みみずく先生のプロ家庭教師&ライター奮闘記
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国語の授業は道徳か?

第4章は「小学5年生の授業」です。

このレポートでは、その白熱したやりとりのすべてを書くことはできなかったが、子どもたちは瞬時に手をあげ、指されてすぐ答えを言うと、続けて指された子が次の瞬間答えるといったふうで、めまぐるしい早押しゲームのようだった。(P152)

筆者自らが「早押しゲーム」と言ってしまっています(笑)。その「早押しゲーム」が、国語の勉強にとって有益なのでしょうか?

中学入試の国語は、自分一人の力で本文をきちんと読み、設問に答えるための情報をかき集める作業です。そこに求められるのは、暗記した知識を瞬時に答えるようなスピードではなく、多少時間がかかってもいいから正確に読解して答えるスキルです。このスキルは、自分一人で黙々と文章を読み考えることでしか培われません。そもそも、SAPIXの授業スタイルが国語の勉強に合っていない、と僕は思います。

さらに極めつけは次の言葉です。

自分の本音に気づかせ、葛藤させることで、その子自身の内面は豊かになると思います。(P156)

宮沢賢治の童話「虔十公園林」の読解授業の後に、担当講師が言った言葉です。これを読んだ僕は、「ずれてるな」と思いました。というのも、国語の授業が道徳と化しているからです。

入試国語の読解対策として大切なのは、あくまでも文章を正確に読んで的確に答える、という訓練です。その際に向き合うべきは、自分の内面や本音ではなく本文です。本文に書かれていることを忠実に理解する上で、自分のうちからわき起こる感情が邪魔になることは多々あります。したがって、僕が国語を指導する場合、「自分の気持ちを捨てて、本文に忠実に解きなさい」と生徒に指示します。

一方、第4章に登場した国語講師は、僕の立場とは正反対です。こういう授業を展開する講師は、生徒が国語で偏差値を落としたとき、何と言うのでしょうか?「内面の豊かさが足りないから読めないんです。精神年齢が低いことができない原因です」と言いそうですね。

公教育の国語が道徳化していることは、あちこちから批判されています。「進学塾の国語」は、「学校の国語」に対するアンチテーゼであってほしい、と僕は思います。が、SAPIXの国語は、そうなっていないようです。

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